小ネタ 2 | ナノ

弾論/絶望的な世界を見届ける@
2013/11/22 01:07(0)

※無印・2の両方の絶望的なネタバレです。未クリアの人はご注意ください。
※書きたいところだけ書き綴ったのを軽く手直しして付け足しただけのものですので、クオリティ・構成共にひどい出来ですがご了承ください。
※急に終わり急にはじまる
※話がよく飛ぶ

再度注意しますが、これは絶望的にネタバレのオンパレードです。本当にご注意ください。







「………ねえ、田中くん」
「…………」
「たーなーかーくーん」
「…、なんだ」
「…いやぁ、生物の授業、教えてほしいなぁって」

へらり、とごまかすように笑ってみた。彼は少し眉間にしわを寄せたあと、手に載せていたハムスターをそっと自分の肩へと戻し、私の方を向いてくれる。どうやら、教えてくれるらしい。
ぱらぱらと教科書を適当にめくりながら、ありがとーと間延びに返事をする。ふん、と返ってくる声を聴きながら、ちょっとだけ安堵の溜息をついた。


「くっずりゅーくーん」
「…あ?あぁ…主人公か」
「辺古山さんは一緒じゃないの?」
「あぁ…って、いつも俺とあいつが一緒だと思うんじゃねーよ!」
「だって気づくと必ず一緒にいるじゃん」
「う、うるせーな居ちゃ悪ぃかよ!」
「いや別に。まー九頭龍少年だけでもいいや。これあげる。」
「は?んだよ、これ」
「かりんとうー、確か好きだったよね?貰っちゃって家にたくさんあるから、あげる」

はい、と押し付けるように持たせれば、彼は少し目を見開きながら、照れたようにそっぽを向いて「サンキューな」と言ってくれた。本当は辺古山さんも一緒にいてくれれば良かったんだけれど、そう上手くはいかないらしい。適当にひらひらと手を振りながら、彼と別れた。


「あっれー罪木ちゃん、何してんの?」
「ふぇ!?あ、あぁ、主人公さぁん…」
「ご飯食べはぐっちゃうよ?早く行こ」
「え、ぇえ!ご、ごごご一緒してもいいんですかぁ!?」
「いや、ダメだったら誘わないし…」

いいから早く、と手を握って歩き出せば、ふゆうふゆうとわけのわからない鳴き声を上げてついてくる罪木ちゃん。喜んでくれているらしい。彼女をいじめる人はもうここにはいないのに、どうして彼女はまだこんな些細なことで喜んでいるのだろうか。
食堂までの道が、なんだか長く感じた。


「豚神ー澪田っちー」
「…あぁ、主人公さん」
「お?おぉお??主人公ちゃんじゃないッスかー!こんなところで偶然っすね!」
「ぐうぜーん、うん、偶然。ところで二人は何してんの?」
「ンンン…惟吹のアンテナがビビッときたんす!」
「僕は澪田さんに付き合ってただけだよ」
「ふーん………あ、そういや、お菓子持ってきてるんだけど食べない?」
「食べるっすー!女子会っすね!」
「いや、僕は女子じゃないよ…」
「白夜ちゃんは無問題っす!」

けらけら笑いながら、いつも通りのハイテンションで駆け巡る澪田っちを見て、豚神くんと視線をあわせる。お互いに苦笑しながら、お菓子を食べるために教室に向かった。




そのあとも、いろいろなことがあった。普段やられてばかりなので、花村くんにセクハラしてみたり(案外触り心地が良かった。どことは言わないが。)終里ちゃんにお菓子を与えてみたり、トイレに走り込みたい弐大くんに便座ブロック仕掛けてみたり、ソニアちゃんとドラマについて話し合ったり、小泉ちゃんと西園寺ちゃんも巻き込んでみたり、左右田くん…には特にあわなかったけれど。

それから最後に、狛枝くんに会った。


「…狛枝くーん」
「ん…?あぁ、やぁ。何してるの、こんなところで?」
「それはこっちのセリフなんだけどなぁ、ねえ、狛枝くん」

どうして一個下の学年の寮なんかにやってきてるの?

あくまでも自分のペースを崩さないように、うっそりと笑みながら、問いだしてみる。彼も、いつものように飄々とした態度は崩さなかったけれど、それでも少しだけ、少しだけ、昔の匂いがした。

「…ちょっと用事があってね。まぁもう終わったし、#NAME1#さんは?」
「食堂に忘れ物しちゃってさー…って思ったらランドリーだったんだけど。ほらイヤホン。」
「へぇ、じゃあもう戻るんだ。一緒に戻ろうか?」
「うん、そうだね。じゃあ帰り道ついでに明日私があたる部分の数学の答えを…」
「あはは、先に行ってるね主人公さん!」
「ちょっと狛枝くん!?」

笑いながら全力で走り去って行く狛枝くんを、私も全力で追いかける。けれどもやっぱり体力も、足の長さも違うから、簡単に彼の背中は小さくなっていった。その姿に、どくりと心臓が鳴ったけれど、見て見ぬふりをした。そう、きっと、気のせいだ。気のせいなんだ。




「気のせい、だって、言ったのに」



(前触れを予兆する)



***



普段なら自分からわざわざ関わろうとなんて、しなかった。たまの気まぐれだろうとみんなは思ってくれたらしいけれど、本当は、気まぐれなんかじゃなくて故意だった。なんだか、今、声をかけなくちゃ、ダメなんじゃないかって。くだらない話をして、くだらない毎日を過ごさなきゃいけないんじゃないかって、そう思って声をかけた。どこか遠くを見ていたその瞳に焦点を戻すように、へらへらと何もわかっていないような風を装って。空気なんて読まないよと言うように、へらへら、へらへら。私は馬鹿だから、一体彼等が、何に悩んでいるのかはわからない。わからないけれど、放っておいちゃいけないことくらいは、わかるんだ。わかっちゃったんだ。遠い遠い世界の話を、身近で聞くことがないようにしなくちゃいけないと思って。そんなの、ただの考えすぎなんだろうと思ったりして。けど、ほんとは、

「…ねえ、どうして、みんなぐるぐるしてるのかな」
「…さーな」
「私、何かしたかな。いや、何もできなかったのか。何かできるとは思ってなかったけど、カリスマ性もなければ、リーダー性もない私に何かできるとは思ってなかったけど。」

それでも頑張ったつもりだったのになぁ。そこまでこぼしても、彼は何も言わない。何も言う気がないのだ。「で、」と続けられた言葉に耳を傾ける。君だけは、君だけは、もしかしたら。なんて、甘い考え。

「ここでみんなと一緒に死ぬのと、俺と一緒に来るの、」

どっちがいいよ。にかりと特徴的な歯を見せて笑う彼は、いつもの彼だった。いつもどおりの彼だった。好きな女の子を追いかけて、嫌いな授業に泣き喚く、いつもの、彼だった。それがまた異様で、異常で、柄にもなく少しだけ、泣きたくなった。そんな感情を見ないふりをして、へらりと笑ってみせることにする。怖くて、恐くて。震えそうになる足は、実際には震えているのだろう。ぎゅう、と力強く、けれど彼には見えないように手を握る。少しだけ伸ばしてた爪が手のひらに刺さって、痛い。痛い。痛い痛い痛い。

痛いのは、怖い。

「いいよ―――面白いんだろうね?」

面白くなかったら、承知しないんだから。
仮面をかぶるように微笑んで、全ての感情を飲み込んで。そして私は騙りだす。欺いて、騙り通して、生き残るために騙りだす。もう後戻りはできないのだろうけれど、だって、死にたくない。死ぬのは怖い。痛いのは、怖い。

怖いことは、誰だって、嫌でしょう?



(臆病者は笑い出す)



***



はじめて彼女を目にしたとき、私は特別な感情は抱かなかった。特に第六感が働いたでもなく、ただただ、彼女に対して何も抱かなかった。



「私はね、自分が大切で、大事で、仕方がないんだ」

ことん、と紅茶の入っていたティーカップをソーサーの上へ置く。この空間には、私と彼女の二人だけ。他の誰も、ここには居ない。好き勝手各自行動して、好き勝手世界を絶望に染めているんじゃないだろうか。正直考えたくもないけれど、自分に起こっていることじゃなければ正直どうでもいい。何が起ころうが、起こらまいが、私が無事ならそれでいい。
だからこそ、彼女は騙すべきではないと見た。だからこそ、彼女には、全てを打ち明けておくべきだと見た。ただ、それだけだ。

「世界に希望を抱くほど世界を信じていないし、世界に絶望を抱くほど世界に期待してない。世界がどうなろうと私が無事ならそれでいいし、世界が生きているのに私が死ぬなら、私は世界を道連れにしてでも殺すだろうし。」

いやまぁ、実際そんなことをできる力はないのですが。できたらいいなぁ、という希望的観測。どうせろくな死に方はしないだろう。苦しんで、苦しんで苦しんで泣き叫び這いずりまわりながら無様にも殺される。誰も心を傷めない。誰も、痛める心を持っていない。そんな世界だ。

「へぇー…それで?」

興味が無いのだろう、自分の爪を適当に眺めながら適当に続きを足してくる。それで、と言われても。正直それだけだ。絶望的に飽きっぽいらしい彼女の扱いは、わからない。引き伸ばすべきなのか、つまらないまま終わらせるわけなのか。まぁ、死ぬときは死ぬのだから、と自分を達観させる。

ああでも、と、ひとつだけ続けることにした。

「面白ければ、なんでもいいかなぁ、っては思ってるよ」
「…面白ければ?」

おや、どうやら興味を引けてしまったらしい。そんなつもりはなかったのに。うーん、本当にそれだけなんだけどなぁ。

「つまらないことより、面白いことの方がいいじゃない」
「それはアタシも超賛成!でも、アンタが言うような生ぬるい面白いことは、起こらないと思うけど?」
「そりゃぁそうだろうねぇ。大丈夫、面白いことなんて発想を変えれば見つけられるから。」
「へぇー…、そう。そうそうそう。じゃあ、例えば?」
「例えば?」

例えば、か。少し考えて、思いつく。考えるまでもないことだった。

「例えば、というか…やっぱり、今この現状とか?」

世界が壊れる音がした。壊れる世界に恐怖した。けれど、それがなんだと言うのだろう。怖いものは確かに怖いし、できれば平和でいてほしいのは確かだ。けれど、けれどもだ。世界の崩壊を目にしたのは初めてのことだし、こんな経験、普通に生きているだけでは体験することなんてなかっただろう。しかも、普通に世界に恐怖する立ち位置だけではなく、世界を壊した張本人と対談を交わしながら、狂ってしまった友達に合わせて笑い合い、自分よりも下の者を蹴落とし、それを笑い合うだなんて!そんな非現実的で、自分がそんな超難易度の高い場所に立っているんだと思うと緊張でお腹が痛くなってくる。けれど、それが、最高に面白い。のかもしれない。

「…へー、あんたマゾ?」
「さっき自分が大事って言ったばかりだと思うんだけど」
「それもそうだったわ。じゃあアンタ、変な奴?」
「普通だと思うけどまぁ、変な奴だと思うなら変な奴なんじゃない?」
「ふーん。ま、いいよ。精々頑張って愚かにも這い蹲りながら生きるがいいわ!私様は見届けてあげましょう!」
「わーありがとう黒幕様ー」

適当にぱちぱちと拍手すれば、気に入ったのかなんなのか、「では、黒幕様から主に仕事をくれてやろう!」とか言い出した。仕事とかめんどくせーと思わないでもなかったけれど、飲み込んだ。


(人間は立ち回る)


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