小ネタ | ナノ

BSR/武田トリップ主が東軍が勝った世界で伊達に降る話
2012/11/27 14:41(0)

※死ネタ有り
※トリップ
※名前:主人公/ひいろ
※急にはじまり急に終わる




久々に、屋敷の中が騒がしい気がする。
パタパタと少しだけ音を上げて忙しなく歩く音、遠くの人にも聞こえるように普段よりも少しだけ大きな声でしゃべるみんな。

てん

畳に当たって跳ね返って戻ってくる手鞠を受け止めて、目を瞑って音を聞く。
パタパタという音の他に、まだ遠いけれど遠慮なしに、鎧をガシャガシャ揺らしながら歩いてくる音が聞こえる。音からして、相手は土足。女中さんの止める声も聞かず、けれど、急ぐ様子ではないそれは…わたしがいる部屋の前で、止まった。

音もなく開かれる障子。
てん、ともう一度跳ねる手鞠。
そこにいたのは、帰りを待ちわびていた真っ赤な衣装を纏った彼と迷彩色を取り入れた笑顔の彼…


「…手前が、真田の『宝』か?」


などではなく、彼とは正反対な真っ青な色を纏い、彼が使わない刀を六本も腰に差し、
そしてなにより、あの綺麗なふたつの眼で見つめてくる彼とは逆な、鋭くこの戦国の世を見つめてきたような暗く、それでいて一筋に光る雷撃のような光を灯らせ、ひとつの眼でわたしを写す…そう、名前は確か…


「…独眼竜さま、でしたか?」

「こっちの質問に答えてもらおうか、まさか状況をわかってねぇわけじゃねぇよな?」

「…そうですね。でも、それは、また後で。」

「Ah?」


てん
地面に落ちて、そして跳ね返って戻ってくる真っ赤な手鞠。
てん、てん。と心地よい音を鳴らしながら、落ちては戻ってくる手鞠を見つめる。

落ちては戻って、戻っては落ちて。
手からこぼれ落ちても、そう、戻ってくる。手鞠は、もどってく、


「…鞠付きがしてぇなら、いくらでもやりな。但し…黄泉の国でな」


弾かれて一室の隅へと転がる鞠を見て、そして首に添えられている刀を見やる。
刀の匂いとはまた違う、こびりついた鉄の香り。きっと最後の赤を送りつけたのであろうこの刀に切られるのならば、それもまた、本望。と、いいたいところなんだけれど。


「…真田君は、死んじゃった?」

「………」

「あなたが、殺しちゃった。真田君も、猿飛君も?」


刀が首から離れる。
鉄の香りが薄れる。


「………恨むか、復讐するか?」

「………ううん」


しないよ。するわけがない。
そりゃあ、少しくらい恨んでしまうのはしょうがないかもしれないけど、復讐なんて、そんなことしないよ。

だって、彼(真田君)が勝てなかった人に、勝てるわけがないんだから。


「ねぇ、独眼竜さま、」

「…なんだ」

「わたしたち、真田城の者は、降伏致します。どうぞ、お好きにお使いくださいませ」


ゆったりと頭を下げれば、わたしの役目は終了。
最初から決まっていたことを、ただわたしが代表として代弁すればそれでおしまい。

ここで貴方がわたしを殺そうと、城の者を殺そうと、それは貴方様の自由だということ。

「頭を上げな」、と頭上から声が聞こえてくる。
言葉に従い、またゆっくりと頭を上げて青い彼を見れば、少しだけ眉を顰めていた。


「…あの、独眼竜さま、」

「No. 伊達政宗だ」

「失礼いたしました、伊達さま」

「No problem. 次からは気をつけろよ」

「はい。…城の者を、集めますのでしばしお待ちください」

「…あぁ」


伊達さまの横を通り過ぎ、女中を呼ぼうと横を向けば、そこにいたのは見知らぬ男の人。
ちらり、とこちらを見るだけ見てすぐに目を閉じた彼は、一体誰だっただろうか。いやまぁ、独眼竜さまの近くにいるんだから、右目のお人で間違いはない、と思うんだけど。

今考えなくても、すぐにわかるだろうと思って向けていた視線を逸らし待機していた女中頭の人に声をかければ、理解していたのかすぐに呼んでくるとの返事。

彼女は、泣いていた。
(実際には笑ってた。けど、こころは、泣いてた。)


「…なァ、お前は、真田の宝か?」


最初の問われた質問を、背中越しにもう一度。
宝か、なんて言われても答えられるはずがない。だってわたしは姫でもなければ、身内でも、ましてや恋仲などという関係でもなんでもなかったのだから。

わたしと真田さまは、ただの、他人だったのだから。


「…違いますよ。わたしは、武田信玄さまの、養子です。」

「つまりは、武田の秘宝ってわけだろ?」

「実子ではなく、養子ですから。そこまで想われていませんよ」


実際、彼は最後までわたしを嫌っていた。
真田さまのお人良しなところを彼は知っていたし、お館さまの偉大な心も彼は知っていた。
だから、わたしには何も仕掛けてこなかったけれど、仕掛ける価値もないと判断したのだけれど、わたしは、彼に名前を呼ばれることはなかった。わたしも、彼を名前で呼ぶことはなかった。

まぁ、そんなこと言ったら真田さまもお館さまもなのだけれど。


「わたしが真田さまのお宝なら、どうなさいましたのですか?」


振り向き、問い返す。
犯すか、壊すか、それとも奪うのか。
まぁ残念なことにわたしは真田さまの宝でもなければ、武田にあってもなくても、できればないほうがいいお荷物ではあったんですけど。


「…いんや、ただ興味があっただけだ。…女っ気のねぇあいつの近くにいるテメェが気になったからな」


いくぞ、と壁に寄りかかっていたオールバックのお人に声をかけて、今度はわたしの横を通り過ぎ女中頭さんがいる場所へとさっさと歩いていく。
さすがに全員をこの一室に呼ぶことはできないので、別室に集めたようでして。
その場所へ移動するという女中頭さんの言葉を聞いた伊達さまはすぐに歩いていってしまった。

そのあとをすぐについていく、わたしを一睨みしていくのも忘れない伊達さまの従者さまらしきお人も。


「主人公様、私達も行きましょう」

「…そうでしたね、すいません」


遅れては伊達さまに迷惑になる。わたしなんて放っておいて、さっさと行くという術もあったはずなのに女中頭さんはちゃんとわたしに声をかけてくれた。

そうだよね、わたししか、ここに支えはないものね。
自虐気味に、嘲笑気味にそんなことを思えば思わず笑みがこぼれそうになる。
こぼしは、しないけれど。
けれど、こぼせたら、どれほど楽なのか。


「………ぁ」


手鞠、忘れてきちゃった。
ふとそんなことを思うけれど、まさかそんなことで道を引き返すことなんてできないから顔に出さずに歩く。
さいわい聞こえてはいなかったみたいだから、よかったよかった。



***
武田トリップで、関ヶ原かなにかのあと、真田幸村も猿飛佐助も亡くなったあとのお話。
ここまで書いたけれど続きは思いつかなかったという。まぁ安定の流れです。
デフォルト名はなぜか永舞でした。なんて読むんだろう、えんぶでいいのかな←

主人公は現パロ時代に住んでいます。もちろんみんないる。
現パロでは関わりがあってもなくてもいいかと思います。
たぶんあっても、クラスメイトレベルの関わりで。
真田君と猿飛君とはそのくらいで、そのほかは見たことがあるくらいが丁度いいかも。
片想い、ではない感情。でも嫌いとかではない。無感情でもない。

実質トリップしてきて、城の者には嫌われてはいないかと。
どちらかと言えばみんな好き寄り。寄りなだけで蝶よ花よと愛でられているわけではない。
真田君は友人的な意味で好いてるくらい。
猿飛君は、まぁ、害はないと判断したくらい。たぶん兵士とか女中とか同じ感覚。友達の友達みたいな。そのくらい。
だから別に嫌われてはいません、主人公が恐ろしくネガティブなわけでもありません。価値としては確かにそのようなものなので。

西軍とは一応関わりがある、かと。
関ヶ原起こる前にトリップしてきたということで。関ヶ原中に落ちてきたのを信じれるはずもない。
なので居る時間は結構長いです。少し若返ってトリップしてきてもいい。
あ、でも中学くらいでトリップしてきてもいい。高校いくと全員いるみたいな。関わりは持ちませんでしょうが。
まぁ武田信玄の養子なので、その立場として西軍とは一応関わってあると思います。
戦場とかは行かないので、東軍は情報でしか知らないぐらい。伊達さんは見たことあるぐらい。

西軍は一応みんないないということで、これから東軍、というか伊達政宗のもとで主人公がどうなるかは不明。
でも主人公的には東軍が勝ってよかったとは思ってる。
本心で言えばやはり負けて欲しくなかったけれど、未来を考えると東軍が勝ってよかったと思ってるかと。


恋愛フラグは立ちません。確実に。
そこまで想い合う仲にはならない。いれば暇つぶしにはなるな、程度で。でも一緒にいると落ち着くかもしれない。伊達さんは。片倉さんは嫌いかもしれない。と、いうか苦手?
悪い子じゃありません。結構物静か、というかぼーっとしてるというか。ジョークも言うし笑いもするけど、戦国時代からすれば少し浮世離れしている程度。

なにかがあって、現世に戻ったとして。
きっと主人公には記憶バッチリある。最初夢だと思うけど、学校で見て、ああやっぱ現実だったのか。くらいの。なにか本能的に感じたのかと。
武将組はぶっちゃけ持ってても持ってなくてもいい。でもほんのり、あれ?と思ってくれればいい。
記憶を持っていようといなかろうと、思い出すことは、ないでしょうが。
主人公も自分から関わろうとしないので、思い出すってことはない。

ほんのり思考が傍観気味な、そんなお話。
起きたら手鞠のキーホルダーでも持ってるといいと思います、たぶん伊達からもこのあと貰う。なので二つ手鞠がついてるキーホルダーで。

想像能力が追いついたらぜひとも書いてみたい、書いてください←


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