「なぁ、主人公。どうして貴様は私に振り向かない。」
「とりあえず手離そうか」
「何故だ!何故貴様は私に振り向かない!貴様に何かないように毎日護衛を行っているし貴様が日々緩い生活を送っているから忠告の意を込めて毎日貴様の言動の全てを書に印送りつけているし、貴様が余りにも自堕落な生活を送っているから私が三食毎日用意して掃除もして洗濯もしてやっているというのに!貴様は!何故振り向かない!!!」

男の怒声にも近い問いを聴きながら、彼女は苦笑をこぼす。なんでって言われてもなあ…。そう言いたげな目で彼女は男を見るが、男は一行に手を離す様子もなければ、その目に込められた感情に気づきそうにもなかった。
数分はたっただろうか。完全に固まってしまった空気を破るように、不意に彼女は溜息をついた。びくりと肩が揺れた男を気にするでもなく、ましては無理に手を離そうとするでもなく、彼女は語り始める。

「あのね、凄く気持ちは嬉しいんだ。」
「ならば!」
「聞いて。本当、凄く気持ちは嬉しいんだよ。まぁ人生最初の告白がこんな形かよっては思うんだけれど、もうこの際そこはいいや」

だいぶ大事なところかと思うのだけれど…。そうツッコミを入れてくれる人は、生憎残念なことに、この空間には存在しなかった。

「…ならば、いい加減私に振り向いてくれても、いいだろう」
「…うーん、いや、うーん…」
「何故!どうして!戸惑う必要があるのだ!!」
「いやぁ…だってさ…、…うん。わかった。」
「私と添い遂げるか!?」
「ううん。あのね、まずはね、」

貴方が誰かという話から、しようと思って。



すきすきだいすき!あいしてる!
(「私の話などどうでもいい!好きだ主人公!」)(「いやさすがにスト、赤の他人相手に頷けるほど彼氏に飢えてないかなー…」)