BSR/髪を切る話
2012/08/23 19:33(
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※学パロ
※佐助メイン
※悲恋?
※「髪を切る話」のラストだけ
「ねえ」
手を洗ってるときに、かけられた言葉。
誰だろう。そう思い、振り向いてみればそこには明るいオレンジ色。
この声、久しぶりだなぁ。なんて思ったりした自分は、随分と白々しいのかもしれない。
「佐助くん。久しぶり」
「…久しぶり」
「で、どうかした?」
「…うん。あのさ…、…なんで髪、切ったの?」
ばっさりと、腰を通り越してお尻の少し下ぐらいまであった髪を肩につかないぐらいまで切った。
思わず手で毛先を触る。前は、手を下ろした状態で触れたのにな。今は手を上げないとつかないや。
髪を切ったのに、特に理由はなかった。
ただ、中学校に入れば毎日髪を結ばないといけなくなる。あまりにも長すぎると三つ編みしないといけなくなる。
そう、お母さんに聞いて、それならば、と幼稚園からずっと同じ長さだった髪を切ってみた。
ただ、それだけで、特に他に理由らしい理由はなかった。
「…んー、イメチェン?かもね」
「かもね、って…」
「深い意味はないんだもん」
「そうなんだ」
「うん。そういう佐助くんも、髪短いね」
前は、肩よりも下にあったのに。
前髪も、バンダナつけて上げてない。
肩より上で、耳にかからない長さで、前髪も眉毛より上でバッサリと切っていて。
「校則、だから。だっさいよね」
「うん。ださい」
「…そんなハッキリ、言わなくても…」
「バンダナ、外してるんだね」
「校則だからね。小学校に戻りたいよもう」
「高校になれば、またすればいいよ」
中学になったばかりで、高校の話をするのもまたおかしな話だ。
あと3年は、きつい校則で縛られたままだというのに。
似合わない髪型をしている、見慣れない髪型をしている佐助くん。
服装も、迷彩柄のものを身につけているわけもなく、真っ黒い学ランをキッチリと着て、まるで別人のようだった。
まあ、その言葉はきっと私にもそのまま返ってくるのかもしれないけれど。
「それも、そっか。…なんか、主人公ちゃん、丸くなったね」
「まあ、ね。そういう佐助くんも、だけどね」
「俺様は前と何も変わってないけど?」
「変わったよ。まず、殴りかかってこなくなった」
「いや、それは主人公ちゃんだよね」
「そうだっけ」
くす、と笑みをこぼせばへらり、と相変わらずの変わらぬ笑みで返してくれる。
少しだけ、あの、一番楽しい時間に戻ったのかもね。なんて。
そんなわけじゃ、ないんだけど。
「佐助くんって、何組だったっけ」
「1組。主人公ちゃんは確か、7組だよね?」
「うん。あと、あいつも一緒」
「あー。すごいね。俺様も、旦那と一緒」
「すごいね」
「少しぐらい、別れてもいいと思うんだけどなー…」
「来年のクラス替えに期待してみたら?」
「今年一年は一緒だろ?今から期待なんて、しないよ」
「そう」
「うん。……じゃあ、俺様、帰るね」
「……うん。じゃあね」
ばいばい。
手を小さく振れば、佐助くんも小さく笑いながら振替してくれる。
佐助くんがいなくなるのを最後まで見届けた後、手を振るのを、やめる。
「…、……ばいばい、かぁ」
自分の手に、視線を写す。
ばいばいを告げた手のひら。深い意味なんてないはずなのに、これからだって時間はまだあるはずなのに。
ぽたり。
落ちた雫はてのひらに零れ、そして、その雫を見ながら手を握った。
「…かーえろっと」
空は、佐助くんと同じオレンジ色だった。
さようなら
(ばいばい、わたしのこいごころ)
***
髪を切る話、です。
どんなに仲良くてもクラス変わると、ころっとかかわらなくなりますよね。
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