忍道 (24/31)





今日、父ちゃんと昌幸様は戦に行くらしかった。俺様と才君と若様は見送りにでた。昌幸様と父ちゃんはいつもと変わらず喧嘩を始めた。俺様と若様はそれをスルーして他の兵士達にお見送りをする。才君もそんな俺様達を見習ってスルーして、見送りにでる。今思ったけど忍って見送りにでていいものなのだろうか?まぁ、誰も何も言ってこないから大丈夫だと思う。

まぁ、それが今日の午前中の話。

そして今は、若様と才君と相も変わらず過ごしていた。


「よっと、若様。もうちょっと考えて武器を振るいましょうか。」

「ううむ…よくわからぬぞ」

「…なるべく一撃で倒せるよう、頭、もしくは心の臓を狙い武器を振るえばいい」

「無駄に大振りにしたりすると空ぶったりして面倒だから、極小の動きで倒すんですよ」

「…よくはわからぬが、きゅーしょをねらえばいいのだな!」

「よくできましたー」


パチパチパチと拍手をし、戦闘態勢に戻る。いや、戦闘態勢って言うほどのものじゃないんだけどね?簡単に構えるぐらいなんだけど、

若様が走る。俺様はそれに備えて構える。才君は審判。若様が武器を振るう。俺様は受け止める。若様若様、力のごり押しはやめましょうって言ったよね?あんた大人顔負けの怪力なんだから。俺様パワータイプじゃなくてスピードタイプだから!


「っ、と。脇が甘いですよー若様」

「ぬう!ていやああああ!!」

「うわ危な!若様急所狙えっつったけどそこはだめえええ!!」

「………はぁ」


こんな感じで、父ちゃんがいなくても真田家は(一応)元気です!



▽△



それは、若様とお八つを食べているときに起こった。


「…! 才君!」

「ッ!ああわかっている…。お前は若様を守れ」

「?」


若様は気づいていない。だが、俺様と才君にはわかる。明らかに、同属がいることを。2人で戦闘態勢に入る。もちろん俺様は若様をかばいながら、だ。いつもは他の忍や父ちゃんが始末するのだが生憎戦で誰もいない。いるのは戦忍ではなく偵察に長けている者ばかりだ。つまりは、俺様達が乗り切るしか、道はない。

いつも通りポーカーフェイスを装い、笑顔でまだ見ぬ敵に話しかけた


「あはー、どこの誰だか知らないけどさ。八つ時にこなくてもいいんじゃなーい?俺様、怒っちゃうよー?」

「…気が抜ける。その話し方はやめろ」

「まさかの味方からのだめだし。俺様傷ついちゃう!」

「冗談も程々にしておけ…来るぞ!」


才君が言い終わるが早いか、苦無が飛んできた。もちろん俺様も苦無で対抗し、叩き落したが。

苦無が飛んできた方向を見る。そこには、黒ずくめの男が5人立っていた。


「…どこのものだ」

「……答える義理はない。ガキが、粋がる暇があるならばその子供を渡せ」

「やーなこった☆悪いけど俺様も仕事なのよ、そう易々と渡せるわけないでしょー?」

「…まずは口の利き方から覚えた方がよかったな」

「あれれ?おじさん達お怒り?あはー、子供の戯言にここまで反応するなんてねー。おじさん達あれ?下等なの?下等生物?あははーどっちにしろ下っ端でしょ?俺様に勝てるかなー?」

「…口の達者な餓鬼だ。…足元掬われておっ死ね」

「おっかねー!おっかないねー!も、俺様チビっちゃいそー…。なーんて、まぁ
 嘘だけど。」


ニヤリ、と歪に口元を歪めれば一斉に彼等はかかって来る。ははは、怖い怖ーいwこうさーん。とどこかうざい彼の人のセリフを頭の中で言いながら、来る敵を薙ぎ払った。

ぴしゃり

赤が舞った。当たり前だ、斬りつけたのだから。才君も斬りつけた。残りは3人になった。あはは、弱い弱ーい。かかっていってもいいのだが俺様は若様を守らなきゃいけないので待機。ああもう、面倒くさいなぁ。


「ほらほら、おーにさんこちら♪」


手をパチパチ叩きながら挑発すれば、2人。また飛んでくる。俺様はその攻撃を流しつつ股間に蹴りを入れた。


「!?」


さすがに股間は聴いたらしい。相手は倒れてしまった。いやー、俺様も男になって始めてわかったんだけど痛いよねこれ本当。わかるよその気持ち。俺は心の中で同感しながらおじさんの首を掻っ切る。え?酷い?いやー、だって早く終わらせてお八つ食べたいし。

才君の方を見れば彼は腕を掠ったものの、やはり相手を絶命させていた。大丈夫かな才君?毒とか平気?少し心配しながら残った1人を見やる。うわーなんか強そう。つか顔見えないなぁ…、顔見えないっていうとやっぱ風魔思い出すけど髪別に赤くないし…

俺様がいろいろ考えていると、最後の1人は音も立てず消えた。咄嗟に構えてしまったが、本当にただ消えただけだった。襲ってはこなかった。つまり、帰った。


「………さすけ、若様は…」

「………」

「…さすけ?」

「…あ?ああ、うん。ごめん…若様、だいじょ…あ。」


後ろを振り向けば、見開いた目。動揺の移る瞳。しまった。子供には刺激が強すぎた。…あれ?前も俺様こんなこと言わなかったっけ?

才君に目でアイコンタクトをとる。おいおいどうするよこれ、しまったよこれ。しらん。お前がどうにかしろ。いやいや俺様無理だって、たぶん俺様怖がられてるからどうしようもないって。だがこのままにはしておけないだろう。いやそうだけどさ…。さすずめ会話にするとこんな感じだ。いや本当にどうしよう、参ったな。

頭をバリバリと掻いていれば、若様の口が小さく動くのがわかった。


「ん?どーしたの若様、大丈夫?」

「…あ、うあ……っ」

「うーん怪我は無いみたいだねー、うん。ならいいや。」

「さ、さすけ…?」

「なーに?若様」


にっこり笑ってきけば、また怯える若様。しまった、笑うという選択は失敗だったようだ。


「なぜ…なぜ、そんな、わらっていられるのだ!!」


やはり、といった具合に怒られてしまった。
なんで、といわれても…仕事だからとしか答えようが無いし大体笑ったのは一応気遣ったんだけどなぁ…。

才君を見る。才君はもう知らん振りだ。なんてこったい。
俺様は一応若様と視線を合わせるため、立膝をついた。


「あのね若様、まだ若様にはわからないだろうけど、殺さないと殺されてたんだよ?」

「だから相手のことをいちいち考えてちゃいけないの。」

「理解しろ、なんて言わないけどさ。こうゆう世界だってわかってほしいんだよね」

「殺したことをいちいち気に病んでたら俺様達は壊れちゃうの」

「壊れたくないから無情で人を殺して笑うの」

「難しいかな?難しいよね」

「まぁ、若様は別に俺様みたくならなくていいよ?」

「殺した後笑う、なんてのは不謹慎だからね」

「殺した後は、手を合わせてあげて、それから笑おうか。」

「気に病むのなら責任転換したっていい」

「壊れないために頑張るんだよ」


にっこり笑って告げれば、若様は、わけがわからないといった風だった。才君は、無表情だった。

悪いけどさ、若様
俺様はもうこっちじゃこうゆう性格なのよ
否定してもいいけど
そうすると俺様冷めちゃうからさ
あんまり、否定はしないでほしいなぁ



忍道
(それよか、あの顔隠してた忍…)
(…なんか凄く、嫌な予感がする)