これが僕等の出会いでした (18/31)
いつも通り里に行く途中元気に道に迷っていた。最初につけたようにいつも通りのことだからあまり気にしなくていい。しばらくすればいつのまにかついてるから。着かなかったこともあるけどそのときは偶然にも父ちゃんや里の人に会ったりして今のところ無事着いている。
だが、今回はそうもいかなそうだ。と小さく呟いた。
見たことのない森。いや森なんて一々覚えてないのから何度も行ってる里までの道のりにある森だって見知らぬ森なのだが。なんていうかその…ふんいき?そう、雰囲気が違う森に出てしまっていた!
「……どーしましょ、」
ここがどこなのかなんて全くわからない。とりあえず適当に歩いているがドツボにはまっている気がする。このままじゃやばいのはわかっているがこの時代連絡手段など手紙しかないわけで、逸れた者と連絡を取る手段もないのだ。ああもうケータイが欲しい。電波が来い。お腹減ってきた。 てこてことお腹を鳴らしながら歩く。前なら必ず飴等を持ち歩いていたがここじゃそんな日持ちする菓子など無い。砂糖は高く普通に暮らしているだけじゃ手に入らない。ああなんて不便なことなのか。
そんなことを思いながら歩いていれば、小さく、パキリッと枝を踏んだ音がした。
「…あっち、かな?」
気配なんて隠せていない。音を出したことに慌てて余計な音を出している。武士ではない。忍じゃないのは当たり前。つまりは女子供。だが大人ならばそこまで慌てはしないだろう。たぶん。だからきっと子供なんだろう。そう断定し、きっと子供がいる場所へと向かった。
ざっかざっか音を立てて逃げる子供に目を向けながら。
▽△
木の上をぽんぽん跳びながらついていった。子供はここまでくれば大丈夫だろう、と勝手に判断し木の下で息を整えている。俺以外の気配がする。忍だ。 ぶっちゃけ全く関係が無いので帰ってもよかったのだが、この子供なら道を知っているかもしれない。そう思い、近づくことにした。忍が動く気配はまだない。見られても大丈夫なよう変化しようと思ったが面倒なのでやめた。殺せば問題ないだろう。ああ今更ながら俺もうこの考えかた物騒すぎるなぁ。
こっそり木の下へ降りつつ、子供の下へ向かう。子供はこちらに背を向けていて、まだ気付いていないようだ。
「しょーねん」
「!!?」
肩をポンと叩いてみれば、面白いほどに子供は驚愕し身を引く。その様子にケラケラ笑っていれば、凄い睨まれた。え、なんで。
「子供がそんなひょーじょーしちゃだめでしょー?笑っとけよ」
「ッ、おま、えは!ははうえのつかいのものか!!」
「いや俺もお前も初対面でしょーが。知らんよきみの母上とか。美人?」
「…きれいだとはおもうが…ってちがう!」
「え、美人じゃないの!? チッ」
「いや、ははうえはきれいだけど!じゃなくて!え、と…」
しまった。からかいすぎたか。しどろもどろになっている少年を簡単に落ち着かせ俺も一息つく。忍さん達はまだ来る様子はない。とりあえず、気付いてないフリをしながら俺は子供に話かけ続ける。
「で、しょーねんは一体なんでこんな森の中いるわけ?熊でも狩りにきたの?やめとけ、五郎は本気で強い。背伸びしたいのはわかるけどお前なんて一口だからな?」
「ちげーよ!!だれがすででくまなんてかりにくるか!つかごろうってなんだ!」
「五郎ってのはねー、大人も丸呑みにしちゃうくらい大きい熊さんなんだよー。かなり怖いんだよー。夜更かししてる子は喰われちゃうんだよー」
「な、ほ、ほんとうか…!?」
「うん。そんなの居るわけねーだろって言ったよっちゃん次の日いなくなってたし。残ってたのは服の切れ端と熊の毛だけだったよ」
「そ、そうなのか………。」
おやおや信じてる。かわいーなぁ。わるいごはいねがー!で有名なあれをモチーフにちょっとアレンジしたけど自分で言ってて怖くなってきたわ。あ、ちなみに五郎ってのは俺が前世で持ってた熊の人形の名前だったりする。正確に言うと熊五郎なんだけどな。あとくまみってのもいたな。今思うと俺名前センス全然ねぇや…。
そんな感じで少年と戯れていれば、忍さん達の動く気配がする。そろそろ来るな。俺もろとも殺そうっつー魂胆か。まぁ一応村人っぽい感じを出してるし。髪はさすがに茶髪にしてるし。OKだと思ったんだろーよ。
そうこうしてるうちに忍達が俺達の目の前に降りてくる。あーあ。姿見せないでバッとやっちゃえばいいのに。たかが子供1人殺すのにどれだけ手間かけてんだか、 そんなことを考えつつも表情にはださない。あくまで表情は「急に現れてなんだこいつら?」といった表情である。俺縁起するのうまくなったな本当。
「チッ…おまえら…!」
「え?え?なになに少年の知り合い…な、わけはなさそうだよねー。お兄さん達なーに?俺今少年と青春を謳歌してる最中なんだけどさっ」
「……梵天丸、お命頂戴する」
「ぶはー!俺様スルーね!放置プレイね!!」
「おまっ…はやくにげ、」
ろ。と少年が言い切る前に襲って来た忍さん(1号)を切り捨てる。忍さん(2号)と忍びさん(3号)は突然のことに一瞬固まり、標的を俺に変えてきた。
あーあーあーあーあー。せめて誰か報告に行けばいいものを。
「もったいないねぇ」
無表情で切り捨ててそういえば、虫の息ながらこちらを睨みつけてくる。俺別に殺すの好きじゃないのよ。もちろん死体を監察するのも戦を見るのもね。臭いし。肉の断面図とかきもいし。だけど、まぁ、
「笑顔で殺せるぐらいにはなってるんだけどね」
にっこりと男の最期に笑みを浮かべ、止めを刺す。殺すときは一思いにやってあげてるんだ。俺様優しいでしょ? 顔に飛んだ血を拭いながら少年を見れば、小さく震えていた。しまった。子供の前でやることではなかったようだ。忍の里にいたせいか感覚が鈍ってらぁ。まぁ、やっちまったもんはしかたねーよな。
自己完結し、少年に近づく。少年は、恐怖からか一歩下がった。
「さて少年、邪魔者も消したところで一つ質問なんだけどさ」
「…な、んだよ……おれはなんもしらねーぞ!!」
「え、うっそ。知ってるでしょ?教えてよ。家に帰れないよ。」
「しらな………いえ?」
「うん。俺様迷子」
「……………は?」
「だから、迷子。迷子の子猫ちゃん。」
適当に歩いてたらここについちゃってさーあ?帰りたいんだけど、帰り道わからないし?なんか知ってたら教えてほしーなぁー。みたいな?そう伝えれば、少年は脱力してしまった。どうした少年。とりあえず少年を起こしつつ道を聞く。そうか、あっちに村があるんだな。城下に近い村。つーことはここ伊達領?おおう自分よく歩きだけでここまでこれたな。あ、アニメで馬より早いんだからまぁ普通か。
少年に道を聞き、納得する。一応どっちに向かえばいいのかわかった。だが、このまま少年をここに放置というのも忙しないので少年に一つ優しい俺様から助言を与えてあげましょう。
「ありがとう。それじゃあ俺様は帰るよ。きみもそこの道を真っ直ぐ行ったところに人がいるから、その人の近くにいるんだよ。今度は逸れちゃだめだからね。」
じゃあね、幼き竜さん。
男が言葉を発する前に、茶髪の男は、消えていたという。
これが僕等の出会いでした (! 梵天丸さま!ご無事でしたか!?) (…うん。へんなやつが、まもってくれた) (……あれ、こっちであってるはずなんだけど…あれ?) (おーいさすけー、んなとこで何してんだー?また迷子かー?)
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