ピリリリリリリ
「…ん〜……」
誰だよ…。
こんな朝っぱらから…。
「…はい」
「あら、清々しいお目覚めの様ね?工藤くん…」
「あ?…んだよ灰原か。オメーのせいで最悪な目覚めだよ…」
今、何時だ?
…はぁ!?
まだ朝の5時じゃねぇか!
「あら、私にそんな事言って良いのかしら?」
「…何が言いてぇんだよ?」
「たった今完成したわよ」
「は?何が」
「あなたが喉から手が出るほど欲しがってた、APTX4869の解毒剤」
げ、げ、解毒剤!?
「マジかよ!!?」
「ええ…。でも、私のせいで最悪な目覚めだったのならまだ眠っていた」
「行く行く!!今から5分以内で行くよ!!」
「クスッ…じゃあ待ってるわ」
ピッ
「こうしちゃ居られねぇ!早く準備しねぇと!」
俺は急いで歯みがきと着替えをを済ませ、愛用のスケボーをかっ飛ばして博士の家へと急いだ。
「やーっぱ元の体は最高だなー!!」
「…どうでもいいけど、時間だけは守りなさいよ?」
「わぁーってるよ!明日の昼までだろ?」
結構長く優月と居られるな!
「…くれぐれも、あの名探偵のフィアンセにバレない事。分かった?」
「ああ!任せろって!サンキューな灰原!恩に着るぜ!」
っしゃあ!
待ってろよ優月!
すぐに行くからな!
────ガチャ…
あれ…?
まだ寝てんのかぁ?
「あ、そっか…まだ6時だもんな…」
どーすっかなー…
起こすのは怖ぇし、かといって放っとくのは時間の無駄だし…
「………フッ」
夜這いならぬ、朝這いすっか…!
「…ぅ、ん」
あ、やっと起きたか。
「…はよ。優月」
「し、新一!?」
「見りゃわかんだろ?…約束通り、帰ってきたぜ」
やっと会えたな…。
「し、新一ぃ〜!」
「お、朝から随分積極的だな!」
「何よっ!帰ってくるなら…連絡ぐらいしてよ!…今までどこにいたのよ!?」
「……」
ごめんな、優月…。
だけど俺はずっと傍にいたんだぜ…?
「悪ぃな。少し、時間出来たから寄ったんだ…」
「……また、行っちゃうの?」
「…ああ。ごめんな…」
そんな声で言うなよ…。
「…新一は…狡いよ…」
「……」
分かってる。
「私だけ…いつもっ…狡いよぉ…!」
分かってるさ。
俺は狡い野郎だ…。
「…ごめんな…ツラい思いさせちまって…」
本当に…。
待たせてて、ごめん…。
「……新一?」
「ん?」
「……愛して」
「…え?」
「…いっぱい、愛して?」
「…ああ。会えなかった分、嫌と言う程に愛してやるよ」
俺は、夢中で優月を突き上げた。
今まで抱きたくても、伝えたくても叶わなかった思いを全て、優月に吐き出す様に…。
「…っ…新、一…?」
「はぁっ…ぁん?」
体が鈍ってたのか知らねぇけど、すぐに疲れちまうな…
薬の副作用か…?
「…ねぇ」
「……ん?」
「…何で…言わ…ないの?」
「…え?」
何を…?
「私って…何?」
「…優月?」
「新一の…何、なの?」
「は?何って…婚約者だろ?」
どうしたんだ?急に…。
何かいつもと様子が…。
「じゃあ何で黙ってるのよ!?」
「…優月?」
さっきから何言ってんだ…?
「何で…?何でコナンの時に"工藤新一は俺だ"って言ってくれなかったの!?」
「っ!!」
な、何でバレてんだよ!?
「……な、何言ってんだよ?俺がコナンなワケ」
「私を甘く見ないで!」
「……」
「私は…新一にとって、何?そんなに頼りない?何で…?ずっとずっと打ち明けてくれるの、待ってたのに…!!」
「優月…」
…また、泣かせちまった。
そう、だよな…。
優月が気づかない筈がねぇよな…。
何で俺、優月を甘く見てたんだろう。
「ふぇっ…うぇっ…」
「…ごめんな」
俺は何やってんだ。
優月の事分かってたようで、全然分かってねぇじゃねーか…!
「…ふっ…ひっく…」
「ほんとに…ごめんなっ…!」
「…うっ…うわぁ…っ…!」
最初から正体を明かせば良かったんだ。
全部、優月に打ち明けてたら…。
初めから、全部言っていれば…!
優月にツラい思いさせなくて済んだんだ…!