二泊分の荷物を適当に車に詰めてクロロが住んでいるマンションへと向かう。休暇で街に帰ると伝えたら、同じ場所で育った三人がそれぞれ渡してほしいとお菓子やらゲームやらをたくさん持ってきたのでそれもちゃんと車に乗せた。みんな可愛いかよ。今度は四人で帰るのも良いかもしれない。

マンションのエントランス前で待っていたのは随分荷物が少ないクロロだった。鞄を持っているからまだ良いものの、見たところ服と本しか持ってきていない。世界中を転々としている盗賊は余計なものを持ち歩かないらしい。それはかっこいい…のか?

「車だとどのくらいかかるんだ?」
「夕方には着くかなあ」
「…結構かかるんだな」
「列車だと本数少なくて着くのは明日とかザラだよ。今度の誕生日飛行船買ってくれない?」
「潔く図々しい」
「ははっ。寝ててもいいから、トイレとか寄りたいとこあったら言って」
「あぁ、よろしく」

適当に喋ったり休憩をしたりしながら、朝の9時に出発して街に着いたのは日が暮れ始めた6時だった。腕がだるすぎて辛い。帰りは道を少し覚えたというクロロも運転してくれるというのでちょっと気が楽になる。

「田舎とは言っていたが結構活気のある街じゃないか?ちらほらと夜の店も見かける」
「中心部だけだよ。ここ抜けたらなんもない」
「ふうん。この後の予定は?」
「孤児院行くのは明日だな。疲れたし飯食って家帰ろう」
「家?」
「うん、俺ん家。」
「ナマエの家か。泊まっていいのか?」
「そのつもり。嫌ならホテルとるけど、ぶっちゃけ俺ん家のが綺麗だよ」
「世話になるよ」
「襲わないでね」
「さあ?襲われないといいな」

お前のさじ加減だわ!!と思いっきり叫ぶ俺をくつくつ笑いながら見ているクロロを無視して適当な駐車場に車を停める。長時間運転した後はなぜか一服したくなるから店に入る前に一本だけ吸おう。

「クロロ、横のところに煙草入ってる?それか前のボックス」
「これか?」

それそれ、と受け取り車を降りて煙草に火をつける。思いっきり肺に吸い込まれていくのが、なんともいえない。疲れた身体と頭にはメンソールが効く。

「いつもは吸わないのは俺に遠慮してた?」
「いーや。車の運転した時だけ吸いたくなる」
「なるほどな」
「乗せたお礼とかいって後輩が置いていくから増える一方だよ」

吸殻を捨てて歩き出せば横をクロロがついてくる。そういえばナマエから匂いがするのが珍しい、と纏わりついている煙草特有の苦い香りに顔をしかめていた。

「匂いって人の記憶に鮮明に残るから。出来れば無臭でいたい」
「じゃあ今日は特別だな」
「この煙草の匂いがする度に俺のこと思い出す呪いだよ」
「嬉しくて困る。蜘蛛全員に吸えって団長命令だそうかな」
「……ばっか」

嬉しそうな顔を隠さずにいることで、こっちまで恥ずかしくさせるからタチが悪いのだ。もうお前が怖いよ、俺は。車だから酒が飲めないだろう?と意外にも常識を語るクロロの言葉に驚いていたら、お前の大切な街で何かあっても困ると真剣な顔で言われる。今度こそ、本当に顔が熱い。ぱぱっと食べて、家で酒を飲むのはどうだ?という提案をそれ女の子に言うやつじゃん、と笑う。

「…………いや女の子に言うやつ、じゃん……?」

お願いだからそんなギラギラした目で俺のこと見ないで!!!


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