smaragd side S | ナノ

Zauber Karte

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golden appleB


《じゃあその2人は貴女の子供?》
《彼はそうだけど彼女はただの幼なじみよ》
《ふーん…》


女ってのは無駄話に花を咲かせたがる生き物だ。
男の俺にはサッパリ理解出来ねぇな。


《まぁ素敵!》


役者全員が妙に目をキラキラさせて俺を見てきた。
…母さん、また何か変な事言ったな?


《あらあら、てっきり例の奇妙な贈り物の謎を解く為に、優月だけじゃなくナイトバロニスも来てくれたと思ったのに…。子連れで楽屋に冷やかしに来ただけなんてがっかりだわ…》


…ん?


「奇妙な贈り物?」
「3日前に、この劇団宛に贈り物が届いたの」
「え…?」
「動物の血で書かれた、『最も美しい女性へ』っていうメッセージと一緒に、金色のスプレーでコーティングされた林檎が…」
「…」


優月は贈り物の調査をしに来たのか?
でも何で劇団側は優月なんかに…?


《まぁまぁ落ち着いて、僕の女神達。どうせただの悪戯さ》
《あ、ヒース!》
《久しぶりだね、優月》
「彼は?」
「この劇団のトップスターのヒースよ。映画の主役の話が来て、舞台は今夜が最後らしいけど…」


へぇ、優月はあのヒースってやつとも知り合いだったのか…。
…あっ!アイツ優月の頬にキスしやがった!
…いくらここはアメリカだからっつってもなーんか気にくわねぇなー。


《さぁ、気を取り直してシャロンの友人達と優月を舞台裏に案内しようじゃないか…》


ヒースや劇団員達の案内で、俺達は舞台裏に案内された。


「ねぇ優月、元気してた?」
「ええ!ただ最近は誰かさんのせいで体のあちこちが痛いけど…」
「?」
「……」


俺も健全な15歳の青少年。
この優月の発言を聞いたら色々想像してしまうのが思春期ってもんだ。
…これだけキレイなら、男が放っとくワケねーよなぁ…。
俺だけか?
ガキの頃の約束なんて律儀に守ってたのは…。


「それにしても、優月すっごく綺麗になったよね〜新一!」
「あ、ああ…」
「え、そんな事ないよ〜!蘭こそ、こんなに綺麗になっちゃって〜!」
「そんな…私は何も変わってないよ!」


そーそー、コイツだけはなーんも変化無し。
寧ろ更に気性が荒くなったな。


「新ちゃんも、すごいイケメンになっててビックリしたわ!」
「お、おー…」


な、何かこーゆー事を平気で言えるところがアメリカンだなと感じた。
…まさかコイツ、他の男にもこーゆー事平気で言ってんのかよ?
………なんか腹立ってきた。


「ってゆーか優月、性格明るくなったね!」
「そぉ?まぁ、周りからは外見とギャップを感じる時がある…って言われるんだけどね〜」
「「(確かに…)」」


でもマジでそう思う。
見かけは清楚なお嬢様って感じだから、すっげーギャップを感じる。


「でもビックリしちゃった!」
「うん?」
「優月、英語ペラペラになってるんだもん!」
「そりゃ、もうこっちに来て8年経つしね。話せなかったら逆に問題あるよ〜」


ははは…。
そりゃあ話せなかったら逆に不思議だ。
……あ、


「そういや優月」
「うん?」
「シャロンとは知り合いなのか?」
「…うん。以前ちょっとね!」
「ふーん…」


…気になるな。
今度聞いてみっか。


「でもいいの?開演40分前なのに、こんな所にお邪魔しちゃっても…」
「大丈夫よ!最初の20分はギリシャ神話を語り手が面白おかしく話すだけだから」
「ねぇシャロン、天井のあれは何?」
「舞台で使う衣装よ。場所を取るから上に吊ってあるの…」


ビン!!


「え?」
《あっ!》
《いや〜!!》


あ、優月!!


ガシャーン!!!


「優月!大丈夫か!?」
「う、うん。平気…」


コイツ、こんな無茶するやつだったか!?


《やっぱり私よ…》
「え?」
《誰かが私の命を狙ってるんだわ!!》
《ロープが古くなって切れただけさ…》
《誰よ?こんな鎧吊り上げたのは…》


…これは何かありそうだな。


《でも不幸中の幸いね…。側にあったあの大鏡が割れなかったんだから…》
《ええ、私達の守り神ですもの…》


守り神?


《感謝するのは鏡でも神でもないわ…。優月にでしょ?》
《ああ、そうよね…。ありがとう!助かったわ優月!》
《ううん!ローズが無事で良かったわ!》


優しい気持ちは今でも変わってねーんだな…。


《おっと、そろそろスタンバらないと》
《じゃあね優月。楽しんでいって!》
《うん!みんな頑張って!》


ん?
あの3人の様子、何だか…。


「痛っ!」
「え?」
「…あ、擦りむいてる…」


ええっと、絆創膏、絆創膏…


「優月、これを使って」
「あ、ありがとうシャロン!」


だあーっ!
何ですぐに取れなかった俺はっ!
これじゃあ気の利かねぇ男だと思われるじゃねーか!


「やっぱり神様なんていないわね。いるのなら、こんな酷い仕打ちしないもの…」
「え?」
「…」


シャロンの言い方、妙に気になるな…。


「じゃあ有希子、優月。私帰るわ…」
「え?シャロンも舞台観るんじゃなかったの?」
「そのつもりだったけど、外せない用事が入っちゃったし…」
「…」
「今夜はひどい嵐になりそうだから、止めにしておくわ…」


今の言い方…。
…あれ?
優月のやつ、何で溜め息なんかついてんだ?


「どうかした?優月ちゃん?」
「有希ちゃん…」
「うん?」
「ヘタレの相手は疲れるよ…」
「「「???」」」


ヘタレ?
ヘタレって…もしかして俺か!?
いや確かにさっきローズを助けられなかったけど!
でもあれは距離が遠かったんだし仕方ねぇじゃねーか!!
……はぁ、情けねぇの…。


「そういや優月」
「…うん?」
「オメー、何で此処にいんだ?」
「…は?」
「いや、さっき楽屋でアカネさんに飛び付いてただろ?ヒースとも知り合いみてぇだし…」
「あ、その事ね…。アカネは家が隣同士で、こっちに来た時から姉妹みたいに仲良くして貰ってるの。ヒースは…アカネの恋人よ!」
「へぇー。なるほどな…」

ヒースの野郎…!
恋人がいるんなら気安く優月にキスなんかするんじゃねーよ!!


「それより、早く席に行こう!舞台始まっちゃうよ!」


こ、こいつフツーに手握ってきやがったっ!
俺は日本人なんだからもっと丁重に扱えよな!


「新ちゃん、顔赤いよ?熱あるの?」
「そ、そんなんじゃねーよっ!!」


ちきしょー!
これじゃあカッコ悪ぃじゃねーか!


bkm?

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