BSR/前世で愛を誓った夫が現世で他の女にうつつを抜かしていたんですがどうすればいいですか
2012/11/12 00:36(
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※急にはじまり急に終わる
※走り書き
※戦国からの学パロ
※オリジナルキャラ有り
※名前/主人公=ひいろ
「主人公、主人公…!!」
悲痛な叫び声と、今にも泣きそうな情けない顔の夫が目に映る。ああ、ああ、そんなに情けない顔をして。貴方様は、武人でしょうに。このお人は、常常思ってはいたけれど、少々情が強すぎる気がする。戦なのに情を持ち、悲痛な面持ちで帰ってくることなどざらにあった。その度にただただ気づかないふりをして、おかえりなさいまし。とわたしは告げるのだ。それだけで、少しでも貴方様のお心が晴れるのならば、いくらでも言ってやるさ。まぁ、もう、そのようなことはできないのでしょうけれど。
「来世で、平和な来世で、また、絶対…絶対お会いしましょうぞ…!」
「は、い…」
「佐助と、絶対に、絶対に向かいに行きまする!どんなに年が離れていようと、来世で会えなくてそのまた来世になろうと!絶対に!!」
「、は、い…!」
来世で、お待ちしておりまする。
もう涙と死期を告げている病のせいで視力は弱まり、お二人がどんな顔をしているかはわからない。
けれど、きっと、2人共、涙をボロボロこぼれるのを必死で抑えながら無理矢理に笑みを作り出しているのでしょう。ならば、わたしも、ご期待に備えなければ。
本当に笑えていたかはわからないけれど、最高の笑顔を2人に手向け―――
―――――そしてわたしとしてのせいめいは、そこで途絶えた。
――――それが、わたしの゛前世゛の最期である。
「主人公、道は大丈夫?」
「大丈夫です!昨日ちゃんと確認致しましたから」
「といって迷うのがあんたなんだけどね…まぁそこまで遠くもないから大丈夫か。いざとなったら同じ制服の人についていくのよ?」
「わかっています!では、行ってきまする!」
「はいはい、いってらっしゃーい」
ニコリと笑いながら手を振って見送ってくれるお母さんにわたしも手を振り返し、学校への道を脳内でリピートしながら歩き出す。
今日は、所謂転校初日というやつだ。前日に確認と顔出しは済ませているけど、あれは休日なため生徒はほとんどいなかった。だからちゃんと生徒に合うのは今日がはじめて、というわけである。といっても、引っ越してきたのもつい先日だから全体的にはじめてレベルなんだけれどね。
わたしが選んだ学校は、婆裟羅高校。言うまでもなく、婆裟羅という懐かしい言葉に惹かれてつい選んでしまった学校だ。今まで生きてきた中で、迎えに来ると前世で言っていた貴方様とは未だに会えていない。だから、だったのかもしれない。もしかしたら、もしかしたら会えるかもしれない。なんて思って選んでしまった。
いつまでも過去にとりつかれているのは、わたしだけかもしれないのだけれど。
「………まぁまず、輪廻転生自体普通はしませんよね…」
記憶を持ったまま、わたしは現世に生まれ落ちた。
貴方様も、記憶をお持ちになっていればよいのですけれど。
不安と期待を胸に秘めたまま、見えてきた高校にまたキュっと胸が締め付けられた。
***
「遠くの県からこっちに引っ越してきて、今日からこの学校に通うことになった主人公だ。みんな仲良くしろよ」
「はじめまして、主人公と申します。これからよろしくお願い致します」
ぺこり、と頭を下げれば拍手が聞こえてくる。ああよかった、練習通りに噛まずに言えて。
ひとり安堵していると、先生が私の席を教えてくれる。一番後ろの、窓から二番目。そこがわたしの席らしい。
緊張を隠しながらその席へと向かえば、窓際に座る女の子と目があった。
「主人公さん、わたし千代って言います。これから隣同士よろしくね。」
「千代さん、ですね。こちらこそ、よろしくお願いします」
「…ホッ、よかった…まともだ…!」
「…? 千代さん?」
「あ、ごめんなさい、ちょっと美形を見るとつい癖で…」
「そうなんですか?おもしろい癖ですね」
ふふふ、と笑うと恥ずかしそうに千代さんも笑った。
ところで、まともだ、とはなんなんでしょうか?彼女の周りには残念な美形でも多いのだろうか。まぁ、今はまだ、知り得ませんけれど。
それからすぐに始まる授業で先生の説明を聞きながら、僅かに教科書が違うことに気づき早速千代さんのお世話になった。どうやら、ここの学校は少しばかり特殊なようで。歴史、それも日本史が特殊な教科書だった。まさか、いや、絶対そうだとわかるまで、憶測でも期待しないこととしましょう。期待が外れたときほど、悲しいものは、ないのだから。
チャイムが鳴り、授業の終わりを知らせる。
これでも授業が進んでいることを考えて、予習をしてきたのだけれど日本史だけはそうはいかなかった。なにしろ、まず教科書が違うところから意味のないことなんですもの。早く教科書を買いに行かなくちゃ。
筆記用具をしまいながらそんなことを考えていれば、千代さんがお弁当をもって一緒に食べないかと誘ってくれた。もちろん断るはずもなく、よろこんで、と、答えようとした。
そう、なつかしい、叫びにも近いような、あの雄々しい雄叫びを聞く寸前までは。
「千代殿おおおおおおお!」
バァン!!と扉が壁にあたってその衝撃でしまる。よく今ので扉壊れなかったですね、と思いながらも一瞬だけ見えたその懐かしき姿にわたしは胸が踊っていた。
「あーあーもう旦那ってば…早くお昼食べたい気持ちはわかるけどもっとゆっくり扉を開けるってことくらいできないのかねぇ?」
「Ha!相変わらずfoolな男だぜ」
「千代ちゃーん!早く昼飯食いに行こーぜ!」
わらわらと教室に入ってくる、その懐かしき面々に踊っていた胸もそこそこに、わたしは驚愕してしまった。まさか、全員いるのか、と。
どくどくと騒がしい心臓部分に手を当てて、小さく深呼吸をする。ああ、会えた。やっと会えた。貴方様だけではなく、ほかの方々まで!この平和な、乱世ではない時代で、皆様と出会えた。嬉しい。嬉しくて、たまらない。
わたしのそんな姿を見て、なにかを勘違いしたのか千代さんが謝ってくる。そしてキッと皆様を睨み、そのまま怒鳴っていた。
「ちょっと!主人公さん驚いてるでしょうが!もっとゆっくり静かに普通に入ってきなさいってば!」
「も、申し訳ありませぬ千代殿…!ですが某、早く千代殿とお弁当を食べたくて…!」
「あ、旦那ってばだいたーん!」
「ななななnなにを抜かすか佐助ェ!破廉恥であるぞ!!そ、それがしはただ純粋に千代殿との昼食を…!」
「まぁまぁそんな隠すことでもないじゃんか幸村!つっても、抜けがけはさせねーけどな!」
「前田殿まで!だ、だから某そんなつもりはこれっぽっちも…!」
顔を真っ赤にさせて、慌てて弁解する貴方様。それを見てからかっているのは、貴方様をいつも隣で支えてくれた佐助で、にやにやと笑いながら譲らないぞ、と言わんばかりに瞳を輝かせているのは風来坊であった前田慶次殿。
…え、と、聞いている限り、この人達はみんな…その、千代さんに所謂ゾッコンというやつでありまして、え?嘘、そんな、嘘でしょう?ねぇ、貴方様。わたしのこと、覚えて、いるんでしょう?
ジッと、すがりつくような気持ちで貴方様を見ていれば顔を真っ赤にさせたまま視線をこちらに向けてきた貴方様とバチり、と目が合う。
思い出して、言葉にならずに心の中で叫ぶように呟いた願いは、貴方様の言葉で打ち砕かれた。
「………誰でござるか?」
「あれ、本当。見覚えない顔。」
「あぁ、ほら、転校生来るって噂たってたでしょ?今日来たの。主人公さんって言うんだよ。主人公さん、こっちのは幸村、佐助、慶次、政宗。馬鹿だから気にしないでやってね」
「ちょっと千代ちゃん?まさか俺様その馬鹿の括りに入ってないよね?いくら千代ちゃんでも許さないよ?」
「あーあーうん大丈夫入ってないよーうんー」
棒読みのまま佐助から視線を逸らす千代さん。ええ、ええ。存じておりますよ。佐助はもちろん、幾度言っても門を壊して城へ遊びに来ていた前田慶次殿、我が夫の宿敵であり、友であった伊達政宗殿。…そして、我が夫で、前世にて来世で会おうと約束しました、幸村様。
全員、全員覚えておりまする。出会いから、わたしが最後に出会ったときの記憶まで。ひとつも忘れることなく、それは執念とすら言われそうな鮮度で、鮮明に覚えていまする。
「へぇ、あんたが噂の転校生ねぇ!えらいべっぴんさんだ!今紹介あったように、俺は前田慶次。こっちは相棒の夢吉だぜ」「キキッ!」
『へぇ、あんたが幸村の嫁さんねぇ!えらいべっぴんさんだ!俺ァ前田慶次、風来坊やってるんだ。で、こっちは相棒の夢吉!』『キキッ!』
「ああ、あんたが転校生。俺様は猿飛佐助、まぁよろしくね」
『あんたが姫様?俺様は旦那の忍の猿飛佐助、困ったときは使いなよね』
「申し遅れて申し訳ない!某は真田幸村、よろしくお願い申しまする!」
『ももも申し遅れて申し訳ない!そ、某は真田幸村!ふ、不束者だがよろしく願いもうしまする!!』
被る゛過去゛との記憶。世代が変わろうとも、大体みんな言ってることは同じ。少しだけ、少しだけ悲しいと思う気持ちを押し込めてわたしも笑顔を返した。
゛なんで、おぼえてないの?゛
そんな気持ちも、押し込めて。
「…ちょっと政宗、ぼーっとしてないで自、己、紹、介!」
「っ!そ、sorry…伊達政宗だ…、…よろしくな」
「(…?)はい、主人公と申します。最近こちらに引っ越してきたばかりなので知らないことばかりですが、よろしくお願い申しまする…」
伊達政宗様の様態が不自然なことが少しばかり疑問に思うけれど、いつまでもこちらから自己紹介をしないなど不躾にも程がありますので、切ない気持ちを無理矢理押し込めて笑顔で自己紹介をする。生憎、昔と違って現世の記憶と経験しかないからか、私の押し込めた気持ちに誰も、誰も、気づくことは、なかった。
「そうだ、それと主人公さんと一緒にご飯食べるんだけどわたし…」
「なんと!では、主人公殿もご一緒に!」
「…って言ってるけど、どうする主人公さん…?」
千代さんが、困り顔で話かけてくる。ちらり、と様子を伺えばまぁいっか、というような顔をしている前田慶次殿。一瞬だけ嫌そうな雰囲気を出した佐助。そして、千代さんとご飯が食べたくて致し方ない、幸村様…。生憎、伊達政宗様は先程から何を考えていらっしゃるのかはわからない。ただ、ジッとその場を見ているだけにもとれる。
つきり、とまた痛む胸を無視してわたしは「いいですよ、わたしは。むしろわたしなんかがお邪魔させてもらってよろしいですか?」と言葉を続ければ、千代さんも前田慶次殿も幸村様も「いいよ」と言ってくださった。佐助は、特に何も言わずに、じゃあ行こうかと歩き出す。昔から、警戒心だけは強いこだったけれどそれは現世でも同じらしい。変わってないところが、嬉しいのやら、悲しいのやら。
「…あの、どこかに行くのですか?」
「あ、うん。ごめん言ってなかったね、いつもみんなで屋上でご飯食べてるんだ。たぶん、先に行ってるやつらもいるから増えると思うけど…大丈夫?」
「あ、はい。むしろ本当にわたしなんかがお邪魔していいものなのか…」
「いいんだよ全然!むしろ主人公さんみたいなまともな人が欲しいよわたしは…!」
「は、はぁ…あ、でもわたし少しお手洗いに行ってきたいので、お先に行っててください。あとから行きますので」
「…主人公さん屋上までの道のりわかる?」
「大丈夫ですよ、上を目指せばどうにかなりますでしょう?」
「…それもそっか、じゃあ先に行かせてもらうね。あとでね主人公さん」
「はい、またあとで。」
「千代ちゃーん早くー!」
「待ってよ慶次ー!」
さっさかと行ってしまう皆様方を見送り、そして先程言った通りにお手洗いへとわたしはむかう。
見て、いられなかった。
わたし以外の異性にどもることなく話しかけ、ましてや食に誘う幸村様を、警戒の瞳でわたしを見てくる佐助を。
逃げた、のだ。わたしは、あのお二人から逃げ出した。わたしの知らないあのお二人から、に出してしまった。
「…予想内、だったんですけど…ね…」
予想もした、シュミレーションもした。けれど、現実を目の当たりにすると、やはりキツいものがあった。
ずっと待って、待って待って待って、その結果がこれか。
「…深く考えるのは、やめましょう。覚えていないのならば、また一から作るのみ!」
グッと拳を握り、前世での出会った頃を思い出す。
少し状況と対応は違うけれど、あの頃と大体は同じではないか。
認めてもらうまで、わたしは頑張るだけだ。
お手洗い室から出て、教室にあるお弁当を取り、見ず知らずの屋上へと足をすすめた。
****
「千代ちゃんの卵焼きいただき!」
「うわっ、ちょっと慶次勝手に人のとるな!」
「前田殿おお!な、なんとうらやま…否不躾な!ちゃんと許可を得てからもらうでござる!」
「そうだよまったく!ハンバーグは幸村にだけあげる。はい幸村口あけてー」
「は、破廉恥でござるうううう!」
「あ、でも口開けるんだね旦那」
体は正直ってやつー?なんて笑い声を聞きながら、現在わたしは屋上にはいれぬまま扉の隙間から皆様の行動を見ております。
先程はあんなことを言ったけれど、だけれども、一体誰が信じ現世で前世の記憶まで抱え待っていたのにそのお相手がまったく別の女とイチャコラしていると思うのか。
これじゃあ、本当に待っていたわたしが馬鹿みたいじゃないか!
ああなんでそんな見知らぬ女になんか現を抜かせるのですか!幸村様、主人公めではダメだと、そう仰るのですか!?
正直美人とは、いやだけれどもブスでもなく、本当、正直、正直平凡でどこにでもいそうな顔をしたその女よりもわたしの方が…っ!
醜い、とはわかっていてもそんな感情が湧き上がってしまう。千代さんは悪くないのに。そうは思っていても、沸々と彼女を罵倒する言葉ばかりが湧いて出てくる。醜い。ああ、なんて醜いの。これでは、貴方様に好かれるどころか嫌われてしまう!
「…でもこれはない、ないでしょう貴方様や…わたしは貴方様との約束を、しつこいと言われようがずっと…ずっと今の今まで忘れたことなどありませんでしたのに、貴方様は現に他の女にうつつを抜かし、わたしを迎えに来るどころか探しにも出ておらぬなど…信じ待っていたわたしがただの馬鹿みたいじゃないですか!あの土地で見つからないままこの土地にまで足を延ばしてやっと見つけてやったのに!なんですかあのデレっぷり!馬鹿にしてるんですか!馬鹿にしてるんでしょう!!覚えてるなんてそりゃ思っていませんでしたけどねぇ、そのくらい愛の力でどうにかしろっていうんです!現に私はどうにかしましたよ貴方様や!!それなのに!貴方様と!きたら!!」
小声で叫ぶという大技をやってのけ、したくはないが床を叩くわけにもいかないのでハンカチを噛みちぎる勢いで引っ張る。ああもう本当馬鹿みたい!
ずっと貴方様を一途に想い続けてきたが故、未だに彼氏だって一回もいたことがないといいますのに!!
***
ここまでです、長くなりすぎた…w
千代ちゃんは、愛され主です。学パロ主人公によくありそうな感じ。転校生が美形だったら絶対何かのフラグですよね。
主人公ちゃんはしばらく苛まれます。ずっと想い続けてきたのに別な女性とイチャコラしてるだなんて!そんな女よりも私のほうがっ…!っていうのはよくあると思います。醜いと思いながらも思わずにはいられない。千代ちゃんも良い子だから余計に居た堪れない主人公さん。性格悪くなってごめんなさいでもぶっちゃけずっと想い続けてきた人がまったく知らない別な女とうつつを抜かしてたらこうなると思ったんだ…。
一応伊達さんは記憶がある設定です。一人くらい欲しいと思いまして。
片倉さんは記憶無し、伊達さん以外は未定です。とりあえず片倉さん、元就さん、元親さん、風魔さんと上記の人達は記憶無し。
もう一人くらい記憶あってもいいかもしれない。
ハッピーエンドになるかどうかも未定。真田君が記憶を思い出すかも未定です。
でも記憶を思い出さなくても主人公ちゃんの告白シーンは一回入れたい。
思い出したとして、ちゃんと結ばれるか、それとも千代ちゃんに行くかも未定。
どっちにしろ千代ちゃんは「こんなべっぴんさんとお嫁さんだったの!?」となります。疑わない。信じるよ前世の記憶!的な感じです。
結構書くのが楽しかったです←
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