「きみは月に愛された男だね」
見知らぬ子供が、急に私に言ってきた。こんな子供に見覚えは無い。私は即座に否定した。
「愛などどうでもいい、貴様は一体誰だ。」
愛などとつまらぬ言葉を吐くな。そんなもの必要ない。私は家康を殺す。秀吉様のためになる。それでいい。戯言など聞いている暇もない。
少女は小さく笑って、
「“かみさま”に殺される男が、なんでそんなに頑張るんだい?」
「…は?」
「やっぱり。お兄さんは月に愛されているよ」
じゃあね。
待てといおうとしたときには、その子供はもういなかった。
“かみさま”に殺された男
(あそこまで純粋で綺麗だから)
(“かみさま”はきみを“あい”したんだろうね)