普通のゲシュタルト崩壊 (28/31)





家臣が睨みつける中、若様も負けじと睨みつける。ぶっちゃけ若様と対面してる俺様いまにもチビりそうなんだけど、なにこの子怖い!黒属性?黒属性なのね?!
表情はニヤニヤと笑っているが、こっちにきても心はチキンなままの俺様はぶっちゃけ冷や汗だらだらだぞ!本当ポーカーフェイス昔から得意でよかった!!

才君とアイコンタクトを図りつつ、若様を見る。うん、全然何考えてるかわかんないね!つーか目合わすの怖いよ若様!どうしちゃったの本当にさぁ!!


「ねー若様?どーするこの人?やっちゃう?」


思考を誤魔化すように若様に話かければ、下敷きになっている男は「なっ!」とかいいながら若様に視線を向ける。まぁ人間誰しも死にたくないもんねー?怖いよねぇ。俺様は怖いの前に死亡フラグktkrって思ったような人だったし、刺してきたやつに怒りしか覚えなかったし。今思うと俺様おかしいのか?

若様の「まだやるな」という声に返事をしつつ思考をめぐらす。あー今思えば俺様本当子供らしくない子供だったんだよねー、大人びた子供っていうかさ。とりあえず若様ぐらいの年齢のときは思いっきり猫かぶってたね。他人の前じゃ。ってこんな話どうでもいいか。


「子供がっ…調子にのるなよ!」

「貴様等…昌幸様のご恩を忘れたかッ!」

「親も親なら子も子ということであるか…っ」

「…あんたらさー、なんかさっきから勘違いしてない?」

「貴様そのような言葉遣い…」

「悪いけど俺様の主はあんたじゃないからね。それで話戻すけどさ、
 猿飛佐助ならいるじゃん、さっきから」

「…は?」

「いるでしょ?あんたらの目の前に。」


そう言ってにっこり笑えば、皆々は一瞬固まるが次々に笑い出す。あーあー、俺様間違ったこと言ってないのにね。どうしよう『  』。俺様冷めてきちゃったよ。


「ぷ…貴様が猿飛…ふふ、確かにその通りだ!」

「つまりは貴様が昌幸様をやったのか!」

「貴様は先ほど城を抜け出したそうだな…そうか貴様だったのか!」

「アハー、低脳すぎて俺様呆れることしかできないや。悪いけど俺様はこいつ狩ってたんだけどね」


床からぞわり、と這い出てくる闇。べちゃり。吐き出すように出てきたそれを見て、一同は悲鳴を上げた。

ま、床から生首がでてきたらそりゃあ怖いか。


「まぁ残念なことに1人犠牲となってこいつを殺せたんだけどね。うーんまさか風魔も囮だなんて、本当一体誰が考えたんだか、」

「お、おま…早くそれをし、しまえ!」

「えー?なんでですか、ちゃんと証拠持ち帰ってきたのに。確認しなくていいんですか?てかあんたらだって晒し首とかやるでしょ、何が違うんだか…」


溜息をつきながら床にずぷずぷと沈んでいく生首に家臣どもは顔を歪ませながら俺様の言った言葉に疑問をもったものが問いかけてくる。ああ、面倒な。


「…1人の犠牲者、と言ったが…昌幸様を犠牲に…!?」

「なーにばかなこと言ってんのさ、今いない人で考えればするわかるっしょ?」

「………まさか、さると」

「ごめーとー!と、いってもあいつは先代で今は名無しだけどね。あれを囮に俺様はあいつを処分したわけ、ま。そのせいで昌幸様が討たれたのは予定外なんだけど…」

「………。」

「ってことでわかった?あんたらは先代に恨み辛みを吐いてたみたいだけど完全無駄な行為ってワケ、ああなんて可哀想な先代。昌幸様のためを思って自らを犠牲にしながらも伝説の忍を討ったのに身内に疑われ犯人に祭り上げられる先代。可哀想に可哀想に。そしてなんて酷い家臣の皆様!」

「さすけ」

「真田のためが思い自己犠牲を払い敵を討ったにも関わらず犯人に奉るだけでなく!昌幸様の大事な人に疑いをかけるだなんて!ああなんて可哀想な先代、ああなんて可哀想な昌幸様!」

「さすけ!」

「酷いなぁ酷いねぇ無駄な行為だねぇそうだねぇ無駄無駄無駄なんて無駄な行為!若様の言葉を借りるようになるけれどそんな暇があるなら真犯人を探すために動いたら?あんなに隊士がいたのにまさか誰も見てないとか言わないよねぇ!ああでもあんなに隊士がいたのに誰1人として昌幸様を守れなかったんだから見て無くてもしょうがないか☆」

「猿飛佐助ぇ!」

「………。」


若様に呼ばれた言葉、気づいてなかったわけではない。ただ無視をしていただけ。若様に今の名前を呼ばれた瞬間顔から表情を消して口を噤めば誰しもが無言になる。才君は特に何か考えてるというわけではないらしい。若様の出方を見ていた。


「…言葉を慎め、そのもの達に当たっても仕方がないだろう」

「…すいませーん」

「弁丸様ぁ!」


明らかに反省の色をみせない謝り方をし終わったと同時に平隊士が部屋に入ってくる。一体なんだという素振りで若様が隊士の方を見れば、隊士は少し怯えたようだがそこはスルーし、隊士の言葉を待った。


「え、あ…!あの、甲斐の虎、武田信玄様が…!」


…来るの、早くね?

昌幸様が死んで30分くらいしかたっていなかったので、俺様がこう思ったのはしかたないこと…で、いいんだよね?どうしよう、普通がわからなくなってきた。



普通のゲシュタルト崩壊
(…お前前からお喋りだと思ってたけど本当にお喋りなんだな…)
(いや、俺様もここまで話したの本当久々で…)
(雑談はそこまでにしろ、客人を待たせるな)
((本当に若様どうしちゃったのさ))
((…わからん))