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Zauber Karte

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不確かな照れ模様


「はーい!じゃあ出席番号順に並んでー!」


今日は新学期恒例の身体測定の日。
保健室はブラとショーツのみという、何ともアレな姿の女子達で溢れ返ってる。
まぁ…私もその一員なんだけど。


「えーっと…。毛利さんは157.6ね」
「わあっ!去年より2センチも伸びてるー!」


…姉よ。
跳び跳ねるのはそのくらいにして、さっさと制服を着てください。
あなたのその揺れ動くメロンおっぱいに視線がいってしまってどこを見ればいいのか戸惑うんだってば…!


「はい、じゃあ妹の方の毛利さんはー……142.6センチね」


あと4ミリで143センチ…。
まだまだ150センチの壁は壊せそうにないね…。


「あんた良かったじゃなーい!」
「いっ…たー…」


背中っ…!
思いっきり叩かれたっ…!


「もう!急に何よ!?」
「何って身長よ、身長!去年より0.1センチ伸びてんじゃないの!」


ふーん…。
これでも一応伸びたんだ。


「ま、あんたの場合は身長なんかよりも…ぐふふっ」
「な、何よ…?」
「姉に全部持ってかれた、そのツルツルでぺったんこな胸をどうにかする事ね!」
「なっ…!」
「ちょっと園子!杏をいじるのやめてっていつも言ってるでしょ?!」
「えへへ〜だってこの子、面白いんだも〜ん!」
「……」


確かに…園子の言う通り、これはちょっと問題アリかもしれない。
今着たばっかりのシャツを上から摘んで覗き込み、小さくため息をついた。
中2といえば、大きい小さいに関わらず既にブラジャーデビューをしている年頃。
なのに私ときたら未だそういった支えなんか必要のない体型で…。
あれれ?
膨らみはどこ?な上半身。
…こりゃマズいかも。


「あれ?蘭、また胸デカくなった?」
「うーん、実はそうなの。だからこの前思い切ってブラのサイズ上げちゃった」
「ふふーん?…どれどれ」
「きゃっ!ちょ、ちょっと園子!」


変態オヤジ顔でお姉ちゃんのブラを上にずりあげた園子。
こっ、これはなかなかの美乳っ…!


「お姉ちゃんこっち〜」
「え?」


カシャッ


「こ、こら!なに勝手に撮ってんのよ杏っ!!」
「いいぞ杏ー!次はパンチラよ!それっ!!」
「きゃっ!?」
「よしきた」


カシャッ


「さて、これを新ちゃんにメールで…」
「ダ、ダメダメ!絶っっ対ダメーーッ!!」
「あはははっ!だーいじょぶだよ!送らないから安心しなって」
「あ、当たり前ですっ!ホントにもう2人揃って…」
「…まぁでも、」
「え?」
「これで主導権は全て私に移行した、って事だよね?お姉ちゃんの弱み、握っちゃったから」
「なっ…!」
「うわ、あんたなかなかやるわねぇ…」
「さ、早く着替えてお昼食べようよ。私お腹空いちゃった」


この後、怒り狂ったお姉ちゃんに写真を消されそうになるも、園子が全面協力してくれたお陰で何とか死守する事が出来た。
ま、どうせ取り上げられても暗証番号入れなきゃ消せない様に設定してあるし…。
無駄な徒労だよ、お姉ちゃん。


「なーんかさ…」
「うん?」
「最近ぜーんぜん面白い話が舞い込んで来ないのよねぇ…」


お弁当を広げながら深いため息をつく園子。
噂話が大好物な園子にとってみればそれは致命的かもねー…。


「どっかその辺這いつくばってたら落ちてんじゃない?」
「…じゃああんた探してきてよ」
「え、やだよ」
「あ!そういえば園子に言ったっけ?」
「え?」
「この前私、見ちゃったんだ!」
「…見ちゃったって」
「…何を?」
「うふふっ!杏のお・も・い・び・と!」


ふーん、私の想い人ねぇ……って。


「はあ!?お、想い人って…!」
「ちょ、その話聞いてないわよ私っ!詳しく教えなさい蘭!」
「あのねー?」


ニヤニヤしながらこの前うちの前で快斗くんに会った事を話し出すお姉ちゃん。
…絶っっっ対さっきの写真の仕返しだ!
そうに決まってる!


「うっひゃー!あんたいつの間に初デートなんかしちゃってんのよもうっ!」
「痛あっ!」
「で?どーだったのよ!新一くん以外の男子との逢い引きは!」
「もう!いちいち背中叩くのやめてってば!っていうか、別に私は快斗くんの事なんか想ってないし!ただの友達だし!」
「はっはっはー!この未熟者め!この園子様の前で惚けようなんて100年甘いわよ杏!」
「べっ、別に惚けてなんか」
「あーら、じゃあその茹でダコみたいに真っ赤になってる顔はどう言い訳するわけ?」
「っ!」


この間から顔が妙に火照りやすく、そういう時は決まって快斗くんが関係している時だ。


「き、きっと熱があるんだよ…」
「熱ぅ?」
「…それしか考えらんないもん」


園子には、言えない。
言えるわけがない!
顔をくっつけて可愛いとか言われました!なんて喋ったら、めちゃくちゃめんどくさい事になるのは目に見えてるもん!


「…ねぇ杏?。いい加減、素直に認めた方がいいんじゃない?」
「えっ!?お、お姉ちゃんまで何をいきなり…」
「そーよ!私達が全力であんたの恋路を応援してあげるってんだからさ!」
「ね?だから1回深呼吸してさ、正直に自分の気持ち話してごらん?」
「っ…」


お姉ちゃんの柔らかい微笑みを見ると、ついついその気になってしまうのは私の気のせいだろうか。


「はい、吸ってー?」
「すぅー…」
「吐いてー…」
「はぁー…」


試しに深呼吸をしたら、お姉ちゃんの言う通り速まってた心臓がスッ、と落ち着いた。
なんだ、知恵熱だったか…。


「で?杏の正直な気持ちは?どうなのよ?」
「……」


しょ、正直って言われても…。


「じゃあ聞き方変えるわ。そのクロバくんてのはどんな男子なのよ?」
「……」


ダメ、思い出すな私っ!
また心臓が痙攣する!


「おいコラ、黙ってちゃ分かんないでしょーが」
「園子は黙ってて。…ねぇ杏、黒羽くんってすっごく手品上手なんだね。あれって独学なのかな?」
「……お父、さんが」
「うん?」
「プロの…マジシャン…だった、らしい…」
「へぇー!だからあんなに上手なんだぁ!じゃあ黒羽くんも将来はプロのマジシャンになるのかな?」
「……」


いいえ。
彼は将来、キザな泥棒になられます…。
それも世間を騒がせる、大怪盗に…。


「あの時杏が帽子につけてたお花、黒羽くんからのプレゼント?」
「あ…うん」
「そっかあ、だから押し花の作り方を聞いてきたんだね」
「ちっ、違うし!あれはたまたま」
「え!じゃああんた、そのクロバくんの手品によって見事にハートをずっきゅんこされちゃったわけだ!?」
「だから園子は黙っててって言ってるでしょ!…じゃあ、とりあえず杏が感じた黒羽くんの印象聞かせてくれる?」
「い、印象…?」
「うん。どんな男の子なのか、杏が思ったままでいいからお姉ちゃんに教えてくれると嬉しいな」
「……」


ニコッ、と可愛い顔で微笑むお姉ちゃんを見て、つくづく妹ってのは不利な立場だと痛感した。


「……か、快斗くんは…人懐っこい人、で」
「うん」
「喜怒哀楽が、人一倍激しくて…」
「うんうん」
「結構、マイペースで…」
「それでそれで?」
「た…太陽みたいな、活発化した男子で…」
「あー、性格が明るいってなかなかポイント高いわね!」
「まぁ…一言で表すとすれば…」
「「すれば?」」
「……犬、かな」
「「犬??」」
「うん…。それもたまに頭のネジがどっか飛んでいって奇妙な行動をとるバカな大型犬」
「…あんたそれ褒めてんの?」


褒めてるか褒めてないかと聞かれれば、そりゃあ今の発言は褒めてないと思う。
けど、犬とか猫とか鳥とか動物全般好きだから、自分なりに褒めてるつもりで…。


「あーもう焦れったい!単刀直入に聞くわ!あんた、そのクロバくんの事好きなの!?嫌いなの!?どっちなの!?」
「えっ!?」


ど、どっちって聞かれても…!
えーっと……うう…照れくさい…。


「……き、嫌いではない」
「うっそ、マジ!?」
「だ、だけど恋愛感情なんか全然」
「蘭!やったわね!」
「うん!これで私達も色々バックアップ出来るね園子!」
「聞けよ人の話を」


ってゆうかバックアップなんかいらないんだけど!
何を勘違いしてんのこの2人っ!


「そうと決まったら早速会議よ!」
「うん!私今日部活無いし、放課後駅前のバーガーショップでどう?」
「オッケー!よっしゃあ俄然燃えてきたーっ!」


何か、目から炎とか出しちゃいそうな勢いですよ園子サン…。
ま、いいや。
帰りのHR終わったら2人に見つからない様にこっそり帰ろ。


「嫌だー!!私は家に帰るうーーっ!!」
「バカ言ってんじゃ、無い、のっ!!」
「ぎゃあっ!!」
「いいから、早く、歩きな、さいっ!!」
「や、やめてーっ!!」


コイツら鬼だ!
悪魔だ!
閻魔大王の手下だっ…!
余計なお節介は要らないのに!!
軽々と持ち上げられた私の体は、強制的に駅前へと運ばれた。


bkm?

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