出会いたくなかった出会いをし、これから始まる(悪い意味での)七色に輝く現実を見つめ、内心で大きなため息をつく。

ない。
本当にこれは、ない。

出席番号通りに割り当てられた席。
男子も女子も一緒くたなそれのおかげで、私の席は一番後ろである。端っこではないけれど。
それはいい。それはいいんだけれど…!

視線を少し横にずらせば、ふたつ隣に座る見覚えのある銀髪。
すぐに視線は先生のほうに戻すけど、本当にこれはいただけない。
憧れたあの姿はもうないのか!そう思うもあの姿のまま大きくなられていても困る。本当に再開できなくなる。いや今もかなり嫌だけれど。クラス同じとかまじめに先生くたばってください。


「…それじゃあ、詳しくはまた明日。さようなら」


先生のその言葉で、一同はざわめきまばらになる。
保護者のもとに戻るものもいれば、さっさと帰ってる子も、メアドを交換している子も。

私もその一同と同じく、彼と目を合わせないように気をつけながらすぐに家族のもとに向かった。


家族のところに行く最中にいた見覚えのある和服美人は、きっと、いや絶対、彼のお母さんであった。





「よかったの?話してこなくて」


帰りの車で言われたのは、そんなことだった。


「…誰とさ」

「長曾我部元親君。彼でしょ?」

「絶対やだ」

「どうして?あ、わかった。男の子っぽくなったからでしょ」

「男の子っぽいどころかあれ完全に男!それも漢字の漢って書いて読むほうの!!」

「本当、元親立派になったよなぁ…俺より、背も高く、なりやがって…くそっ」

「本当…俺も、高校生にこされたか…ちかちゃん可愛かったのに、な…」

「…兄さん、父さん、やめてそんな本気で悲しむの…」


半泣き状態で悲しむふたりに私のほうが悲しくなってきた。


それから音無家恒例、行事の後には外食をしている間もずっと考えるのは彼のこと。
友達できるかな、よりも私は全てを知っている彼を危惧するほうが大事である。
まぁ彼も彼で変わってるし、もしかしたら、似たようなことを考えてるかもしれないけど…。

そこまで考えて、はて、と思う。
一応仲はよかった、といっても、それは幼少期の話し。
幼稚園は3年制度だったけれど、彼が入ってきたのは2年に上がってからだった。
そこから私と彼が出会うまでにまた少し期間が入っている。

つまり、2年にも満たない間の付き合いしかないのだ。彼とは。

たった2年、それも幼少期に仲良かった子の名前なんて、果たして彼は覚えているのか。
覚えていない、というのはそれはそれで悲しいものもあるけれど、私としてはそのくらいが丁度いい。



どうか、忘れていますように。
そう祈りながら、デザートで頼んだプリンを口にした。




思い出は押入れに
(どうか私のことなど忘れていてください…)
(まーだ考えてんの…いいじゃない別に)
(そういう問題じゃ!ないんです!)

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