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Zauber Karte

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家族の様に


「ど…どういう、事…?」


新ちゃんの言い放った言葉に、私は戸惑いを隠せなかった。


「俺の気持ちぐらい分かれって、何…?」
「っ…」
「ねぇ新ちゃん!!どういう事!?ねぇってば!!」


まるで全身の血が冷え渡っていく様な、そんな感覚だった。
どうしようもないぐらいの恐怖で頭が真っ白になり、心臓がバクバクと激しく鼓動してゆく。
まさか、やめて、言わないで。
そんな事、私は望んでない。
そんな思いが一気に駆け巡り、ただ黙ったままの新ちゃんに掴みかかった。


「……しゃ、癪だったから…」
「…え?」


長い様で短かった沈黙の末、新ちゃんは観念したかの様にボソリと呟いた。


「その…オメーにウゼェって思われんのが、癪だったから…つい…」
「……」


……はい?


「あのー…新ちゃん?ちょっと言ってる意味がよく分かんないんですけど…」
「っ、だから!オメーは俺にとっちゃデキの悪い妹と同じなんだよ!」
「……い、」


妹…?


「最近のオメーは俺が心配するとやたらウザいとか言って突っ撥ねてくるじゃねーか!だから咄嗟についちまったんだよ!!蘭に頼まれたって言ったら何も文句言わねぇって思ったから!!」
「……」


早口で捲し立てられたせいで、一瞬新ちゃんが何を言ってるのか理解出来なかったけど…。


「…そっ、か…」


そういう事…だったんだ…。
意味を理解した途端、体の力が一気に抜け、自然と新ちゃんの袖を掴んでいた手が離れていった。
そして同時に自惚れた事を思っていた自分に恥ずかしくもなり…。


「もう何よ!このバカアホオタク!それならそうと最初から言えば良かったじゃんっ!」
「無茶言うなよ!そんな事バカ正直に言えるわけねーだろ!?つーかバカアホってオメーは小学生かっ!」
「…ふんっ!」


ああもうほんっと恥ずかしい…!
確かに考えてみれば、新ちゃんがお姉ちゃん以外の人を好きになるはずがないって事ぐらい分かるはずじゃない!
もうやだ、ほんっと私バカだっ…!


「…念の為に聞くけど、今度こそ嘘ついてないよね?」
「ついてねーよっ!大体何で俺がこんな事で嘘つかなきゃなんねーんだよ!」


まぁ確かに、新ちゃんの言う通り理由なんて無いかもしれないけどさぁ…。


「…でも良かった!」
「あ?何が?」
「ううん、何でもない!」


今日は嬉しい事が2つもあった。
まず1つは、新ちゃんからの予想外な言葉。
あれには正直言って、胸が震えてしまうほど嬉しく思った。
血の繋がっていない人から本当の家族の様に思ってもらえるなんて、そうある事じゃないもんね…。


「だからさ、その…」
「うん?」
「……もっと、俺を頼れよ」


照れ臭そうに鼻の下を擦りながら、新ちゃんは私にそう言った。


「最近のオメー、全然頼ってこなくなっちまってこっちも寂しいっつーか…。それに何だか危なっかしくてほっとけねぇし…」
「あ…それ、お姉ちゃんにも言われた」
「だろぉ!?ったく…。そのうち蘭から外出禁止令出されても知らねぇからな?」
「う…」


それは困る…!


「…ま、でも」
「え?」
「そしたらまた俺が連れ出してやるよ。昔みてぇに、オメーを背負ってさ!」
「……」


どこか意地悪そうに。
でも、温かく優しい笑顔で、新ちゃんはそう言った。
……ああ、何か…悔しいな…。
この人の言葉に、今日だけで2回も胸が詰まるほど嬉しく思うなんて…。


「…ありがとう」
「ん?」


だけど、こうやって嬉しく思うという事は、それほど新ちゃんの想いが私の胸に響いたから…。


「私、新ちゃんと出逢えて良かったって心から思う。本当にありがとう!」


正直言って、幼なじみの絆とか、昔からの繋がりだとか、まだあまりよく分からないけれど。
それでもほんの少し、この未来の名探偵の有難みが分かったかもしれない。
今日まで沢山の心配をかけさせてしまったお詫びに、今後はあまり隠し事はしない様にするべきなのかもしれないな…。


「…もういいから早く行くぞ!」
「あ、ちょっ…!新ちゃん!?」


けれどこのオタクは私の思っていた事なんて露知らず、せっかくの雰囲気をぶち壊す様に私の腕を強引に引き始めた。
何なのこの人!?
子供みたいにそっぽ向いたと思ったら強引に人の腕引っ張って!
せっかく人が感謝の意を表したっていうのに…。


「…あれれ〜?でも新ちゃんさぁ〜、変じゃなぁ〜い?」
「は?何が?」
「だって新ちゃん、最近のオメーは可愛くない!って毎日の様に言ってたじゃん?」
「っ、だからそれは、ほら…アレだよ…」
「うん?」
「……かっ、可愛くねぇ奴ほど可愛いもんなんだよ!」
「…ふーん?そうなんだ」


全然意味分かんないけど、そういう事なんだろうな…。
あまり追及しないでおこう。
またギャンギャン喚かれたらうるさいし。


「あ、そうそう。そういえばさっき、内科にも行ったんだ」
「ああ、オメーのかかりつけの?」
「うん」


これで、この人の心配性が軽くなるといいけど…。


「私、もう運動してもいいって」
「…え?」


私の報告に、新ちゃんは目を見開いて驚いた。


「ほ…ホントか…?」
「うん!でもまだ全速力で走ったりはダメみたいだけど、それ以外だったらもう心配ないってさ!あーあ、体育の授業やだなー…」


先生の話では、私の身体は年齢と共に治っていく事がほとんどらしく、最近になってやっと快方に向かっているとの事だった。


「よ…」
「うん?」
「良かったな杏っ!!」
「きゃあっ!?」
「マジで良かったじゃねーか!!オメー頑張ったもんなぁ!!」
「ちょっ…!」


抱き着いてきたと思ったらグルグル回り始めたんだけど!!
何なのこのオタク、バカなの!?


「わ、分かったから!喜びの舞はもういいから降ろせっ!そして離れろ!」
「あ…わ、悪い…」
「もう!」


私に抱き着くぐらいなら、お姉ちゃんにやればいいのに!


bkm?

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