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BSR/転生主が元親に嫁ぐ話
2012/10/03 15:37(0)

※急にはじまり急に終わる
※転生
※元親嫁設定
※知識無し




ザワッと風が吹く。
揺れる海面と、鼻をかすめる濃い潮の香り。
ギィ、ギィ、と揺れる小舟に私自身も揺られながら、まだ少し先にある、けれどこの位置からでも十分に見える大きな船へと視線を向けた。


「…随分と大きいな」

「姫様」

「随分と大きいですね」

「そうですね。でも、あれは馬みたいなものです。お城はちゃんと丘にありますよ」

「いや船が城だとか言われても困るけどさー」

「姫様」

「お船がお城だと言われても、少々困ってしまいますわ」

「発音がなにやら違います。もう一度」

「細かいですわよ、桜」

「細かくさせているのはどちらですか?姫様」

「…あ、あのー…お二方、もうつきますぜ…」


にこにこにこにこと笑顔で無言の攻防を思わず続けると、恐る恐ると言った感じに船漕ぎの男が声をかけてきた。

おや、私としたことが。いけないいけない。

いつの間にか目の前へとやってきている船を見て、あまりにも大きくて首を上にあげたところでもう全貌は伺えなかった。
船の上から声がする。船を移るため下ろされる小舟を見ながら、桜に目を向けた。


「姫様。わかっていますね?」

「大丈夫。無理なときは、貴方が叱ってくれるでしょう?」

「ばれてからでは遅いんですよ?」

「…極力本気出すわ」

「いつでも本気でいてくださいます?」


うふふあははと第二Rがはじまる鐘が鳴る前に、頭上から叫び声。
一体なんだと二人して上を向けば、船の上から何か飛んでくるではないか。

思わず蹴り飛ばそうと足を構えたら思いっきり桜に踏まれたけれど、私は桜も蹴り飛ばそうとしていたのをちゃんと確認していた。


ダァンッ!と音を立てて私たちの小舟に降りてきた誰かさん。
その勢いで反転しそうになる小舟だけれど、私と桜を抱えながらその人はもうひとつの足で力ずくに小舟の反転を抑えていた。

こんな無茶なことしてくるやつ、一体誰だゴルァ
思わず睨みつけるように私を抱えてるやつをみれば、一番最初に目に入るのは流れるような銀色。
それから、紫色の服を纏い…半分半裸な状態でいる、こと、だけだった。


「…っと、危なかったなァ。悪ぃな、お二人さんよ。」


男性特有の低い声。小舟も落ち着いてきたのか、そっと船の上に置かれる。
そのときに、はじめて顔を見れた。

流れるような銀髪に、紫色の服を纏い、そして顔の半分も紫色の布でまとわれている。
上半身が全裸に近い格好で地区Bもモロ出しだけれども、そこはあえて追求しないことにする。まぁ、服着込んでいると海に落ちたとき死ぬからね。じゃ、ねーだろと。

私が無言で顔を凝視していると、先に正気に戻った桜が彼に言葉を発していた。
桜と彼がなにかをしゃべっているが、生憎頭に入らない。
彼は、遣いの者なのだろうか。
まさか国主がこんな無茶なことやらかすことなんてないだろうな。
…あ、いや、そんなことあったわ。
まさかまさかここの国主もその手の人間なのか。
だったら泣くぞ私は。

って、そんな、こと、よりも、だな。

桜と話し終わったのか、彼がこちらを向く。
顔は整っていて、正直、というかかなりかっこいい部類に入る。と思う。
でも、あいつのせいで耐性はついてるから、ほう。という感じで、あり、まして…


「よう、俺が長曾我部元親。待ってたぜ」


ニカっと笑いながら告げてきた名前は、私が、その、嫁ぐ相手そのものの名前で、あり、まして…?

頭がショートしそうにぐるぐると周り続けていて、微動だにしなかった私を心配したのかなんなのかはわからない。
けれど、疑問符を頭にいっぱいくっつけながら、なぜか私の頭をぽんぽんと撫でてきたのもこいつでありまして。


「………っけ」

「ん?」

「でっけぇ…」


思わず、先程まで咎められていたのに口調を直すのも忘れて素直にそのままの感想を行ってしまった。

見上げないと、顔が見えない。
それどころか私、この人の胸よりも身長低い気がするんだけど、気のせいかな。

第三者からみれば親子にしか見えないだろう身長差に、まずは驚愕を発してしまった。




▽△




あのあとガッツリと桜に足を踏まれ、バッチリと元親様に爆笑された私はそれはもう、それはもういたたまれなかった。
これ他者からみれば下手したらロリコン思われちまうよ元親様。本当、私の身長が低いのはわかってたけれど、あんたの身長もとことんキチガイだよ。縮めボケ。

そんなことをまさか私のために上げてくれた宴会中に言えるはずもなく(いや宴会以外なら言えるのかと言われると桜の鉄拳が待ってるから結局言えないんだけれどね)


「まぁ、くつろいでくれや」

「はい」

「あ、酒飲めるか?」

「お酒…ですか?」

「あァ、あ。無理しなくていいからな?!」

「慎む程度でよければ、」


静かに微笑みながらこんなことを言う私を、家の者が見たら全員爆笑ものだろう。

まさか一升瓶抱えて飲んでたなんて絶対に言えない。言っちゃいけない。

視界の隅で桜が笑いをこらえているのが見えたので足を思いっきり踏んでおき、小さな猪口にほどよくついでもらう。
そっと、まるで令嬢が紅茶を飲むかのように、優雅にお猪口を口に運びそれを静かに飲んだ。
中身もほどよく残し、一気したい気持ちを抑えながらまた微笑みをひとつ。


「美味でございますね」

「おっ、わかんのか?」

「えぇ、素人目ですけれど」


まさか全国の酒母上と父上と集めまくって飲み会したなんて、そんなことは言えない。

私言えないことがちょっと多すぎないか、と思わなくもないけれど、そんな生活をずっと広げていたのだから致し方ない。
仮面を貼りつけながら暮らさねばならないこれからの生活にちょっと窮屈を覚えつつも、まずは初夜をどうやって乗り越えるべきか残りの酒を口に運びながら考えることにした。




『フェイクデイ』
(あー、酒も飯も足んねぇ…)


***
一升瓶のくだりが書きたかっただけでしたすいません。

転生主が大きくなって長曾我部家に嫁に出る話しでした。
両親も転生してたら面白いと思います。あと付き人桜も。

主人公は両親の血を受け継いでものすごいザル。
口も手癖足癖も悪いことで有名。今はものすごい猫かぶってます。いずればれる。
長曾我部さんは最初の時点ではビクビクしてるといい。
でっけぇ、って言ったときのことを忘れさせる勢いで猫かぶってるから忘れているといい。
本性出た後は嫁というよりたぶん悪友みたいなことになっちゃう。
身長差のせいで長曾我部元親さんのロリコン説がたっちゃう(同年代なのに)
同年代なことに気づいた後驚けばいい二人して。
ちなみに主人公の知り合いというのは、特に決めてない。
位置を考えるとやっぱり元就さん辺りが妥当だけれども、ノリは政宗さんのがいいと思う。
遠いけれど。
政宗さんとなら飲み勝負したりやっかりな悪戯したりされたり喧嘩したりしてそう。
悪友的な。
悪友みたいな関係多い主人公になりそう。
このノリで関ヶ原までの流れ書いてみたい気持ちもあったりなかったり。
西軍との絡みが書きたい。
妄想が広がるなこれは。




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