爆弾は無事、全て取り除かれた。
だが、仕掛けられていた爆弾は盗まれた爆薬の量からして、僅か4分の1。
つまり、まだ残りの4分の3は森谷教授が所持している事になる。
それにしても、動機がわからねぇ…。
確か、放火された黒川邸の建物も環状線に仕掛けられていた爆弾があった橋も、全て森谷教授の設計だよな…。
「何だって！？全部森谷氏の設計！？」
「はい。黒川邸を含め、水島邸、安田邸、阿久津邸と、放火された邸宅は全て、森谷教授が30代前半の頃に設計したものでした」
「うーむ…」
「これは偶然とは思えませんな…」
「直接、森谷教授に話を聞いた方がいいんじゃないかな？」
「よし！森谷教授に話を聞こう！…って言ってもなぁ…。森谷邸がどこにあるか…」
「僕分かるから案内するよ！」
「何を言ってる！お前はまだ…」
「もう治っちゃったよ！早く早く！」
事件を解決に導くまでは寝てらんねぇよ！
「なるほど…。確かにこのパイプは甘い香りがしますね。しかし、たまたま犯人が同じ物を吸っている可能性も否定できませんよ？」
「では、放火をする人物に心当たりはありませんか？」
「んー、そうですなぁ…」
よし、今のうちに…。
───ギャラリー
30代の頃の作品はここからだ…。
黒川邸、水島邸、安田邸に阿久津邸…。
そして橋…
待てよ！？
この橋…！
ま、間違いない！
完璧なシンメトリーじゃない！！
−若い頃はまだまだ未熟でね…。あまり見ないでくれたまえ−
そうか…！
動機がわかったぞ！
「ん…？我が幻のニュータウン・西多摩市？」
あ、そういえば目暮警部が…。
「…そうか！」
この計画を立ててたのが森谷教授だったんだ！
この模型ケースの中にある設計…。
完全なシンメトリーのニュータウンになっている…。
やっぱり犯人は森谷教授か！
しかし証拠がない…。
こうなったら出たとこ勝負でやってみるしかねぇな…！
プルルルルル
「はい、目暮…」
「警部！工藤です！」
「おお！工藤くん！」
「今からすぐにギャラリーに集まって下さい」
「分かった！」
俺は森谷教授が放火犯と爆弾犯だという事を全員に暴いた。
なぜ自分が生み出した作品を抹消しようとしたのか…。
それは完璧主義者の森谷教授にとっては我慢がならない事だったから。
そして、なぜ俺に挑戦してきたか…。
それは、時を同じくして、自分が長い時間をかけて作り上げた西多摩市の街づくり計画が、俺と優月の活躍で市長の逮捕に寄って中止になってしまったから。
教授は、高校生探偵の名を汚す事で目的の1つである復讐を果たそうとしたってわけだ…。
キャリーケースの爆弾のタイマーを止めた理由は、児童公園にあった、こよなく愛するロンドンのそれに似せてデザインした、あのガス灯を壊したくなかったから。
俺は、自分で爆弾犯の変装道具を偽造し、教授の口から隠し場所を吐かせた。
全部、"新一兄ちゃん"のアイディアだと言って…。
「動くな！動くと、この屋敷に仕掛けた爆弾を爆発させる！」
「「「ひっ！！」」」
「…爆発はしないよ」
「えっ！？」
「だってその起爆装置…電池がないんだもん！」
いつもライターを使っていた教授が、今日はマッチを使っていたからな…。
「歩美ちゃんと優月姉ちゃんが言ってた甘い匂いって、パイプの事だったんだ！」
「逮捕だーー！」
これで安心…だな。
「くっくっく…。これで全て解決したと思ったら大間違いだ…。私が抹殺したかった建物はもう1つあるんだ…」
「え…？」
何っ！？
ま、まさか！！
「米花シティビル！？」
「もしかして完全な左右対称じゃないのか！？」
「バブルの崩壊で建築予算がなくなるという、バカバカしい理由のためにね！」
ヤバイぞ…！
今日あのビルには優月が…！！
「私の最大にして最低の作品だ！君達に私の美学はわかるまい！…10時まであと1分…」
くそっ、こうしちゃいられねぇ！！
「もしもしコナン君？」
「優月姉ちゃん！今すぐそこから出て！！」
「え？何言って…」
ドオオォォォン！！！
「優月姉ちゃん、大丈夫！？優月姉ちゃん！」
「貸せっ！おい優月！どうした！？返事しろ優月！！ち、チクショー！！てめぇ！優月をどうする気だ！？」
「ふっふっふ…。あの小娘、工藤と一緒に私の計画をパァにした挙げ句、ガーデンパーティーでこの私の考えたクイズを大勢の前で侮辱したんだ！！私の作品と共に木っ端微塵になってしまえばいいんだよ！！」
「こ…この野郎！！」
「フフフ…。まぁ、まだあそこのロビーの出入り口と非常口を塞いだだけだ。お楽しみはこれからだよ…」
「何！？」
「おい工藤！どうせどこかで聞いてるんだろう？早く行かないと、大事なパートナーがバラバラになってしまうぞ！！」
優月っ…！！
「てめぇ！許さねぇ！！」
「毛利くん！暴力はいかん！」
俺は教授から爆弾の設計図を奪い、米花シティビルへと急いだ。