この世界はどうやら紙の上にインクで書かれて複製された世界であり、一部の人たちの生活をメインに描かれるストーリーであり、そして私の友達や幼馴染たちは総じて、キャラクターである。らしい。
「? どうかしたかー、主人公?まさか俺に見惚れ」
「それはないから安心して」
酷い!と嘆く彼・森山由考をスルーしながら私は考える。彼は主要メンバーとまではいかないけれど、海常高校レギュラーだ。きっと彼もキャラクターなのだろう。いいや、キャラクターだからこそ"こんなこと"になっているのだろう。
どうやらこの世界は、これからやってくる転校生とやらと森山がくっつくお話らしい。ちなみに私は所詮当て馬ポジ。綺麗なもんじゃない。醜く喚いて、最終的には私は森山に嫌われるらしい。嫌われ小説とかいうものではないらしいけれど、私は素で嫉妬に駆られそのような行動をし、森山に嫌われ、最終的には転校してしまうのだろう。そこに森山の気持ちはもうない。森山はやってきた転校生を慰め、そしてそのままおちていく。
私などという姿を思い出すことなく、ずっと。その転校生と。
「…ムカつくなぁ」
「へ?」
「森山ぁ、コンポタ買ってこいよ」
「なんで俺!」
「じゃあ買ってこなくていいから隣いて」
「はぁ?」
わけわからん、と無表情に言われるけれどスルーする。私の神がかるスルースキルに森山は諦めたようにため息をつきながら、へいへいと歩幅を会わせて隣を歩いた。
「…そういえば、今日、転校生くるんだってな」
「…へぇ、そうなんだ」
「なんだ、知らなかったのか?」
変な時期に転校してくるからって結構話題もちきりだったのに。そう続ける彼を見て、内心ちょっとだけほくそ笑む。
別に、ストーリーに従わないといけない、なんてルールないもん。
私から奪おうとするのが悪いんだし、いいよね。少し本気になったって。
「…その転校生、女の子だろうね」
私の人生奪おうとするやつが、悪いんだ。
世界という夢
(渡さないよ…ここは、『夢』じゃなくて、『世界』だからね。)
***
軽く解説
夢主=トリ主ではありません。夢主は元からこの世界、所謂「黒子のバスケ」の住人。なにかしらのきっかけから、自分の住む世界は、どこかの世界での物語として綴られた世界だと知る。結末を知る。それに、抗うお話、でした。
もちろん続きませんけどね