「今日はありがとう!とっても楽しかった!」
「そりゃあ良かった!またいつでも見せてやるからな!」
「うん!じゃあまたね!」
「おう!またな!」
あ〜楽しかったぁ!
快斗のマジック凄かったなぁ!
久々に笑った気がする!
鳩も可愛かったし。
何だか私も、鳩が欲しくなっちゃった…。
新一に聞いてみようかな?
「あ、もうこんな時間…」
ま、いいか。
別にこの後何かあるわけでもないし。
「……ああーーーっ!!」
あわわわ…どうしよう!
新一にはスーパーに行くって言ったんだった…!
こんな時間までスーパーに居るなんて有り得ないしなぁ…。
はぁ…。
何て言い訳しよう…。
「ただいまー…あれ?」
玄関にはローファーが2つ…。
誰か来てるのかな?
そう思ってリビングに行っても、誰もいなかった。
「あれ?ご飯がある…」
テーブルの上には、ラップがかけられた料理が並んであった。
有希ちゃん、帰ってきたのかな…?
でも連絡来てないし…新一が料理出来るはずないし…。
私が怪訝に思ってると、2階から話し声が聞こえてきた。
…新一の、部屋?
「あ、優月!お帰り!」
「ら、蘭…」
「オメー遅ぇぞ。どこほっつき歩いてたんだよ?」
何で…?
何で、蘭が新一の部屋にいるの…?
2人で、何してたの…?
「…あのご飯…蘭が作ったの…?」
「あ、勝手にキッチン借りちゃってごめんね?」
「あ…別に…いいけど…」
「今日、蘭の父さんが仕事でいねぇから俺が誘ったんだよ」
「…そう…なんだ…」
何で?
何で部屋なの?
何でリビングじゃないの?
「あ、優月お腹空いたでしょ?ご飯にしよう!」
「…うん」
本当は何も食べたくない…。
でも、蘭が折角作ってくれたし、食べないと、変に思われるだろうし…。
「…いただきます」
「沢山食べてね!」
「…俺の金で材料買っ」
「新一?早く食べなさい?」
「…へいへい!」
「……」
食欲、ないなぁ…。
快斗くんのおかげで元気出たと思ったのに…。
「あ!新一、また人参残してる!」
「…いちいちうっせぇなー」
えっ…。
「……新一、人参嫌いだったの…?」
今まで私、普通に出してた…。
そんなの、聞いてないよ…。
「あ、いや、その」
「…ごめんね?気付かなくて…」
「あ…優月っ!ご、ごめんね…?」
「え?何で蘭が謝るの?聞かなかった私が悪いのよ」
なんか…惨めだなぁ…。
でも2人に心配させたくないし…。
「ねぇ蘭!」
「…えっ?」
「明日学校お休みだし、小五郎ちゃんもいないなら泊まっていきなよ!」
「は!?」
「え?…いいの?」
私の気持ち、勘づかれないようにしなきゃ。
「もちろんよ!いいでしょ?新一?」
「…俺は別にいーけど?」
「じゃあ決まりね!着替えとかは私が貸してあげるから!」
「じゃあお言葉に甘えるね!」
「うん!じゃんじゃん甘えちゃって!」
蘭は可愛いし、本っ当良い子だなぁ…。
素直だし、私には無いものをいっぱい持ってる。
新一が一緒にいるのも分かるな…。
「そういや、蘭が泊まるなんて中学ん時以来だな?」
……え?
「ちょ…新一!」
「へ?」
「……」
泊まって、たんだ…。
やっぱり…。
やっぱり、私なんていない方が…。
私なんて…帰って来ない方が、よかったんだ…。
「あ、優月!」
「ごめん…具合悪いから先に寝るね…。着替え、部屋の前に置いとくから…」
「具合悪いって…大丈夫か?」
「……平気」
足早に部屋に戻り、蘭の着替えを適当に選んで部屋の前に置いて、そのままベッドに潜り込んで声を圧し殺しながら泣いた。
新一の事は死ぬほど大好き。
でも、最近では恋人でいる事に対してつらいと思うようになってきた。
ただの幼なじみに戻れば、この黒くて醜い感情は消えて無くなるの…?
答えが出ないまま、私は深い眠りに堕ちていった。