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Zauber Karte

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新しい家族との対面


電話を切った後、ベンチに座ってずーっと考えた。
毛利蘭や黒羽快斗っていう名前は聞いた覚えがある。
…けど、それがどこで聞いたか全く思い出せない。
まぁ、私の名前が小暮杏だという事は何とか思い出せたから良しとしよう。
でもさっき快斗くん、毛利杏って呼んだよね?
……ナゼだ??


カチッ


ケータイにヒントが無いか見てみると、プロフィール欄には確かに毛利杏の文字があった。
快斗くんはこれを見て、私が毛利杏だと言ったんだろう。
毛利といえば、あの毛利蘭と同じ苗字だけれど何か繋がりがあるのだろうか?
うーん……。


「杏っ!!」


顔を上げると、1人の女の子が泣きながらこっちに走ってきた。
声からしてさっきの電話の主、毛利蘭…?


「見付かって良かったぁー!!」
「わっ!」


毛利蘭は飛び掛かるように私に抱き着いたあと、涙でグシャグシャになった顔を私に向けた。
あ、間近で見ると更に可愛い……って!


「もう!杏どこ行ってたの!?心配したのよ!?」
「そっ…!」


そうだ…思い出した!!
この子、名探偵コナンとかいうマンガに出てくるヒロインじゃん!!
…えっ!?
じ、じゃあさっきまで一緒にいたあのイケメンって、あの怪盗キッドになる予定のくくく黒羽快斗!?


「は!?えっ!?ど、どーゆー事!?何で私がここにいるの!?どうしちゃったの!?」
「うん、落ち着いて杏。話は家に帰ってから聞くから。とりあえず帰ろ?ね?」


私のささやかな抵抗も虚しく、笑顔の可愛らしい蘭ちゃんに連れられてタクシーに乗り込み着いた場所は、年季の入った一軒のビルだった。


「も、毛利探偵事務所…」


これが夢じゃないって事は、タクシーの中で何度も頬をつねって確認済み。
つまり…これは現実なわけで…。
えっ、と。
私、まだ酔っ払ってるのかな?
まさか架空の世界に飛んできちゃったなんてそんなコト有り得ます?
いくらなんでも非現実的すぎるでしょ。


「……やっぱり痛い」
「えっ?」
「…」


何度も頬をつねっても覚めない夢ってあるんだっけ?
夢の中でも痛みを感じる時ってあるんだっけ?
ああ…ほんともうワケわかんない…!


「怖がらなくても大丈夫だよ、杏」
「えっ?」
「安心して。お父さんもお母さんも怒ってないから」


この蘭ちゃんが言うお父さん、お母さんといったら言うまでも無く、毛利小五郎と妃英理だろう。
でも、だからといって何で私がここに連れてこられたのか不思議でならない。
私とこの子の関係って…。


−気を付けて帰れよ。毛利杏ちゃん!−


まさか、私…。
毛利家の親戚かなにか?
…んなバカな。


「ほらおいで。私がついてるから大丈夫よ」


優しく笑う蘭ちゃんに手を引かれ中に入ると、真っ先に私の鼻を刺激したのはタバコの匂いだった。
部屋に染み付いてるものとは違う、独特の匂い。


「っ、杏!!」
「杏…!」


ほっとした表情で迎えてくれた妖艶なオーラを放つオバサマと、私の姿を見て勢い良く立ち上がった小汚いオジサンは、きっと毛利小五郎と妃英理だ。
2人とも、どことなく疲れた顔をしている。


バシッ!


一瞬のことで、何が起きたか分からなかった。
私に駆け寄り、小五郎さんが目の前に立ったなぁと思ったのに。


「…オメー、今まで何処で何をやってた?」
「…」


左頬がジンジンと痛み、反射的に涙が出た。
……うーんと。
あー、そっか。
私、叩かれたんだ。
ていうか結構痛かったよ、小五郎サン。
私、女だよ?
もっと手加減してくれてもいいと思う。


「おい!答えろ!何処で何やってたかと聞いてるんだ!!」
「やめてお父さん!」
「あなた!」


胸ぐらを掴まれた事によって更に小五郎さんに近づくと、真っ赤な顔のおでこに青筋が立っていた。
初めて見たかも。


「おまっ…!まさか、酒飲んだのか!?」
「「えっ!?」」


赤くなったと思ったら、瞬時に顔面蒼白になる小五郎さん。
その忙しさに、少し笑いそうになってしまった。


「ええ、飲みましたけどそれが何か?」
「なっ…!」
「お、お前!自分が何をしたか分かってるのか!?」
「ちょっ、大声出すのやめて…」


あー…二日酔いで頭ガンガンする…。


「やけ酒が良くない事ぐらい私も分かってるよ…。でもさすがにベンチで寝ちゃって気付いたら朝だったなんて、さすがの私も初めての経験っていうかさぁ…」


バシッ!


「いったー…」


まさか2回も叩かれるとは思ってもみなかった。


「酒飲んでベンチで寝ただと!?ふざけるな!中学生の分際で何を考えてやがる!!」


口の中に鉄の味がジワジワと広がる。
ああ、切れたんだ。
…いやいや、今はそんな事よりもこれでハッキリした。
私は快斗くんの言う通り、本当に中学生らしい。
……ん?でも待って?
何で私、さっきから小五郎さんに怒られてるの?
この怒りっぷりから見て、まるで、私を娘の様に………あれれ?


「おい!聞いてんのか杏!」
「…えっ、と…あのー、」
「あん!?」
「つかぬ事をお聞きしますが…もしかしてあなた、私の…お、お父、さん?」
「………は?」
「あなた、抑えて。この子きっと混乱しているのよ。これほど怒られた事なんて今まで無いんですもの…」
「あ…あのー…?」
「ちょ、ちょっと杏…!」
「へっ?」
「何でそんな変な事聞くの?確かに怖いのは分かるけど、素直に謝ればお父さんだって許してくれるよ?杏を叩いたのだって、自分の娘が未成年なら当たり前じゃない!」
「……」


あー…そっか。
なるほど、謎は解けた。
つまりはアレだ。
両親にこんな心配をかけさせた張本人である「毛利杏」は「小暮杏」、つまり私自身なわけで、この2人の娘なわけで…。
えっ、じゃあ元々この世界にいた毛利杏は一体…?


「テ、テメェ!ふざけんのもいい加減に…!!」
「お父さんもうやめて!これ以上叩いたら杏死んじゃう!」
「どけ!蘭!コイツ自分がどれだけの事をしたのか全く分かってねぇ!!」


ホントだよ…。
私、いつかこの男に殴り殺されるよきっと…。
にしても、ああ、参ったなぁ…。
何かめんどくさい展開になってきたよ…。
だからここはテキトーに謝って切り抜けるのが1番かな…。


「はいはいストップ!もう分かったからさ、そんな怒らないでよ…ね?お酒飲んで行方不明になってごめーんね。はい、この話はおーしまい。顔洗ってきまーす」
「お、おい!待て杏っ!まだ話は終わってな」
「もう良いじゃないお父さん!杏謝ったんだから!」
「そうよあなた!これ以上あの子を責めるのは良くないわ!きっと…」


考えるのは後にして、とりあえず二日酔いをどうにかしないと…!


bkm?

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