「ほら!あんたは真ん中!」
「はうっ、」
「蘭は杏の鞄を守っとくのよ!コイツ脱走癖があるみたいだしね!」
「うん、分かった!」
お姉ちゃんに鞄を取られ、園子に無理矢理ソファー席の真ん中に投げ飛ばされた可哀想な私。
ケータイは園子に没収され、助けも呼べない状況で…。
「さぁて杏、色々吐いてもらうわよ?」
「……」
嫌です、と言ったらまた火吹くよね絶対…。
「そうねー…。じゃあ手始めに次のクロバくんとのデートがいつなのか聞こうじゃないの」
「…は?次のデート?」
「んもう、とぼけたって無駄よ!次会うのはいつ?明日?明後日?あ、それとも来週!?」
「……別に」
「は?」
「特に…決まってない」
「はああっ!?」
「えっ…」
な、何か園子…怒ってる?
「あんたねぇ!何でこの前会った時に次の約束取り付けてないわけ!?」
「いや、だ、だって…」
「メールは!?」
「え?」
「約束取り付けて無いのはまぁしょうがないとして、毎日ラブメールぐらいはしてんでしょうね!?」
「ああ、ううん。全くしてないよ?だって別に話す事無い、しっ!?」
「あ、あんたっていう女はーーっ!!」
「あぐっ、」
「どんだけバカなのよ!どんだけ恋愛スキルが無いのよーーっ!!」
「ちょ、ちょっと園子落ち着いて!杏大丈夫!?」
「だ、だいじょばない…」
胸ぐらを掴まれて前後に揺さぶるという極刑を下した鈴木裁判長。
こ、これはもう極刑というより拷問、いや処刑に値するレベル…。
「いい!?男はみんな回転寿司よ!」
「か、回転寿司…?」
「そうよ!早く奪っておかないと旨みたっぷりなネタはすぐに他の人間に横取りされんの!男も同じよ!まったく、何でそーゆー基本的な事が分かんないのかねぇ…。呆れて何も言えないわ…」
「……」
園子はどこの部分であの快斗くんが旨みたっぷりなネタだと判断したんだろ…。
「あ、あのー…」
「は?」
「1つだけ気になった事があるんですが…」
「…何よ」
「た、確かに裁判長の言う通りだとは思いますよ?思うんだけどー…」
「裁判長って何よ!あんたナメてんの!?」
「まぁまぁ…。けど…何?杏」
「う、うん…。仮にそのターゲットにしてるネタが、既に予約済みだったり他のお客さんが狙ってたりしてたらもう無理かと思うんだけど…」
「……あんた」
「え?」
「それをもっと早く言いなさいよーーっ!!」
「ひっ…!」
な、何故に火を吹く鈴木園子っ…!
「のんびり苺オーレなんか啜ってる場合じゃないでしょーが!!もういい!私が動く!!」
園子はそう言って何かを取り出した。
「ちょっ!なに勝手に私のケータイ弄ってんのよ!?」
「うっさい!こうでもしないと行動しないでしょあんた!」
「こ、行動ってそもそも私は」
「蘭!杏が邪魔しない様に拘束しといて!」
「…ふん!お姉ちゃんが私にそんな事するわけがな」
「うん、杏はちょっと黙ってようか。ね?」
…黒い。
黒いよMy sister!
いくらソファー席だからって妹を組み敷くなんてっ!!
「ねぇ蘭、今から杏行かせちゃう?」
「え?行かせるって…どこに?」
「決まってるじゃない!江古田よ、江古田!」
な、何っ!?
「うーん…でも杏1人で平気かなぁ?もし途中で具合が悪くなったりしたら…」
「ああ、だったら私達も江古田駅まで同行するってのはどう?」
「うん!それだったらいいかも!」
「よ、良くないっ!やめふがっ、」
「うふふ、杏は黙っててって言ったでしょ?」
じゃあ早速、と呟いた園子は高速スピードで何やらメールを打ち出した。
…ああ、やられた。
コイツらに言うんじゃなかった。
そう気付いても時既に遅し。
私の身柄はあっという間に江古田へと搬送された。