ぽっかりと空いた隣の席を、私は飽きもせず今日も眺める。
一番後ろという最高な席にも関わらずに、私の隣の席の人は一行に来る様子を見せずに、気づいたら一年近くたっていた。

詳しいことは、なにもしらない。

ただたまたま私は、入学最初のクラス分けのときに、彼と隣の席になった。本当にそれだけなのだから。
いつもニコニコ笑ってて、とても真剣な顔をしたかと思えば斜め上もいいところのすっとぼけたことを言い、おっきな体で面倒見がいい、言っちゃなんだがお父さんみたいな人だった。

それが、そんな彼が、学校に来なくなってもう何日たっただろう。
ぽっかりと空いた隣の席に、いくら待てど彼の姿は見えず、とうとう学年が変わっても来なかったときは少しだけ寂しくなった。クラス割りを見たら、彼とはまた同じクラスだったときはもしかして、と思ったけれどそう簡単に思惑通りに行くはずもなく彼は一行に姿を現さなかった。

きっと彼は、私の名前なんてもう覚えていないだろう。たまたま、隣になっただけの人だし。覚えていたとしてもこんなに私が毎日隣の席にいた君を、思い描いているだなんて想像もしていないだろう。それはそうだ。私と君は、別に、友達なんて関係じゃなかった。ただのクラスメイトだったのだから。


「………早く戻ってこないかなぁ」


恋とかそんな甘酸っぱいものじゃなくて、ただ、隣がからっぽなのが、酷く寂しかった。




(大きな背だから一番後ろの席で、また、みんなを見ながらにっこり笑う)
(そんな彼を、私は、よくわからないようなものを見る目で、隣から眺めるのだ)
(ねえ、だから早く帰ってきておくれよ。お隣さん。)