ばらばら、ばらばら。
雨のように空を落ちていくその様は見ていて気持ちがいいような。
いつもはその場で止まってじっとしている星たちは、時たま流れて消えていく。
本当は科学的にいろいろ証明されていて、止まっているわけでもなんでもなくて、というか私達が見ているあの空に広がるお星様は宇宙からすれば何億年か前の生きていた頃の星たちだとか、確かそんな話なのだけれど。
生憎ここでその話をして通じる人はたぶんひとりもいない。
流れる星を災いだと言い、落ちてくるんだと信じているレベル。
そんな人達にこんな話は通じるわけがない。
「ヒヒッ…不幸の星よ、さんざめく降り注げぇ…!」
もちろん、悪知恵ばかりが働くこの人でさえ、この時代での知識しか持ち得てなくて私の知っている科学的なものは何一つ知らないのだから。
(まぁ、知っていたら知っていたですごくそれは怖いことなのだけれど)
「大谷様、また具合を悪くしますよ」
「なに、我は今気分がいい。大丈夫よ、ダイジョウブ」
「せめて上着を羽織ってください」
「ぬしも心配性よなァ…」
やれやれ、と言った具合で持ってきた上着を一応は羽織ってくれる。やれやれ、は、こっちが言いたいのだけれども。
そんなことを言ったところで笑われて終わるだけなので言わない。
雨のように未だ降り注ぐ、消えていった惑星達は、あれは、何億年前になくなっているんだろう。
うる覚えでしかなくて、たぶん完全に間違っていそうな知識を使いながらそんなことを思った。
「やれ、主は願いとやらは唱えぬのか?」
「願い、ですか?」
「ヒヒッそうよソウ。こうに願える日はさぞ少なかろう」
「…まぁ確かに、こんなにたくさん降っているんですから、三回なんて言えそうですよね」
一個一個全部違う星だから、一つの星に三回願わなくてはならいないことに変わりはないのだから、本当に三回言えるはずはないんだけれど。
視界の端で楽しそうに笑う大谷様を見ながら、もう一度きらきら光る夜空を見上げる。
このように明るくては、忍もきっと仕事はできていないだろう。
奇襲をかけるにも、眠るにも、きっと明るくてなにもできやしない。
こうやって、空を見上げて、思いに打ちひれることぐらいしか今日はとても何かができそうな空ではない。
もしこうやって、今の私みたいに願いを込めている子供がたくさんいて。
もし、その子供と私の願いがたまたま一緒で。
ひとつの星に、三回どころか、たくさん同じ願いが込められてくれたりすれば。
もしかして、本当に、叶うのかな。なぁんて。
科学的に証明もされていない、むしろ、証明しようもないそんな迷信を都合良く今だけ信じて。
そっと目を閉じ、手を合わせる。
きらきらと流れる星の、どれか一つにでいいから、この願いが届きますように。
この願いが、叶いますように。
流れ星に願いを込めて
(どうれ、何を願った。我に言いヤレ)
(大谷様。願い事とは、他言無用でございますよ)
(…いいから言いヤレ)
(お断りさせていただきます)