友達と遊びに行った帰り道。
たまには遠回りしていこうかと思ったのが、間違いだった。
今思えば、私は本当に運が悪かったとしか言いようがない。
「ねぇ、ちょっと…」
「え…?」
「あんた誰?何で工藤くんの家から出て来たの?」
クラスメイトである工藤新一の家のデかさは、学校でも有名だった。
誰かに聞かなくてもこのデかさじゃ目立つし、そもそも表札に名前が書いてあるから一目で分かる。
だからその家から1人の男の子が出てきた時はホントにビビった。
「あ、あの…えっと…」
「……」
しどろもどろになって狼狽えるその子の正体を、その時の私は知らなかった。
だから余計怪しく見えたし、余計知りたくなった。
「お、お姉ちゃん…新一兄ちゃんの事知ってるんだ?」
「そりゃあクラスメイトが探偵なんてやってれば嫌でも顔と名前覚えるよ。で?あんた誰?弟?…いや、それは無いか。あの学年一お喋りな鈴木財閥のお嬢様が前に『新一くんは一人っ子の温室育ちだから〜』とか何とか言ってたし…」
「うっ…」
じゃあ親戚…?
にしては妙に似すぎてる気がする…。
「あ…!」
「えっ!?」
「あんた…まさか!」
「な、何!?」
「空き巣の仲間でしょ!?」
「……は?」
絶対そうだ。
最近子供を偵察に行かせる空き巣が出てきたらしい、って工藤くんが毛利さんに話してたの聞いたし!
「も、もう逃げられないからね!今ケーサツに電話」
「だあー!やめろ名字ちょっと待て!!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「…え?」
「あっ…!」
こうして私は知ってしまった。
工藤くんの、大きな大きなヒミツを。
「…ってわけだ。ぜってー誰にも言うんじゃねぇぞ?」
…と、言われましても。
「あまりにも有り得なさすぎて何も言えないって…」
「だよなぁー!この俺が訳わかんねぇのにお前が分かるわけあだっ!!」
「あんたは一言多いんだよいつも!子供なら子供らしくしててよね!」
「だから俺はガキなんかじゃねーって何度言やぁ分かんだよ!」
「……」
そんなの「ハイ、ソーデスカ」って信じられるわけないじゃん!
うっかりしてたせいで怪しい男に薬で小さくされたとか組織のヒミツを探る為に毛利さんちの事務所に居座る事にしたとかさぁ!
っていうか明らかに下心あるだろコイツ!
いくら探偵だっていっても思春期真っ只中の男だよ!?
男性ホルモンじゃんじゃん分泌されてる時期だよ!?
下心が無いわけが無い!
「あーあ、男って生き物はやだね〜…」
「…テメェが何を考えてんのか大体予想はつく」
「おっ、さすが名探偵!やっぱ違うね〜!」
「…とーにーかーく!」
「え?」
「俺はしばらく休学すっから、誰かに何か聞かれても絶対バラさねぇって今ここで約束しろ!」
「……」
「おい聞いてんのか名字!?」
「はいはい、分かりましたよ…。この変態探偵め」
「あっははー!何か言ったかぁー?名字名前ー」
「わ、わひゃりまひた…やふほふひまふ…」
工藤くんに顔を引っ張られながら誓った言葉。
結局これが言い損になると分かっていたら、言わなければ良かったと心の底から思うわけで…。
「こんにちは名前姉ちゃん!今日も僕と遊んでくれるよね!」
「……」
それから毎日、何故か工藤くんにストーカーされる日々が続いた。