smaragd | ナノ

Zauber Karte

http://nanos.jp/968syrupy910/

青空とバイオリン


「んーっ!こんな天気久しぶり!」


私は梅雨という鬱陶しい季節が嫌い。
だって…大好きな青空が見れなくなるから。
でも!
今日は!
久しぶりの青空が広がってるー!!
だから1人でひたすらお散歩中。
NYにいた時は散歩する時間すら取れなかったから、こういうのんびりした時間があるっていう事が素直に嬉しい!


「あ…ここって…」


うわぁ、懐かしい!
ここ、提向津川…だよね?
昔よくここで新一と蘭と一緒に遊んだっけ…。
あ、そうだ!
バイオリン取ってこようっと!


「…さて、と」


バイオリンを左肩に乗せて顎で挟み、弓を構える。


キー キー


「あ、調律し忘れてた…」


これをしないとどうしても気になるんだよねー…。


スッ…


♪〜♪♪〜♪〜


−Amazing grace how sweet the sound−


♪〜♪〜〜♪〜


−That saved a wretch like me.−


♪♪〜♪〜


−I once was lost but now am found,−


♪〜〜♪♪〜


−Was blind but now I see.−


はぁ…。
やっぱり外で弾くと違うなぁ…。
……うん?
人の気配…


「新一…!」
「よぉ」
「何でここに?さっき事件が起きたって言って飛び出して行ったじゃない」
「んなもん、とっくに片付けたよ」
「ふふっ…さすがね!」


新一は得意気な顔をしながら言った。


「っつーかオメーさ、」
「うん?」
「かなり上手くねーか?」
「えっ!?そ、そんな事ないよっ!」


そんな大袈裟な…!
……まぁでも、素直に嬉しい、かも。


「…ありがと」
「おう」


優しく微笑みながら頭を撫でてくれる新一の表情に、少し胸が高鳴った。


「…なぁ優月」
「うん?」
「バイオリン始めたのってホームズの影響だろ?」
「…違うけど」


何でホームズが出てくるのよ…。


「え!?違うのか!?」
「うん。何でホームズって思ったの?」
「だってオメーの部屋にホームズの小説が…」
「ああ、あれは新一が昔くれた小説を読んで、結構面白かったから収集したのよ。これを始めた理由は…」


バイオリンをチラッと見ながら、私は答えた。


「……が」
「え?」
「ママが…やってたから…」
「……」
「…新一?」


新一が突然、私を抱き締めてきた。


「……俺は」
「うん?」
「…ずっと優月の傍にいるから」


新一…。


「…ありがとう」


そーゆう優しい所、大好きだよ。


「…っつーかさ」
「ん?」
「ストラディバリウスだろ?それ」
「え、何でわかったの?」
「ほら、そこにAntonius Stradivarius Cremonenfisってラベルが貼られてるだろ」
「さっすが平成のホームズ!観察力が凄いね」
「そりゃどーも。…でも何でオメーがストラドなんて持ってんだよ?」
「あれ?知らなかったっけ?」
「へ?」
「私の母方の家系、代々音楽家だったの」
「え!?でもオメーの母親、CAだったろ!?何で音楽家でも無いのに…」
「あ、何かね、最初はバイオリニストになろうと思ってたらしいんだけど、やめたんだって」
「え?何でだ?」
「……空が好きだからって」
「…は?」


……新一の思ってる事、すっごく分かる。
私も最初聞いた時、ワケわかんなかったもん。
…でも、今ならわかる気がする。
私も空が大好きだから…。


「あ、新一!」
「ん?」
「昔みたいにアメイジンググレイス弾いてよ!」
「…嫌だ」
「えー!?何でよ!」
「…オメーみたいに上手くねーし」
「えー!久しぶりに新一が弾くバイオリン、聴きたかったのにぃ…」


何よ!
珍しく謙遜なんかしちゃって!


「…ほら」
「え?」
「貸せよ、バイオリン」
「…はいっ!」


私がバイオリンを渡すと、新一は、私の大好きなアメイジンググレイスを弾き始めた。


♪〜


「……あ」


ふふっ…この独特な弾き癖は相変わらず健在みたいだね。


bkm?

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -