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Zauber Karte

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#2


クラスメイトの工藤新一が、ある日突然学校に来なくなった。
私はてっきり頭が良すぎるあまり学校がダルくなったのかと思ってたけど、実は知らない間に幼児となり、小学校に通っている事をこの前知った。
そんな彼の秘密を偶然知ってしまった私は、何故かあの日から毎日の様に幼児の工藤くんにつきまとわれている………何で?


「あのー…1つ聞いてもいい?」
「え?」
「何で今日は江戸川ナンチャラくんだけじゃなくてその保護者である毛利さんまでもがうちに来られたんでしょうか…?」
「実はコナンくんがまた名字さんと遊びたいってどうしてもきかなくて…。だから少しの間だけ」
「丁重にお断りします。さよなら」


バタン


何で私が休みの日に幼児の工藤くんの面倒なんか見なきゃなんないんだよ…。
っていうか工藤くんは何の恨みがあって毎日毎日私の前に現れるわけ!?
そんな事する暇があるならさっさとその謎めいた組織捕まえればいーじゃん!


「お願い名字さん!私この後部活があるから無理なのよー!今日だけでいいからコナンくんのワガママ聞いてあげてー!」
「そうだよ!僕と遊んでよ名前姉ちゃーん!」
「…」


あんたら…。
人んちのドア叩いて何やってんの…。


「あ、名字さ」
「生憎ですがこれから私、昼寝をするっていう大事な予定があるのでそんなガキと遊ぶ暇なんか無いの。分かったらとっとと帰って下さい」
「えっ、ちょっ…」


それに工藤くんの為に大事な体力を使うだなんて、そんなもったいない事出来るか!


「どうする?蘭姉ちゃん…」
「仕方ないから今日は帰ろ?また今度遊んでもらおうよ」
「…そうだね」


ミニチュア工藤くんの声がした後、少しずつ足音が遠ざかっていく音がドアの向こうから聞こえた。
…ほんとに帰ったか安心は出来ない。
ドアスコープをチェック!


「…人影、無し」


チェーンつきでドア開放!


「……あれ?」


誰もいない…。
マジで帰った…?
えっ、じゃあ私の勝利って事!?


「やったー!」
「何がやったーなの?」
「そんなの決まってるでしょー?あの煩わしい工藤くんが目の前から消えてくれたから安心して昼寝が……って、ええっ!?」


なっ、何で!?


「名前姉ちゃん、ダメだなぁ〜。2階の窓が開けっぱなしだったよ〜?…ってわけで昼寝は諦めるんだな」
「……」


こっ、こっ、このガキ…!
探偵の癖にやってる事はその辺のストーカーと一緒じゃん!!
これが温室育ちの弊害ってやつ!?
それとも金持ちな親の元に産まれた子供の弊害!?


「おい」
「な、何っ!?」
「いつまでもそんな所に突っ立ってねぇで客が来たんだから茶ぐらい出せよ。気が利かねぇなー…」
「……」


堪えろ、私!
工藤くんがいつ元の姿に戻るか分からない。
だったら幼児のうちに懲らしめておくという手も、


「あ、そうそう。俺を懲らしめようと思っても無駄だぜ?」
「はっ!?」
「博士に作ってもらったこの麻酔銃、なかなかいい仕事してくれるんだ。何なら試してみるか?」
「…遠慮します」
「そうか?ああ、あとボールが出てくるベルトもつけてっからバカな事は考えんなよ?」
「……」


つまり守備力MAXってわけか…。


「分かったらさっさとコーヒー淹れろ。あ、俺濃いめのブラックしか飲まねーから」
「……」


工藤くんはそう言い残し、1人さっさとリビングへ消えていった。
…ああ、工藤くん。
私はあんたがそんなに性格の悪い男だったなんて知らなかったよ…。
いや、知って良かったのかな…。
もうどーでもいいや、あははは…。
ってゆーか小学生がブラックって似合わなさすぎだし…。


「…はい、お待ちどーさま」


さて…と。
コーヒーも出したし、テレビでも見ようかなー。


「…おい」
「はい?」
「はいじゃねーよ。何だよこれ」
「何って…コーヒーだけど…」
「んなの見りゃあ分かるよ。俺が言ってんのは色だよ、色!」
「い、色?」
「明らかに薄いだろーが!テメェの中の濃いめはこれか?この色なのか!?」
「…」


毛利さん、私はあなたを尊敬するよ…。
よくこんな男と幼なじみやっていけてるね…。


「しかもヤケにおっせーしよー…。コーヒー1杯淹れんのに何分かかってんだよ?」
「わ、悪うございましたねぇ…トロくて…」


そうやって文句ダラダラ垂れるなら飲むんじゃないよこのボンボン温室育ちが!
いつか学校に復帰したら覚悟しとけよこのホームズオタク!
小さくなって毛利さんちに居候してた事をネタにコキ使ってやる!!


「…ま、オメェにしちゃあ上出来なんじゃねーの?」
「え…?」
「飲んでみたら案外濃いし…。もっと不味いかと思ってた」
「あ…ど、どうも…」


なーんか小学生に褒められるってビミョーな気分…。
…いや、違うか。
見た目は子供だけど中身は紛れもなく工藤くんなわけだし…。


「…ねぇ工藤くん、この前から夜も眠れないぐらい気になってる事があるんだけど聞いてもいい?」
「あ?気になってる事?」
「何でさぁ、毎日毎日私の事をストーカーしてくるわけ?」
「…」


私の質問を聞いた工藤くんは、持っていたカップを静かに置いた。


「…そんなに聞きてぇか?」
「そ…そりゃあ、まぁ…」
「ふーん…じゃあ教えてやるよ」
「え、っ!?」


工藤くんが立ち上がった直後、自分の腕が思いっきり引っ張られる感覚がした。


「…やっぱ気になる奴には会いたくなるだろ?」
「えっ…?」
「つまりはそーゆー事。好きなんだよ、オメーの事が…」


すぐ目の前に広がる、幼い工藤くんの顔。
その言葉を理解した瞬間、自分の顔が一気に染まっていくのが分かった。


bkm?

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