《じゃあ、まさか犯人は…》
《そう、そんな事が出来るのは…》
《あの場面で鏡の横で倒れていた…》
《《ローズ…》》
《貴女だけよね?》
俺は優月と話し合い、一番注目を浴びる、犯人を名指しする場面を誰が言うかを決めた。
でもここはコイツに華を持たせるべきだと俺は思ったわけだ。
だってここは優月のテリトリーなワケで、俺は日本でも出来るしな。
隣で鮮やかに謎を曝す優月は、水を得た魚のように生き生きとしていた。
本当に推理が好きなんだなと思う反面、コイツが何故探偵になったのか気になった。
何かキッカケがあったのか?
ちなみにコイツ、「推理披露の時は観客席に座らない?」とかアホみてーな事言いやがったから一蹴してやった。
一応理由を聞くと、全身筋肉痛でツラいってまたもや爆弾発言しやがった。
……マジで彼氏いんのかよ?
腹立つから断固反対したら「このサディスト!」とか抜かしやがったし!
俺はサディストなんかじゃねーってんだ!
…しかし優月の英語、発音が綺麗すぎて妙に癪に障る。
ガキだった頃はよくLAの家に連れて行ったっけなー。
今度また一緒に行くか聞いてみるか。
それにしても今回の渡米、蘭に来てもらってよかったかもしれねぇな。
俺だけじゃ照れちまってマトモに優月の相手出来ねぇし。
蘭は、優月に万が一会った時の為の保険だったってワケだ!
《リラもアカネも、ヒースと仲良く写ってる写真を貼っていたわ。でも、貴女が貼っていたのはエンジェル…》
《…》
《貴女が愛していたのは彼じゃなく、彼が演じていた天使…》
《ええ…。だからミカエルのまま封印してあげたの…。彼以外の男があのミカエル役をやるなんて、私にはとても耐えられなかったから…》
《でも彼があの役を降りるのは、映画の話が来たからで…》
《でも決めたのは彼…。あのミカエルを殺したのは彼自身よ!私が狂おしいほど、彼のミカエルを愛していたと知っていながら…》
なんだ?
あのローズの不敵な笑いは…。
《でも神様はちゃんと、私の事を見守ってくれたみたいだわ…》
《…どういう意味?》
《だって、鎧を落とした時に偶然釘が引っ掛かって逃げられなかった私を、貴女が助けてくれたんだもの…》
「…っ!!」
《ありがとう、可愛い天使さん。おかげで想いが遂げられたわ》
な…!
何だあの女の性格の悪さ!!
人の善意を踏みにじるような事言いやがって!!
《ローズ、1ついいかしら?》
えっ、優月は何を言うつもりだ?
《…例え、貴女が殺人を計画してた事を私が最初から解ってたとしても、私は貴女を助けたわ》
《なっ…!何故よ!?》
《…人が人を助ける理由にね…論理的な思考は存在しないのよ!!》
「あ…」
そうか…。
やっと謎が解けた…。
何で俺が優月に惹かれたのか、やっとわかった。
具体的には言えねぇけど、俺は優月の一部だし、優月は俺の一部だから。
だから、惹かれたんだ。
抱き締めた優月は、今にも消えちまいそうな程儚くて、細くて。
消えねぇように、優月の抱える悲しみが俺に少しでもいいから伝わるように、ただただ強く、抱き締めた。