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Zauber Karte

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Zoo dateA


快斗くんと園内に入って数時間。
近場にあったベンチに並んで座る私達。


「もう全部回った感じ?」
「だなー」


園内のパンフレットに描かれてる地図を快斗くんと一緒に見ながらまだ回れてないエリアを探ったけれど、思ったよりも早く見終わってしまったらしい。


「こんな事だったら、待ち合わせの時間もう少し遅くても良かったね…。ごめんね?江古田からわざわざ来てくれたのに…」


私が謝ると、快斗くんがニヤリと笑って手を差し出した。


「はい!杏ちゃん罰金ー!」
「えっ!?あ…」


し、しまった!
さっきのペナルティの件すっかり頭から抜け落ちてた…。


「どーも毎度ありぃ!」
「くうっ…」


ただでさえ少ないお小遣いがこんな事に使われるなんて…!
悔しさしか無い!


「ま、俺としてはもう少し早く合流しても良かったけどなー」
「え…そうなの?」
「ああ。だって杏ちゃんとその分長く一緒に居れるし」
「っ…」


快斗くんのこういう発言は、無意識なのか意図的なのか読めないから心底困る。
しかも私の方じゃなくて地図を見ながらさりげない感じで言っちゃうあたりが尚更ズルい。
…まぁ、怪盗キッドになる人だからもはや天然ジゴロなんだとは思うけど。


「なぁ、腹減らね?」
「え?あー…言われてみれば確かに」


腕時計を見ようと腕を曲げたけど、この前ヒビが入って捨てた事を思い出した。
…不便すぎる。
ケータイの画面を見るともう1時を回っていて、時間が経つのはあっという間だと実感する。


「んじゃ、そろそろ昼メシにするか。確かあっち側にレストランあったよな」


快斗くんがそう言って立ち上がる。


「あ…あの、快斗くん」
「うん?」
「え、っと…」


私が言い出しっぺじゃないのに、とか、全部を1人で作ったわけじゃないから、とか。
色々と思うところはあるけれど。


「お…お弁当作ってきたんだけど、食べる?」


私が聞くと、快斗くんは途端にパァーッとキラキラな笑顔を浮かべた。


「たっ食べる!食べたい!食べさせて!」
「う、うん…?」


尻尾を振って餌を欲しがるわんこみたいに飛び跳ねる快斗くんに心底驚いた。
そ、そんなに嬉しがるなんて思いもしなかった…。
どこかお弁当を広げられる場所が無いか地図を広げると、丁度いいエリアが目に留まった。


「じゃああっちの方で食べよ。私についてきて」
「はいっ!黒羽快斗、どこまでもついてゆきます!」


私の後ろを忠実なシモベの如くついてくる快斗くん、もとい、わんこ。
音符マークが見えるんじゃないかってぐらいのはしゃぎ様で、相当お腹が減ってるんだろうな…と感じた。
目的の場所までほんの数分。
芝生エリアにはバドミントンやフリスビーで遊ぶ人達がチラホラ見えた。
その中でも一際目立つ、大きめの木。
ちょうど日陰になる場所が空いていたから、そこに持ってきたレジャーシートを快斗くんと一緒に広げた。


「味見はしたけど、口に合わなかったらごめんね」


言いながら、ファミリーサイズのお弁当箱を開けて快斗くんに見せる。
成長期の男の子は食べっぷりが怪物並みだからってお姉ちゃんが言ってたから、一応多めに用意はしてあるけど…。
…あっ!やば!


「うわぁ…!これ全部杏ちゃんの手作り!?」
「う、うん…まぁ、そんなとこ」


嘘はついてない、嘘は。
私もちゃんと手伝ったし。
そして私のペナルティもバレてないみたいで良かった。


「すっっっげー美味そう!いっただっきまーす!」
「あ!快斗くん待って!」
「…へ?」
「ちゃんと手を拭いてから!」


リュックから除菌シートを出し、快斗くんの両手を念入りに拭いていく。
もう!
割り箸あるのに手掴みで食べようとして!


「はい、もういいよ」
「お、おー…」


何故か顔を赤くした快斗くん。
…え、まさか今ので照れたの!?
自分から積極的に手を繋いでくるのにそーゆーところウブってどんなバグ!?


「うっ、うまい…!すっげーうまいよ杏ちゃん!」
「ほんと?良かったー」


夜中までお姉ちゃんと頑張った甲斐があった。
…私は野菜を洗って最後に盛り付けただけだけど。
だってお姉ちゃんったら、妙に気合い入れてレシピ本離さないんだもん…!


「あ、卵焼きは甘いのとしょっぱいの両方あるからね」
「マジ!?」
「うん。快斗くんの好み分かんなかったから両方作ったの」
「俺どっちも好き!」


終始、無邪気な笑顔で美味しそうに食べてくれる快斗くん。
これがあのキザな大泥棒になるんだもんなぁ…と、どことなく寂しさを覚える。
快斗くんがキッドとして活躍する頃、私はここに居られるのだろうか?
それとも元々いた世界に……。


「杏ちゃん杏ちゃん」
「うん?」
「さっきの、ペナルティな」
「……」


子どもみたいに両手におにぎり持ちながら、言う事は可愛くない!


bkm?

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