「にょおん」


横断歩道で信号待ちをしていると、向こう側から聞こえてきた猫の声。
別段珍しくもないが、ここは人通りが多い。よほど人懐っこい猫なのだろうと思い鳴き声のした方を向けば、そこにはいつかの不幸を呼ぶ黒猫一匹。


「…、」

「にゃあ」

「これ以上、誰に不幸を降らすというのだ貴様」

「にゃーん」

「私はもう貴様を殺さない、だから貴様も誰も殺すな」


聞こえてるかどうかもわからないが、猫に向けて言葉を吐く。
周りに誰もいなくてよかった、と思いながら猫を向けば、また私を見て鳴いた。

ないた、鳴いた。


「にゃん」

「いつにも増してよく鳴くな」

「にゃあ、」


にゃおん。
黒猫が珍しく二つ繋げて言った、と思ったら体中に走る痛みと熱。

ああ、そうか。
よくなくと思ったら、泣いていたのか。


周りの叫び声と、猫の泣き声は同時に消えていった。




一泣き猫
(私が最後か)
(せっかく秀吉様や半兵衛様と再会できたのに)
(なんとゆうことだ)