解せぬ。
この一言で私の今の心情は全て表せるだろう。

真田君はあの後満足げに頷いて猿飛君を引き連れ帰って行ってしまった。
気づいたら長曾我部君もいなかった。

ひとり、木々に囲まれ、少し人目から隠された場所に立つ。
一体、なんだったんだ今の嵐は。
結局彼は何がしたかったんだ。自己満に私はただ付き合わされただけか。
凄くくだらないことに時間を使ってしまったなぁ、とオレンジ色を通り過ぎ少々暗くなり始めている空を見て思う。


「あー…クソ、まっすぐ家帰ってロンリータイムを満喫する予定だったのに…」


かなりのタムロスだ。しかもわけわかんないことのせいで、だ。
神でも仏でもない私は全てを許すことなんてできないので盛大に心の中で暴言を吐かせてもらう。
ちなみに本人に言う勇気は持ち合わせていない、三成君と家康君は除くがな!滅びろ!

ひとり夕闇に悪態をつきながら、重たい鞄を持ち直し歩く。
ひゅう、と通り抜ける風が冷たい。でも、このくらいの気温が私は好きだ。暑いよりも、寒い方が好きなのだ。

ブロロロロ、と背後からバイクの音がする。
振り向けば、それは見覚えのあるバイクだった。


「…兄さん」

「やっと見つけた!お前まだ学校居たのかよ…心配したろーが」

「いや兄さん、その後ろに控える買い物した野菜隠してから言ってほしかったんだけど」

「買い物した後帰らないで探してたんだよお前のこと…友達がいないお前がこんな遅くまで帰ってくるはずがないって母さんが」

「なんって失礼な。まぁ、ごめん。少し委員会の仕事があってさ」

「ふーん?まぁいいから後ろ乗れよ。ちなみに今日の夕飯はもやし炒めだ!」

「兄さんそれ堂々と言うことじゃないからね」


え?お前好きだろ?と普通に言ってのける兄さんに恥というものはないのか。大好きだけど、そういう問題じゃないと思うよ兄さん。

バイクの後ろに乗り、ヘルメットをかぶる。
歩いて帰らなくて住んだから、ある意味万々歳かな。なんて思ったりもしまして。


通り過ぎていく景色と過ぎ行く風を感じながら、今日の夕飯に想いを寄せた。





もやし炒めは庶民の味方
(あ、でもお前友達新しくできたんだったな…誰だっけ、あの…)
(神門さん?)
(そうそうそれそれ。どっちか名前かわからない人!)
(…(兄弟だなぁ…))

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