クロロとバレンタイン



一昨年は連絡がつかず、あと一歩で腐りかけの手作りであるそれを自分で食べた。ちょっとお腹壊した。去年は消費期限を考慮した上で、お高めのチョコを買った。連絡は着いたけど、聞いたこともない遠いところにいるというから、自分で食べた。自分用には絶対買わないであろうそれは美味しくて、涙が出た。
だから今年は、用意するのを辞めた。もう、バレンタインは死んだのだ。はい合掌。さよならバイバイ企業の戦略。去年まではピンク色に見えていた十四日という日付が急にトキメキを無くした。ただの平日じゃんこんなの。ブツブツ独り言を言いながら、マグカップへとミルクを注ぐ。電子レンジに入れて、飲み物温めボタンをピッと。なにかお菓子あったっけ、と棚を開けようとしたら視界へと急に入った青い箱。
「これはやるから、ホットミルクは俺のだな」
「なっ、クロロ!?」
「熱めにしてくれ」
「わ、わかった…。これ、はなに?えっ、チョコ!?」
「中身は焼き菓子だ。チョコより好きだろ?」
よく分かってるね…。手渡された青い花柄の箱は、どうみたって私が好きそうなデザインで。好きな色、好きなデザイン、好きなお菓子。渡したことに満足して寒い、と言いながらコタツに入るクロロ。誰の入れ知恵かは知らないけど、ありがとう誰かさん!にやけてふにゃふにゃの頬に箱をくっつける。すりすり。つめたーい!クロロのにおーい!うれしーい!
「喜んでるのは嬉しいけど、レンジがうるさいからミルク持ってきてくれないか」
「へいただいま!」
あ!そういえば!と頭に浮かんだビックリマーク。
「バレンタインは死んだことにしてたからこんな物しかないせど…」
「これは?」
「へっへーん!ホットミルクに混ぜて溶かしながら…」
「なるほど、ホットミルクチョコになるんだな」
そっと口をつけるクロロに美味しい?美味しい?と聞くと、あぁ、と柔らかく笑ってくれる。あぁ、もうこの顔。この穏やかな笑顔をみれたら、過去二回の失敗なんてどうでもよくなっちゃうじゃんか。
「今日も好き…明日はもっと好き…」
「明日の分は、明日伝えて貰った方が嬉しいよ」
「さっきの倍好きになった!!」
バレンタインは、どうやら生き返ったらしい。

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