「ごめんね?名前まで付き合わせちゃって…」
『ううん気にしないで?全く、あのゴリラったら人使いが荒いんだから…いくら蘭が力持ちでもこんな重いのを女の子に頼むなんて!あれでよく結婚できたわね!』
「ホントだよね〜!まさかあのゴリラが結婚だなんて…」
職員室には出来れば近付きたくない。
高校生の一般論だよね。
でも最近、私の中でその考えが180度変わった。
職員室に近づきたい。
だって職員室がある2階には、3年生の教室が並んでるんだもん。
「もう慎吾ったら!相変わらず空手バカね!」
「お前よくも空手をバカにしたな!?」
「あ…」
鈴原先輩と相沢先輩…
『…蘭?』
「えっ?」
『どうしたの?何か泣きそうな顔してるよ…?』
「あ…ごめん…」
あの日から、よく鈴原先輩と相沢先輩が一緒にいるのを見るようになった。
ううん、前から"よく一緒にいるなぁ"って思ってたけど、幼なじみって聞いた日からヤケに目につくようになったのかもしれない。
『…やっぱやめた!』
「え?」
『雑用なんて御免だわ!鈴原先輩にでも頼んで?じゃあね〜!』
「あっ、名前!?」
もう名前ったら…
「あれ?毛利じゃん」
「えっ!?」
心臓が跳ね上がる。
「うわっ、何その教材の量!?」
「あ…これは先生に頼まれちゃって…」
「いやいや、幾らなんでもこれは鬼畜がやる事だろ〜…」
「ねぇ慎吾、この子があの毛利さん?」
「わっ!お前どっから涌いて出てきたんだよ!」
「さっきからここにいたわよ!」
わぁ…!
相沢先輩って近くで見ると更にキレイな人…
「ねぇ毛利さん」
「はっ、はい!」
「いつも慎吾から聞いてるわよ?ホントに可愛い子ね!」
「え?あの…」
「おい遥香!余計な事言うなよ!!」
「あら、事実を言ったまでよ?いつも慎吾ったら口を開けば」
「だあぁーっ!言うなバカ遥香!」
「バ、バカですって!?」
「ま、まぁまぁ2人共…」
何だか私と新一みたいで懐かしいな。
「はぁ〜…とにかく!慎吾は2-Bまでこれ運んであげなさい!わかった!?」
「「えっ!?」」
「じゃあ先に教室行ってるわよ?あ、毛利さん!このバカ慎吾、沢山コキ使って構わないからね?」
「えっあの…」
相沢先輩は、キレイな長い髪を揺らしながら走って行っちゃったワケで……
「ったく遥香のヤツ…」
「あ、大丈夫ですこれ位なら1人で何とか…」
「ダッ、ダメだ!」
「へっ!?」
か、肩掴まれたっ…!
「お、俺に手伝わせてくれ!頼む!」
「えっ!?あ、はい…じゃあ、お願いします…」
先輩の手の感触が残ってる肩が熱く感じる。
心臓がまたドクドクうるさくて…
恋をするってすごく苦しい事なんだってつくづく思う。
「…ねぇ、名前…」
『うん?』
「…私ね、やっとわかった気がする…去年名前が、私のせいで泣いちゃった時の気持ちが…」
『えっ…?』
「私、今までわかってたようで、イマイチわかってなかったんだ…今更って感じでしょ?ごめんね名前…」
『っ、蘭ったら謝らないでよ…あれは私がバカだったのよ…』
「…」
ううん、名前はバカなんかじゃないよ…
第三者から見ても、鈴原先輩はきっと、相沢先輩の事…
『…幼なじみって』
「え…?」
『近いようで、遠いよね…』
「…うん。ホントにそう思う…」
幼なじみって、色々な意味で厄介な存在なんだなって感じた。
『あ、新一には言ったの?鈴原先輩が好きって…』
「ううん。何だか言えなくて…あ、名前言わないでね?」
『フフッ、わかってるよ!時期が来たら蘭から言っても大丈夫だと思うよ?』
「うん、ありがとう…」