小ネタ 2 | ナノ

弾論/絶望的な世界を見届けるA
2013/11/22 01:15(0)

※無印・2の両方の絶望的なネタバレです。未クリアの人はご注意ください。
※書きたいところだけ書き綴ったのを軽く手直しして付け足しただけのものですので、クオリティ・構成共にひどい出来ですがご了承ください。
※急に終わり急にはじまる
※話がよく飛ぶ

再度注意しますが、これは絶望的にネタバレのオンパレードです。本当にご注意ください。








ガンガンガン、と鉄を鈍器で殴るような音がして、バゴン!と音を立てて扉が外れる音がした。ああ、ここも潮時か。そんなことを頭の隅で考えて、そして立ち上がった。作りかけの部品はもう必要ないだろう。描きかけの製図も、もう必要はないのだろう。きっと、ここら一体では、自分が最後。ここら一体が皆潰れたということは、もう私の存在価値はここにはないということ。コツンコツンコツンと重たい足音を響かせながら、背後からやってくる来客様に向けて笑でも作ろうとして、やめる。自然体でいるのがきっと一番いい。なんせ、こんな薄汚れたところで1人笑を浮かべても気持ち悪いだけだ。それで警戒でもされたら困りものだ。自分は、抵抗する気など一切ないのだから。

コツン、足音が、止まる。
はぁとため息をつき、ゆっくりを首を後ろに向ければ、彼はそこにいた。

「…お久しぶり、かな?我らが希望様?」
「……………」
「あれ、記憶戻ってない系だったりする?」
「…いや、大丈夫、失われた二年間の記憶は取り戻したからね」
「そう、なら会ったことなかったっけ?」
「きちんとこうして話したことはなかったと思うよ…けれど、ボクはキミを、知っている」
「…やだ、私ってば有名人?」
「うん、そうだね………有名人だよ、主人公さん。理性的な、超高校級の絶望だってね。」

眉間に皺を寄せながら言わなくても…。というか、本当に有名人だったんですね始めて知った。
だいぶ勘違いされているようだけれど、まぁ客観的に見れば私の立場なんてそんなもん。理性的な超高校級の絶望って、噛みそうな名前してるなぁ。どうでもいいか。あー、だいぶぐるぐるしたところいたから半分くらい感化されてる。だるい。絶望的にだるい。けれど、だからといって1人でこのまま生きていけるわけもないのを知っているので、もうちょっと頑張ろうと思います。まる。なんてねん。

「…よし、じゃあ…お願いを聞いてくれないかな、我らが希望様?」

ああ、ああ。そんな構えないでおくれよ。唐突に言ったのは悪いと思っているけれど、私も君も、そんなに時間はかけられないんだ。だから、さっさと終わらせたいだけなんだよ。そちらの不利になるようなことは何も考えていないよ、というアピールのために両手を上にあげる。取引、という言葉を使わなくて本当によかった。そんなことを思いながら、私は口を開いた。



(希望様と絶望様)



***



「カムクライズル…まぁ、実質超高校級チームのボスみたいなもんだよ。絶対的王妃に江ノ島さんがいるとして、大臣みたいなもんかな?まぁ、なんにせよ私は興味なかったから知らないけど」
「貴様…そればかりではないか!」
「むしろこのくらいは予想ついてたと思うんだけど?私はずっとあの部屋で行動してたんだから、あんまり外動き回ってたみんなと関わってないんだって。それでも、いつもならさっさと切り捨てる、私視点から見てどうでもいい情報だってちゃんと覚えてるんだから褒めてほしいくらいなのに」
「…本当に貴様があの理性的な超高校級の絶望なのか疑わしいところだ」
「私的にはなんでそう呼ばれてるのかがね…自分の意思と違っていようとも、周囲と同じ行動をするのは人間の真理ではないかな?」
「…あの集団の中で、ずっと意思が違ったまま行動を共にしていたところが、貴方の異常性よ。主人公。」
「へえ。普通だと思うけどね。」

ふう、しゃべり疲れたな。机の上に置いてあるドリンクに手を伸ばし、一口。睡眠薬か何かが入っているかもしれない可能性を踏まえて、ギリギリまで飲まなかった。一応適当に引っ掛けて、相手側の思惑も適当に理解したから、まぁもういいだろう。死にたくはないけれど、間接的に何人も殺したわけだから、殺されるだろうか。いや、直接的に殺す道具を作ったのは、私じゃない。なら私は赦されるはずだ。だって、私は何もしていないのだから。

「………主人公さん、キミは、結局どうしたかったの?」
「どうしたかった、って?」
「…キミなら、思惑が違っていたら己の道を突き進むと思ったんだ。それなのにキミは手を貸して、そして周りがみんな捕まったと知ればさっさと掌を返した…ねえ、キミは結局何がしたかったの?」

本当に疑問に思っている…ようでは、ないようだった。悲痛なまでに前向きな少年の、裏の顔。八つ当たりのような感情が、いや、八つ当たりの感情が自身に向けられる。全ては江ノ島循子による洗脳だったんだと、そう思いたかったのかもしれない。そう、思っていたのかもしれない。そこに、私というイレギュラーが現れて、感情が少しポロリした。飲み込んで、飲み込んで噛み砕いて飲み下して押さえつけて蓋をした感情が、漏れ出している。それほど、私が難いか。それほど、私が理解できないか。いいや、違う。私が、難いんじゃない。私が、理解できないんじゃない。彼が理解できないのは、ひとつだけ。

犯人である私らは生きているのに、無関係であった彼らは、理不尽にもみんな死んでいった。
その理不尽が、未だに、彼の中では…いや、彼等の中では消化できていないのだ。

ぐるりと視線を動かし、部屋を見渡す。全員黒いスーツを身にまとい、割に合わない、仕事というものをしている。絶望的なまでに、それ以外の生き方をできないとでも言いたげに、一身にその仕事をしている。
けれど所詮は、高校生だ。ざっと計算したらさすがにもう高校を卒業している年齢ではあるから、仕事をしていてもおかしくはないのだが、その仕事内容がおかしいのだ。あの平和な時代なら、平和な世界でなら、彼等の二つ名の通り、超高校級な職につけただろう。それが、どうだろうか。絶望的なまでのこの世界では、手に職つけるだけでも難関だ。探偵はまだしも、娯楽など等の昔に悪意にしか満ちぬものとなった今、小説を求める人間はいない。大気汚染に犯された液体になど、浸かれる人間はいない。不確かでしかないものに縋りつけるような、そんな人は、この世界にはいない。可哀想なことだ、と思う。そして、自分も可哀想なやつだと思う。ここは、そういう世界だ。そういう世界なのだ。せっかく、超高校級だとか呼ばれるものに運良く受かったというのに、それを振舞う場所はもうここにはない。
けれど、それでよかったのだろうか。差別も、贔屓もない世界で、生きていく。期待も、切望も、嫉妬もない世界で。恐怖と欲望しかない、綺麗な世界で。

少し思考を飛ばしすぎたか、だいぶ沈黙してしまった空気に尻込みする気持ちから目を背けて、前を見据える。なんだかんだと言いながら、記憶を取り戻しているのならば自分よりもひとつ上であるはずのこの人たちは、どうしてだろうか。自分よりも年下に見えてならないのは。自分よりも、子供に見えてならないのは。自分も、体験すれば、わかるだろうか?

「…、はぁ。ちょっとタイム。変なところに思考動かす癖ついてる。喋ってなかったせいだよねこれ本当…直さないとまずいよね。」
「…いや、ごめん。ボクも、ちょっとおかしかった…今のは、」
「大丈夫大丈夫、問題ない。結局何がしたかったの、だっけか。たぶんこれは、ええと、そこの頭凄い人がよくわかってくれると思うんだけど…」
「…ん?頭凄い人って誰のことだべ?十神っちか?」
「その凄いではない、貴様のことだ」
「ええ!?俺の頭脳って凄かったんだべ!?」
「…気にしなくていいわ。それで?」
「あーうん、やっぱりたぶん一番わかってくれるわ。あれだよあれ、死にたくなかったんだって。」

へら、っと笑って言えば空気が凍った。肌に突き刺さるような、冷たい空気だ。まぁ安定と言わんばかりにその空気を無視して、視線を彼に向けながら続ける。

「キミらみたいに、人間できてねーの、私ちゃんは。だから誰を犠牲にしてでも自分は生きたかったし、死にたくなかった。だって死ぬのって、痛いじゃん?痛いのは嫌じゃん?そういうこと。だから、自分が死なないように、絶望組と手を組んで才能提供して、自分の立ち位置作った。それだけだよ。」
「………じゃあ、あの、殺し合い学園は、」
「正直興味はあった。」

言い切った瞬間、頬が切れた。手を伸ばせば、流れる血液。視線を向ければ何かを投げたモーションをした三つ編みの女の子。意思の疎通、できるようになったんだろうか。また少しずれたことを考えながら、それでも気にせずに続ける。

「ええと、最初から説明するけど、他のみんなはあくまでも『江ノ島循子の絶望に恐怖して絶望堕ちした』わけであって、それが江ノ島循子への憧れや忠誠心に形を変えていって、そして最終的に絶望が甘い蜜になっちゃったりとかしてる子もいたけれど、けど、根本的には『江ノ島循子という対象への恐怖心』からの集いだから、殺し合い学園に対して特別な感情を持っている人はほとんどいないと思うよ。けれど自分に関しては、『江ノ島循子という対象への恐怖』というものがない。つまらなくなくて、そして死ななくて済む場所にいれればそれでいいんだもの。だから、君達を実験台として使った殺し合い学園だってそう。面白いもの、というか、実験対象でしかないんだよね。記憶を摘出された人たちの言動は、やはり同じなのか?とかさ。いい研究データは取れたと思うよ。まぁあれをデータとして取っといてたのなんて、自分くらいだろうけどね」

「そんな震えないでくれよ、仕方ないじゃないか。私は絶望堕ちできなかったんだからさ」

笑って言えば、彼は、我らが希望様こと苗木誠先輩は、私を射殺さんばかりに見つめてきた。
だって、しょうがないんだ。そうでもしないと、生きれなかったんだから。



(後の祭りとはいうけれど)



***




吐き気が、した。目の前の存在に吐き気がした。左腕を移植した彼にも、生理的に吐き気がこみ上げてきたけれど、今回はあまりにも自分の感情がごちゃごちゃになりそうで、殺したくなってくるほどだった。目の前の存在が、憎くて憎くてたまらない。今すぐその首に手をかけて、喋りを止めさせたいくらいだった。

「…苗木君、本当に彼女も助けるというの?」
「……………」
「あいつは…全て自分の意思で行動したやつだ。生かしておく必要はあるまい。」
「いやでもよぉ…十神っち、実際、あいつの言うとおりっちゃ言うとおりだべ?」
「なにがよ!い、今すぐ殺してやるべきだわ…!あいつは、生かしておいたら、駄目、ダメよ苗木!!」
「実験とか、人の命をなんだと思ってるんだかわからないよ…!ねえ、私達の殺し合いって、面白いことだったの…!?」

悲痛な仲間の声がする。みんなが言いたいことは、もっともだと思った。正直、ボクだって聖人じゃない。許せないことだって、ある。それが今だ。今すぐ本部に引き渡して、殺されてしまえと思う。

けれど、それじゃダメだということだって、わかっている。

「…彼女は、記憶をなくしたところであのままよ、苗木君」

わかってる。わかってるけれど、やっぱりそれはダメなんだよ。霧切さん。



「………取引を、しよう」
「………我らが希望様のお望みとあらば、喜んで」



(罰ゲームのような後味)



****



「………本当はみんなと仲良しだったって言ったら、疑います?」

誰もいないところに問いかける。返事は帰ってこない。誰もいないのだから、当たり前ではあった。それを望んで誰もいない時に声を出しているのだ。

「いっぱい遊んだり、いっぱい教えてもらったり、したんだよ。本当は。たくさん怒られたりもしたし、たくさんからかったりもした。授業が被ったときは、専門的な会話しまくって変なツッコミを入れられたこととかもあった。全部、覚えてる。覚えてるんだよ。思い出のひとつとして、絶望に飲まれなかったばかりに、楽しかったことも、つまんなかったことも、全部覚えてるんだよ」

それが普通だったはずなのに、みんなで覚えていて、大きくなって、あんなことあったね、こんなことあったね。そう語り合うのが、普通であったはずなのに。卒業して、ふとしたところで会って、久しぶりだね!なんて言い合う。そんな世界が、普通であったはずなのに。

「…壊したうちの1人が、何言ってんだって感じか…。だって、仕方ないじゃん。彼女だけなら、きっと私らだって殺し合い学園生活の一員だったよ。けれど、ちがかったんだ。みんな、みんなが堕ちてたんだ。伝染病のように、みんな罹ってたんだ。ずっと、知らなかったんだよ。ぐるぐるした雰囲気が怖くて、逃げてたんだ。一緒に友達と逃げようとしたら、その友達がぐるぐるなんだ。そんなの、そんな、どうしようも、ないじゃないか」

全てを捨てて逃げられるほど、私は強くなかった。精神的にじゃない。物理的にだ。殺されたくなかった。あの殺し合い学園生活に1人だけ突っ込まれるのも嫌だった。だから、だったら周りを蹴落とすしかなかったんだ。

みんなと一緒に蹴落としていくしか、なかったんだ。

「…なぁんで、こんなにハズレくじばっか引くのかなぁ。ただゆっくりしたいだけなのに、さ。モテモテすぎてツライなぁ…ほんと、」

つらい、なぁ。



(自業自得の地獄めぐり)


****


人から見たら、外道畜生の道だったのかもしれない。悪魔に魂を売った人間のように見えたのかもしれない。自分の生に縋り付くだけだなんて、と聖人のようなことを言われるかもしれない。じゃあ、逆に言おう。その外道畜生で、悪魔に魂を売ったような生活が、どれだけ苦しいものだったか、お前らにわかるのかと。苦しいならやめればよかった、とか言わないで欲しい。あくまでも、あくまでも前提に存在しているのは『他人の死よりも自分の死を恐れること』だ。自分がいかに死なずに済むか、自分がいかに悪魔を騙せられるか。普通の人間の思考で、絶望堕ちした人形の心理言動をどう読み取れるか。お前ら常任には、わからないだろう。狼のふりをしたうさぎが、どうやって狼の群れで暮らしていたかなんて、

わかりゃ、しないだろう?



(それでも聖者は冒涜する)


***


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