「新一ったら毎日遅いよ!何時だと思ってるの!?」
久しぶりのセーラー服にドキドキ、ウキウキ。
帝丹中の制服に身を包み、新ちゃんを迎えに工藤邸へとやって来た私とお姉ちゃん。
どうやら私達姉妹は、几帳面な新一くんと毎朝登校するのが日課らしい。
正直子どもじゃないんだから止めれば?って思うけど、まぁ小さい頃からの習慣なら仕方ないか。
「朝っぱらからうっせぇなー。オメーらが早すぎんだよ!」
「早くないよ!新一がのろま過ぎるの!」
ほんとだよ!
何分待たせる気なんだこのヘッポコは!
あと1分遅かったら鞄で顔面潰すとこだったわ!
「へいへい、俺が悪ぅございました!」
ガシャン!とデカい音を立てて門を閉める新一さん。
……にしても、デカイ。
デカすぎる!
何てデカさだ工藤邸!!
絶対象とかキリンの1匹や2匹飼ってるってこれ!!
工藤夫妻の平均年収がいくらなのか知りたくなった、そんな朝。
「何ボーッとしてるの杏?」
「あ、ううんごめん、何でもない」
いけない、いけない。
ついつい庭に象がいないか探してしまった…。
…ってゆうか、
「ふぁ〜…あー、眠みー…」
さっきから何なんだこの嫌なドキドキ感は!
よく男子は学ランを着るとかっこよさが3割方増すって言うけどさ?
何だかんだで工藤新一の学ラン姿も結構イケてるじゃん…。
若干悔しさを感じつつも、お姉ちゃん、新ちゃん、私の並びで通学路を歩く。
「どうせまた遅くまで推理小説読み耽ってたんでしょ!」
「…ほっとけ」
プイッと顔を逸らした新ちゃんとバッチリ目が合った。
あはっ、図星か。
「おはよう、新ちゃん」
「…はよ」
「…」
やっぱり思春期だ。
昨日の事があってか、新ちゃんは少し気まずいみたいで、今度はお姉ちゃんの方に顔を逸らした。
…別に普段通りでいいじゃん。
「昨日はどうもね。うちまで運んでくれて」
「…バーロー。当たり前の事だろーが」
学ラン姿の新ちゃんが、私の頭をワシャワシャと撫で回した。
チラッとお姉ちゃんを見ると、微笑んではいるけどどこか寂しそうな目をしていて。
…ああ、そうだった。
お姉ちゃんの前ではやめて欲しいって後で言わなきゃ。
女心は複雑だもんね。
絶対この工藤新一は分かってないだろうけど。
「…あれ?」
下駄箱を開けると、何枚もの紙くず。
いや、何か書いてあるっぽいから恐らく手紙だろう。
…何?
「あ、ちょっ、」
「こんなもん、オメーが読む必要なんかねぇよ」
新ちゃんは私からひったくるように奪い取った紙を、素早く近くのゴミ箱に放り投げた。
「また入ってたの…?」
「どうせアイツらの仕業だろ?ったく、ガキがするような事平気でしやがって。杏は気にすんじゃねーぞ。こーゆーのは無視だ、無視」
「う、うん?」
この時、新ちゃんが言ってる事が何なのか、私は全く分からなかった。
でもほんの少しだけ、2人の雰囲気がピリピリッとなったのは何となく感じた。
「らーん!おっはよー!」
「あ、おはよう園子!」
うわ、これがあの財閥令嬢の鈴木園子か!!
今は中2だから原作よりあどけない感じだけど、でも中学生園子も可愛い!
すごいすごい!
何かテンション上がっちゃう!!
「杏もおはよ!」
「おはよう園子ちゃん!」
「……はぁ?」
「え?」
気合入れて返事をしてみたものの、何故だか空気が固まった気がする。
「あんた大丈夫?」
「だ、大丈夫って何が」
「蘭から聞いたわよ?あんた昨日お酒飲んだんですって!?」
「ああ、まぁ…はい、飲みました」
「バカ!何やってんのよホントに!そのせいで脳ミソいかれちゃったんじゃないの!?冗談でも、ちゃん付けなんてやめてよね!」
「ご、ごめんね園子?ちょっとふざけただけだから気にしないで?」
ああ、また呼び名間違えちゃったなー…。
何か、ちょっとめんどくさくない?
トリップっていうものも考えものだな。
話を聞いてると、どうやら毛利杏と鈴木園子は大の仲良しらしい。
お姉ちゃんと姉妹ゲンカをしたら真っ先に新ちゃんと仲裁に入ってくれたり、お姉ちゃんや新ちゃんに話せないような悩みを打ち明けてたり。
じゃあ新ちゃんと別れた事も後で言わないとなぁ、とか色々考えながら自分の席についた。ら…
「ねぇ」
「…えっ?」
いかにも金持ち〜なオーラを振り撒いてるお嬢様3人組が、いつの間にか私の机を取り囲んでいた。