「にょおん」
猫の鳴き声がした。
おや?と思い声のした方を向けば、そこには真っ黒な猫が一匹。
どうしたんだい?そう猫に問いかければ、猫は私に擦り寄ってくる。
「にゃーん、にゃあ、にゃあん」
「…そうかい、そうかい」
そうかい、みんなしんでしまったのかい。それはつらかったねぇ。
猫を抱き上げ撫でながら、猫の話を聞く。
教えたのに、1回も気づいてくれなかったと。
全部知っていたのに、1回も救えなかったと。
私は猫をなでながら、言い聞かせる。
「大丈夫、人無き日なんてないからね。次の世代ではきっと気づいてくれるさ。行くのだろう?」
「にゃあ」
「涙をお拭き。そんなんじゃ可愛い顔が台無しだ。…よし、これで大丈夫」
じゃあ、次の時間では、頑張りなさい。
猫が鳴いたのと、猫が次の時間へ行ったのは同時だった。
人無き猫
(そして誰もいなくなる)
(そんな結末に休止符をつけてくるんだよ)
(それが、きみの使命だからね)