「にょおん」
ちょこりん、そう効果音がつきそうな具合で堂々とそこに猫はいた。
また急に現れるものだから思わず刀を握ってしまったが、よく見ればそれは不幸を呼ぶ黒猫だった。
危うく殺してしまうところだったではないか。
「…もう少し普通に出てこられないのか、猫というやつは」
「にょーん」
「あの日貴様を殺したから秀吉様は死んだ。次は殺さなければいいと刑部が言っていた」
だから、殺さない。
刀をしまい黒猫に背を向ける。
これで、大丈夫。
負けるのは、死ぬのは家康。貴様だ。
「にゃあ」
いつの間にか猫は、鳴き声一つ置いてゆき、その場から消えていた。
私の刀が奴を裂いたのと、猫の鳴き声は同時だった。
一鳴き猫
(アァッ…!)
(やりました、秀吉様…!)
(ついに、ついに…!!)
(、………つい、に…………)