小ネタ 2 | ナノ

BSR/不運にもあの日の悪魔と遭遇した
2013/12/09 02:43(0)

※主人公=ひいろ
※急にはじまります





「………あ、帰る」
「え?」

どうしたの、と続けられる言葉を聞き届ける暇もなく、いつになく素早い動きで上着を羽織り鞄を背負って、歩き出す。なんとなくやばい気がする。杞憂であってくれればいいんだけれど。そう思いながら、友達が背後からかけてくる声を総無視する。きっと明日怒られるだろう。けれど、仕方ない。今すぐ帰らなければいけない気がするのだ。少なくとも、外に出ていたくない。そんな気がする。

外れてくれればいいのだけれど。そう思いながら既に走っていると称していい私の歩きは、校門を潜った時点で足が止まってしまった。

「…貴様、は…」

驚愕に目を見開く目の前の青年の顔を見て、そして近くにいる面々にも目を向ける。見覚えはない。全くもって、見覚えはなかった。だいぶ個性的なメンツではあったけれど、誰ひとりとして、私には見覚えもなければ記憶にも存在しなかった。
けれど体は何故かすぐに動けるように体制を整えるし、一度見ただけで逃走路を導き出すために脳が働いている。思いつく逃走路候補を一個ずつボツにしていきながら、目の前にたつ彼等ひとりひとりの動きに集中するという作業は、普段ならオーバーヒートしそうなほどの凝った動きのわりに、嫌に体に馴染んでいた。

「ああ…あぁ!見つけた!見つけたぞ主人公!!」

声高らかにあげられた、もはや怒声にも近いその歓喜の叫びは、空気を盛大に震わせたのと同時に私の全身に鳥肌も駆り立ててくれた。ああ、こいつァやばいやつだわ。銀色の髪をした細長い彼の叫びでようやっと正気に戻ったのか、他の彼の周りの人々も目を光らせていく。
ああ、これはやばい。こいつァ、本当にやばい。ガンガンと鳴る警報が鳴っているのを本能で感じながらも、それでも全くもって記憶にない彼等に戸惑いを隠せない。どうして、なんで。はじめて会ったはずなのに!問いただしたいところだったけれど、そんなことをしている暇があったら逃げろと脳裏が指示を出す。普段使わないような筋肉の使い方をしながら、私は、その場から一回転して背中側にあった学校へと走り去った。

背後で聞こえた笑い声は、遠い記憶で笑っていた彼等と、重なっていた。



忘却された記憶が問う
(逃げられると)(本当にそう思ったのか?)


***
これは説明しないとわからないなと思ったので補足です。
記憶無し主人公と、記憶有り“ヤンデレ”BSR組です。ヤンデレです。とりあえず登場してるのは三成さんだけですが、彼の周りにちゃんとほかの子がいます。全員ヤンデレ。
あと主人公の設定として、大体感は外れる趣向にあるので、早く帰ろうと思ったときに学校に留まっていればまだ見つからない流れでした。残念だったね主人公!

これから無い記憶を思い出さないように辿りながら、誰にも捕まらないように逃げるための、孤独戦線がはじまります。
まあそこまでいかなかったからの、小ネタへボン!なんですけどね(白目)


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