小ネタ | ナノ

復活/アンコールは止まらない
2013/02/18 05:10(0)

※「引きこもりの大空」、の番外編もどきです。
※ifのお話ですので、本編とは関わりがありません。
※急にはじまります。




人の命を、踏み潰しながら生きている。
それでもいいと思った。実際には、どこかの誰かが踏み潰した命の上を私も歩いてるだけに過ぎない。もう潰されているものを、もう一度踏み潰そうとも、先に踏み潰した人へと恨みは行くのだ。私へは、滅多なことでもない限り、来やしない。
恨みだとか、憎悪だとか、面倒くさいもの私に必要ない。真新しい人の命を踏み潰す必要だって私にはない。私は、そういう存在なのだから。

そういう、存在であったはずなのだから。


「…そういう、存在で、いれるはずだったのにな」


消えるはずだった視界に広がるのは、見慣れた部屋。
(情報として、見覚えのある部屋。)

溶けるはずだった身体に広がるのは、知っている血液。
(この身体に、予め通っているもの。)

落ちるはずだった生命に広がるのは、ありふれた未来。
(まだ死なない。まだ死ねない。死なせてはくれない。)


ホワイトアウトはしなかった。熱に包まれた。意識は飛んだ。それなのに、なぜ、私は生きている。しかも、一番いたくない場所で。一番いきたくない場所で。存在を知らしめるように、ご丁寧に、小さな鏡まで置いて。


「…罪を、背負えと、そう言ってるの?」


全ての業を背負わずに、のうのうと死のうとしやがってと?こんなところで、死なせてやるかと?死なんてものを望むお前には、最高な地獄をやろうと?

ははっ。すっごーい。

笑えねえよ。


「私は、最初から、死なんて、望んでない。」


私は一度だって死にたいなんて本気で思ったことはない。死んだら楽かな、なんていくらでも考えはした。その程度だ。誰だって考える、思春期なら、誰だって考える。その程度だ。
私は、死にたくないといった。あんな痛い思いはしたくないと。けれど、それを無視してまで私を散々殺していきやがったのは、あいつらじゃないか。罰を受けるならあいつらだ。地獄へ行くべきなのはあいつらだ。最初から最後まで、無実で無知で無関係だった私を、理不尽にも殺していったのは、理不尽にも何度も踏み潰していったのはあいつらだ。それなのに、私が、悪いのか?

問いかけに答えるものはいない。回答を求める声だってない。当たり前だ。私は、ひとりなのだから。見慣れたベッドの上で、いつも通りに起き上がり、今日もまた生を紡ぐ私は、ひとりなのだから。


「、最悪」


隠しもせず嫌悪を露にし、小さな鏡を片手で割った。パキンッ。いい音がして鏡は割れた。破片で手が切れるなんてことはお構いなしに、そのまま握りつぶした。ぐにゅり。手を開いたら、鏡は、溶けていた。

手は、切れていなかった。


「うわ…気持ち悪い。」


素手で鏡を潰したのに、手が傷ついてない。それどころか、鏡は溶けてしまった。まるで私のようだ。そうだ、これが、私だったのだ。なるほど。そういうことか。確かにこれは、気持ち悪い。もう二度と味わいたくないような、もう一度だけやりたいような、そんな感覚だ。


「だから、死んだの?ねぇ、」



綱吉。




アンコールは止まらない
(高い視線、大きな手)
(確かにそれは、俺の身体だった。)



***
ふと思いついたので、息抜きに少々書きあげてみました。
雰囲気すぎてわかりづらいですが、本編50話の、その後。
もしも、死んだら世界を超える力が、綱吉にも備わっていて。
2人共、死んでしまったら。

肉体的にと、精神的に死んでしまった2人が入れ替わったとでもお考えください。
そうなると、綱吉は、肉体的にも死んでしまったことになりますけれど。
いえ、死んでませんよ。きっと。死ねませんから。どこかへ、飛んでいったんですよ。彼女の身体で。きっと。

安定の深くは考えていません設定。


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