小ネタ | ナノ

BSR/Ibパロの予定だったもの
2012/09/24 11:43(0)

※Ibパロ…の予定だった
※急にはじまります
※最初からクライマックス
※トリップ
※真田落ちっぽい
※主人公=ひいろ



「ほら―――早くっ!ここは俺様がどうにかするから!」

「すまぬ佐助ぇ!」

「いいっていいって!でも…決めたなら、絶対やり遂げろよ!旦那ァ!」


猿飛さんの言葉を背に受け、真田さんは走る速度をさらにあげた。

まだ、速度があがるなんて。

それだけ彼は本気ということなのか。たかが私のために、そこまで本気になれるのか。


せめて落ないように抱きつく手に力をいれる。
彼の肩ごしに見えてくる背後で起こっていることを見て、少し胸が痛くなる。


「Shit!退け猿が!」

「ごめんなさーいね。俺様、あくまでも真田の旦那の駒なんで」

「政宗様、ここは小十郎めにどうかお任せを…駒は駒同士で戦う。それが、一番だろ?」

「あらら…いやいやそんな、なにを言ってるのさ旦那方。俺様は、ここはどうにかするって言ったのよ?―――なめてんじゃねぇよ」


青い光と、真っ黒な闇。
二つが相対し、ぶつかり合う。

ごめんなさい、ごめんなさい。
私がここに来たばっかりに。
私がここに入ってきたばっかりに。
こんなことがおこってしまって。
ごめんなさい、ごめんなさい。

でも――ここで過ごした時間は、本当に、楽しかったんだ。


小さくなる三人を、最後までしっかり目に焼き付ける。
上がることのない真田さんの息を確認して、本当に彼らは疲れなどないのがわかる。
終わらない命。
データの海の中で、永遠ともとれる年月を過ごす彼らの体は、生きている私らの構造とは違う。
それを様々と見せつけられているようで、泣きたくなった。

こんなにも、ちゃんと、生きているのに。

だからこそ、彼らは外に出たかった。
ひとりぼっちは、さびしいんだって。
みんないるのに?って聞いたら、同じデータだから、ひとりと一緒なんだって。
でも、おかしいよね。
外の人間(私)を使っても、出れるのはひとつのデータだけだなんて。
それって、同じデータっては、言わないんじゃないかな?
私らと一緒で、同じ人間だけど、みんな違うってことに、ならないかな?
こんなことを思っても、彼らには通じない。

出たくて出たくてしょうがないこの世界。
出たくて出たくて、しょうがなかった、この世界。

彼らが出るには、変わりが必要で。
ちょうどそんな世界に私が入ってきちゃって。
このままだったら、彼らのうちの誰かは、私と入れ替わったりしちゃってて。

でも、そんな中、真田さんだけが、違う行動をしてくれた。
私を外に、外の世界に出そうとしてくれた。
きっと、猿飛さんは、外に出たい人だった。
でも、真田さんがいったから、彼は諦めてくれた。


「主人公殿っ!もうすぐ、つきまするぞ!」


真田さんの声に沿って、前を向く。

始めて私がここにきた場所。
始めて私が彼らと会った場所。


――小さな、井戸。


「あれを通り抜けさえすれば、外の世界に出られまする」

「…なら、みんな一緒に入れば、出れるんじゃないの?」

「いえ…一人出たところで、あれはただの井戸になってしまい、残りはこの世界に残されるのみ…。ならば、主人公殿に黙って入ればいいのかもしれませぬが、出るには出るなりの条件があるのでござる」

「…もし、かして…」

「…佐助も言っていた通り、貴殿を…殺める。それが第一条件でございまする。この世界で死してるうちに、外の世界に出る。それが、やり手でございまする」

「でも、それなら――」


ドォォン

続きの言葉を言う前に、背後から聞こえた爆発音。
真田さんはすぐに来た道を向き、そしてどこからともなく出した二層の槍を構えた。


「さぁ、早くこの世界から!もう二度と、入ってくることのないように!」

「真田さん!」

「ここは某にお任せあれ。――主人公殿と、遊べた時間。某には貴重な時間でござった」

「さなっ…!」


見えた青い光と、真田さんの笑顔にそれ以上口を開くのはためらった。

言葉を飲み込んで、井戸までの距離を走る。

伝えたい言葉は、たくさんあった。
それこそ、真田さんだけじゃない。途中で足止めしてくれた猿飛さんにも、今追ってきている伊達さんにも。
ここで出会ったみんなに、伝えたい言葉があった。
聞きたい疑問も、あった。
もうそんな時間も、余裕もないけれど。
次、もし次、私がここに来るとか、みんなが外に出たとかじゃなくて、
…来世とか、生まれ変わったりとかしたら、また、遊んだりしたい。

ここでの時間は、私の宝物なんだ。


たどり着いた井戸の前。
勢いを殺さないまま、その上にたつ。
下は、底なしの奈落。
本当にここから落ちれば、外の世界に出れる、なんて確かな確証はない。
だけど、真田さんがそう教えてくれたなら、間違いはないはずで。

あとは落ちるだけな私を見たのか、背後から悲痛な声が聞こえる。
それと同時に、喉が潰れるんじゃないかってくらい大きな、真剣な声が聞こえる。
本当は、振り向いちゃいけないんだろうけど。

振り向きながら、身体を井戸に傾けた私の目に飛び込んできた、この世界での最後の光景――一瞬で私は落ちてしまったから、ほとんど見ることは叶わなかったけれど。

落ちる寸前に、大きく息を吸って、伝えた言葉。
聞こえたかどうかはわからないけど、確かに伝えたよ。



「―――お達者で、主人公殿!」



意識が消える寸前に、真田さんの、元気な声が聞こえた――――。









ちゅんちゅん ちゅんちゅん
鳥の鳴き声が耳に届く。

重い瞼を押し上げれば、初めに視界に入ってきたのは綺麗な青空と、青々と茂る木々達。

どうして、こんなところにいるんだろう。
体を起こせば、眠ってでもいたのかボキ、と骨のなる音が聞こえる。


「…どうして、こんなところなんかに…」


思い出そうとすると、近くにスケッチブックがあるのに気がついた。
それを手に取れば、蘇る記憶達。
そうだ…私、学校の授業で森の絵をかきにきたんだ。
綺麗に置いてある画材達も手に持って、その場所を見渡してみる。
青々と茂る草木に、綺麗に咲く様々な花たち。
それから、ほどよく吹く淡い風。木々に止まる鳥たち。
光が綺麗に差し込む、その場所に佇む―

――小さな、古びた井戸。


「…ここの絵かこうとして、あまりにも気持ちよくて寝ちゃったのかな…?って、時間!まだ全然かいてないのに大丈夫―…?」


時計を出しながら、スケッチブックを開けば、そこにはかいた記憶のない下書き。
色などなく、少々雑に、何度も何度も薄くかかれているそれは、どっからどう見ても私の絵。
時計を確認してみればまだ時間は余裕なぐらいあって。
これなら、間に合うな。
そう思いながらも、不思議な感じもしつつ、画材をその場に広げた。


「…と、ん…?」


色を塗ろう。
そう思ったときに気づいた違和感に、私は思わずスケッチブックのページをめくる。

めくった先にあったのは、知らない、ハチマキをつけた男の子。


「…、…誰…?」


次々とめくってみれば、固めを隠した男性や、顔に傷のある男性。
迷彩柄のポンチョをつけてる男性もいれば、ちょっと格好はあれだけれど綺麗な女性の絵もある。
全部自分の絵なのは見てわかるけれど、一体、誰なんだろう…?


「…………まぁ、いっか。それよりも早くかいちゃわないと!」


記憶にないその絵は一旦しまい、先ほどの風景のページに戻す。


さぁ、絵をかこう
きっと、綺麗で素敵な絵ができるよ


赤い色鉛筆を持って、その下書きのままの絵に色を落とした。




無くした思い出は絵の中に
(私の絵を好きだ、と言ってくれた彼らは)
(はたして一体、誰だったのか)


***
「Ib」という曲がニコニコのランキングに上がっていたので、それを聞きながら。

Ibというのは巷で有名なフリーゲームです。
それのパロいけるんじゃね?みたいなノリで書いたら全く違うものにどうしてこうなった…。
一応ポジションで言えば、メアリーポジがBSRキャラ。イヴポジが主人公。…に、なるのかな…?
ギャリーポジはいません。ある意味真田君。でも真田君は一応中の人なのでギャリーポジとも言い切れないです。
Ibがわからない人は、別に聞き流しちゃって構いません。そこまで重要でもありません。

流れ的には、絵をかきにきた主人公が井戸の中に入ってしまうという話し。井戸の先は、BSRの世界です。タイムスリップではなく、あくまで戦国BASARAというゲームの世界。データでてきた世界です。
毎日同じことの繰り返しなこの世界から抜け出すためには、外の世界の人と入れ替わる必要があります。一データにつき、ひとり必要です。
主人公はそんな世界に迷い込んでしまい、一時の時間をこの世界で過ごすこととなります。
そして、あるとき、データが本性を表す。
入れ替わりです。

伊達さんが酷い人になってしまったのは申し訳ないと思ってます。
でも助けるキャラを真田さんにしたら丁度いいキャラがきみしかいなかったんd((
真田さんは、絆されたデータです。
データといっても感情がないわけではありません。データという感情があります。
よって、絆されることもあります。


主人公が最後疑問に思ったのは、「ではなぜ始めここに迷い込んできたときに、自分を殺さなかったのか」です。
すぐに殺してしまえば、真田さんが絆されることも、こんなことも起きはしませんでした。

でも、もしかしたらみんなは、外の世界の友達が欲しかっただけかもしれませんね。
スケッチブックのみんなの絵の件は、遊んだ時間の話しです。



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