恐ろしく壮絶な高校生活一日目の幕開けをしてくれたハチマキの男子生徒は同じ学校どころか同じクラスでしたワッショイ!

って実際はわっしょいもなにもないんだけど。
あまりにも壮絶すぎて頭が回らなくなった私を心配しながら名前とクラスを聞いてくるバンダナ男子生徒には悪いことをした…。
その隣で地面に頭こすりつけながら、地面抉るんじゃないかって勢いで土下座してるハチマキ男子生徒を止めるのも大変だった…。

それからクラスが一緒だとわかったバンダナ男子生徒は、ハチマキ男子生徒と私をクラスに送り届けるや否や「荷物持ったね?席覚えてるよね?出席番号順だからね。あと早弁は禁止。したらもう弁当作らないからね。それから…」となにやら母さんみたいなことを言い出して、半泣きのハチマキ男子生徒が「も、もう良い佐助!それは今朝聞いたでござる!」と叫んでいた。
あ、ちなみに噂されても困るので私はさっさと席についていたので、きっと知り合いだとは思われていなかっただろう。
もちろんクラスメイトは、その光景を見ながら全員爆笑していた。


真っ赤になったハチマキ男子生徒は可愛かったですまる



▽△



軽く、これからの高校生活やらこの学校での規則を語った先生は、一旦休憩と言い丁度二限目終了時に休み時間となった。

休み時間になった途端に群がるクラスメイト達。
さっきのハチマキ君の周りにも男子生徒が何人かいて、楽しそうにからかわれている(ハチマキ君は戸惑っているけれど)
みんな、新しい友達作りに必死なようで。

馬鹿にするわけでもないけれど、ぶっちゃけそこまでして友達を作りたいとも、ましてやまだよく知らない人たちに話しかけるなんてそんな。なチキンを発動して小説を取り出す。
そんな、所詮関わるなよオーラを張った私に、勇敢にも話しかけてきたのは斜め前に座る女の子だった。


「次、自己紹介だよね?」

「…そうらしいね。あと、委員決めるんだってね」

「あー…なにあるのかな。楽なのあるといいなー」

「そうだねー」

「あ、そうだ。私神門希って言うんだ神の門でみかど、希でめぐみね」

「へぇー。私は音無憐。まぁ、よろしく…」

「…うん。よろしく」


それを最後に、私と神門さんの間に間が生まれる。
それと同時にチャイムがなるもんだから、タイミングがいいこといいこと。
後ろを向いていた神門さんはチャイムの音を聞くや否やすぐに前を向いていた。まぁ、最初なんてそんなもんだろう。

正直、苗字と名前どっちがどっちだかわからなくなる名前だと思った。口には出さないけれど。


「みんな席につけー、この時間は自己紹介の時間にあてる。まずは互いを知ることから、だ。自己紹介が終わり次第委員会と部活決めるから、そのつもりでいろよ」


ガララ、と音を立てて入ってきたと思えば先生は教卓にたちながらこれからの大まかな流れを話す。
それを話し半分で聞き流しながら、自己紹介の仕方の参考のために生徒に耳を傾けた。

順番は安定の出席番号1番から。
簡潔に名前と出身中学校と趣味を述べた一番最初の子を筆頭に、みんな緊張でも解けたのか似たような紹介で進んでいく。


「神門希、神の門に希にあうのよ。よろしく」


下手したら厨二病やらイタい子だと思われそうな自己紹介をした神門さん。
出身中学校も、趣味も、彼女はなにも告げなかった。
それに関して少しあれな顔をしている子もいるけれど、ぶっちゃけ名前ぐらいでいいと思う。ありがとう神門さん勇気が出たよ。

それから少しして、私の番が回ってくる。
それなりに静かな教室に正直くじけそうだけど、顔には一ミリも出さずに静かに立ち上がった。


「音無憐です。読書が好きです。よろしくお願いします」


小さく頭を下げれば、聞こえる拍手音。
と、なにやら熱い視線。
あのハチマキ君かと思ったけど、どうやら違う模様。大体ハチマキ君は一番前の席だ。私の視界内である。

生憎その熱い視線の先を見る勇気は私にはないので黙って座らせてもらうけれど、もしかして、もしかしてたりして…。
そうだったら正直嬉しいような悲しいような感じである。まぁ、そうと決まったわけじゃないから黙らせてもらうけれど。


その後も自己紹介は続き、ハチマキ君へと順番が回る。
元気ハツラツな彼は立ち上がる際も元気ハツラツなようで、椅子をガッと後ろへ吹き飛ばしていた。
いや、ただ勢いが強すぎて椅子が後ろの机に当たっただけだけどね。


「某は真田幸村、日課は鍛錬とお館様との語り合いでござる!以後、よろしく頼み申す!」


本当の彼の叫び声よりは控えめな声だったけれど、それでもでかい。
頭を机にぶつけるんじゃないかという勢いで頭を下げていたけれど、なんか風圧があった気がする。どこまで彼は規格外な生き物なのか。

その壮絶なキャラに反応するどころか、みんな容量オーバーなのか呆気にとられながら拍手するのみ。
…どうやらこのクラス…いや、この学校はキャラが濃い人が多いらしい。ハチマキ君改め真田君と一緒にいたあのバンダナ君なんて塀の上走ってたし…。

それでも、ハブやらの対象にならなそうな彼らは純粋に凄いなぁと思った。


まぁ、それでね、その後も何人か続いたわけだよ。自己紹介が。
でも、ある意味待っていたのは私は一人だけで。

がたっと音を立てて立ち上がる。
ぶっちゃけ見た目はただの不良にしか見えない彼に、数名が震えた、ように見えた。


「俺ァ長曾我部元親。言いづれぇと思うから元親でいいぜ!趣味は船釣りと機械いじりだ。何か機械でわかんねぇことがあったら俺に聞きな!…っと、あとこれからよろしくな!」


自信満々にそう答えた彼に、黄色い声をあげる女子が数名。そして何やら憧れの視線を向ける男子が数名。

ちなみに私はそのどっちでもなく、相変わらず幼い頃からかわらない趣味だ。と少々呆れ気味である。よく続くよね、同じ趣味が何年も。
まぁ、それがあの子のいいところで、凄いところだったんだけれども。

思いがけない過去からの報告を受け取りながら、私は前を向いた。

視線には、気づかないふりをして。





クラスメイトと私
(悪いとは思うんだけれど、ね)
(こればっかりはちょっとさーぁ?みたいな)

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