とある忍の後始末 (26/31)





大きな声で泣き叫んだ。恥なんてなかった。それだけ大切だった。この世界で約5年。いろんなことを教えてもらった。温もりをくれた。共感してくれた。独りじゃなかった。狂わないでいれた。壊れないでいれた。好きだった。親友とも妹とも前世の家族とも違う。でも凄く特別な存在。この世界で初めて出会った存在。ねえ、まだ文字がよく読めないんだ。毒薬の作り方で解らないのがあるんだ。若様の、子供の相手の仕方が解らないんだ。婆裟羅の使い方は?解らないことがいっぱいあるんだ。なぁ、父ちゃん。父ちゃん父ちゃん父ちゃん!

…死んでんなよ、


こぼれ落ちる涙は止まることを知らず、視界を歪ませる。気休め程度に腕で拭い取り、父ちゃんを持ち上げる。凄く重いけど、持っていかなくちゃ。死体を残しちゃいけないから向こうで燃やそう。ああそうだ、あいつの首を持っていかなくちゃ。首は最初に切り落としたから、無事だろう。

さぁ『  』、帰ろうか。



とある忍の後始末
(メラメラと燃える火を見て)
(燃え尽きた人骨を闇で飲み込む)
(おあとがよろしいようで)
(これにて終了)