全て見抜かれていたとして




二人のもとへ戻ってきたわたしを見てマチとパクはお互いの顔を見合わせた。ゆっくりとパクが首を振る。それを受けて軽く頷いたのはマチだ。何も言わなくてもきっと大体のことをわかっているんだ。こういう時の二人は驚くほどに察しが良い。

「ナマエは念能力どうするか決めたの?」

話題を逸らすためでもあるその質問に最近ずっと考えていた能力の話をした。パクがみんなには秘密ね、とクッキーと淹れてくれた紅茶を囲んで三人で仲良く地べたに座る。女の子の秘密の会議みたいで楽しい、と零せば照れたマチに肩を叩かれてしまった。

話を本題に戻して念は他人に気安く話すものじゃない、とクロロには言われているけど一人で考えるのは難しかったことも告げてアドバイスを二人に乞う。

「何を具現化しようって考えた時に浮かんだのは本だったの」
「………アンタらしいわ」
「でも本って言ってもたくさんあるし…。抽象的過ぎてイメージが出来ないからうまく出せなくて悪循環のループというか…。」
「本を出して何をしたいか、が重要じゃないかしら」
「アタシらは本って言ったら読むものだと思ってる。けどべつにそれだけが本の性質じゃないだろ?」
「極端な話をすると分厚い本で殴られたら痛いじゃない?」
「角とかすごく痛そう…」
「そうそう。一つの事だけじゃなくて本の可能性を考えてみてもいいんじゃない」
「なるほど…。やっぱり二人に話して正解だったよ」

紅茶を飲みながらお礼を伝えるとにっこり微笑んでくれたパクとお礼言われるほどの事じゃないよとそっぽを向くマチ。治癒とか出来たら良いかなって思ったけど…なんていうか身体が違うって言ってるような気がして…。ゆっくりと漏らした本音にナマエの治癒なんて制約付けようものならクロロが全力で止めるんじゃない、と危惧していたことをさらりと当てられてしまう。よくわかるねマチ…。

「でももし本を具現化するとなるとクロロに話聞いた方が早いかもね」
「なんでクロロ?」
「クロロの念能力について聞いてないかしら?」
「まだ未完成だから完成するまで待っててって言われてるの」
「ふふっ、完璧な所しか見せたくないのね」
「…ナマエはクロロといて息がつまりそうにならないの?」

アタシは絶対無理。単純に強さとか頭の良さとか尊敬はしてるけどさ…。ナマエに対する態度、アレは一種の狂気だよ。ナマエが良いなら何も言うことないんだけどね。

早口で言われるそれは言葉にしたら刺々しく感じるけれど、わたしとクロロを近くでみてきたマチの心からの心配な事は痛いくらいに良くわかる。さっきフェイに教えてもらったマリアさんと会っていた事もきっとわたしを想うが故の狂気だ。

「ありがとう、マチ。……最近は過保護がひどいからもう少しだけ緩くしてもらえるようにお願いしてみようかな」
「過保護っていうか、恋人だからこその束縛っていうんだよ」
「まあまあ二人とも落ち着いて。ナマエもクロロもお互いがはじめての恋人だもの。手探り状態なのは仕方ないわよ」
「パク…素敵……」
「パクはオトナだよね」
「かっこいい…抱いて………」

「随分大胆に浮気するんだな?ナマエ」

突如聞こえた低い声に飛び上がってマチの後ろにさささっと反射的に隠れる。それすらも気に障ったのか声を掛けてきたクロロは何の表情も浮かんではいない。どうしようマチ、パク。助けるを求めて二人を見ても目すら合わせてもらえなかった。そんな…。

無表情のままおいで、と差し出された手。

観念したわたしは立ち上がってクロロの元へと向かう。そこでようやくクロロが口角を少しだけ上げたのに気付いた。クロロの手に重ねたわたしの手をぎゅうっと握って歩き出す彼の後ろをついていく。一度だけ振り返ってパクにご馳走さま、と伝えて空いている方の手でひらひらと手を振った。

見慣れたクロロの部屋に入るやいなや抱き締められ、胸いっぱいに広がる安心する匂い。クロロに言わなきゃいけないことがたくさんあるって言うのに、ひとつも音にはならない。

「俺だってまだ手を出してないのにパクなら良いのか」
「冗談だってば」
「冗談でも嫌だ」
「ご、ごめんね…」
「足りない」
「えっ…本当にごめんってば…ん」
「ん、……口閉じるなよ」
「だ、だって舌が入ってくるの慣れない…」
「なら慣れるまでしよう」

そういうことじゃない!という心の叫びはクロロから与えられるキスの中に消えていった。







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