さて、私は一体なぜこんな状況下に置かれているのでしょうか?

視線をずらせば、目の前には荷物の山。
授業に使うから移動させておいて欲しい、というお願いを先生にされた。
生憎まだ友達と呼べるほど仲の良い子は居らず、真田君やら猿飛君やらにお願いに行くのも正直気まずく、神門さん…はなんかだめだ。まず女の子に呼びかけるだなんてそんなことできない。
三成君がいれば問答無用で手伝わせるのだがやつとは別クラスだし、それに一々馬鹿にしてくるから面倒くさい。なぜあんな神経を逆なでする言葉しか吐けないのか?


(まぁ、吉継君に言わせると私もどっこいどっこいらしいけど…)


だから断ろうとしていたのだけれど、それを見越していたのか先生は私に口を開かせる前に逃げていった。くっそあの野郎禿げてしまえ。

もう一度、ちゃんと荷物を見る。
見るからに重そうだけど、先ほど試し持ちしてみたところ案外いけたので大丈夫。
でも、問題は量だ。
そんなにあるのか、って感じだけど、大体がかさばるものである。
これはいただけない。
重さよりも、かさばって一回じゃ到底持ち運べやしないじゃないか。

 
結構な荷物の前で唸ってはみるものの、解決策は見つからない。
やっぱり、何回か往復するしかないか…。


「おい」

「この量なら…3回…いや、4回は必要…?」

「おい」

「…考えるよりは行動か。休み時間は終わるけど致し方な」

「お・い!」

「うわなにっ!」


急にかけられた声に、思わず思いっきり驚く。
慌てて声のした方をみれば、目立つ銀髪眼帯さん。

…つまり、あの、その、あの子…もとい、彼が、長曾我部元親がいた。


「…な、なにか用事でも…?」

「…手伝う」

「へ?」

「手伝ってやるっつってんだよ!」

「あ、あぁ…手伝い…手伝いね…ありがとう」

「あっ…いや、ただ暇だっただけだからな…」


ツンデレか。
思わず出てしまいそうになる言葉を飲み込み、口角を上げる。

もしかしなくても機会を待っていたのか?いや、考えすぎか。
ツンデレ属性に変転しているのかもしれないしね。
いやぁ、年月が立つのは早いもんだーあはははは。

現実逃避に至る思考もそのままに、なんとなく気まずい雰囲気のまま荷物運びを手伝ってもらうことになった。
彼がいれば他に手伝いはいらないと思ったのか、他の生徒達は彼に声をかけるだけ。

…居た堪れないよ、正直。これ私じゃなくて彼に頼めばよかったのに。なにこの異質な組み合わせ。どういうことなの。
表には一切出さない感情を飲み込む術を、私は熟知していたのでごっくんしまして。

上げた口角をそのままに、柔和に微笑みながら相手に礼を告げる。
わざとらしい自信は、ある。


「ありがとう。長曾我部君」

「あ…?」

「(…しまったー!名前!!)あっ…ごめんね、特徴的だったから…」

「あ、あぁ…よく言われる、な…すまねぇ…」

「こ、こっちこそ、ごめんね、本当…」

「い、いや…そ、それより早く運んじまおうぜ!」

「そ、そうだね。うん、そうしようか」

「おう!じゃ、じゃあこっち俺が持つから、お前そっちな!」

「う、うん!本当にありがとう、ね…うん」

「い、いや、別にこんくらいは、ほら、その…元々男の仕事だろ!」

「そうか、いや、本当、ありがとう…私一人じゃちょっと難しかったから…(…たぶん)」

「はは、は…だよ、な…はは」

「あは、は…うん…じゃ、行こうか…はは」


ははははは、…はぁ。
覚えていて欲しくはなかった。けれど、やっぱり覚えてなさそうなのがわかると、正直落ち込む。
思わず苗字を呼んでしまったのは完全に無意識だったけれど、だからといってこの悲しみは欲しくなかった…。…まぁたかが2年もしない仲だったもんね、わかってる。わかってるよお姉さんは理解しつくしてるさ…あははは…。


………はぁーあ…。





嘘を嘘で塗り固める
(…あのふたり、なんであんな辛そうなのでござろう…)
(そんだけ面倒なんでしょー)
(…本当にそれだけでござろうか…?)
(…そんなことに気ぃかける暇があるなら団子はもういらないね、はいごちそ)
(いただきますでござる)

(((………はぁ)))

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