smaragd | ナノ

Zauber Karte

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melting kiss


あれから私と新ちゃんは、パスタが素晴らしく美味しいお店でランチして、今はカフェで食後のティータイム中。
ここのミルクティー、優作さんの淹れてくれるミルクティーの次にお気に入り!
お店の雰囲気も静かでお洒落。
事件が終わった後に必ず寄る場所だったりする。
ちなみに新ちゃんは相変わらずブラックコーヒー。
試しにオレンジジュースを薦めてみたら、俺を子供扱いすんじゃねー!ってぶちギレられた。
なんでそんなにムキになるのさっ!


「なぁ?優月」
「うん?」
「早く聞かせろよ、オメーが今までに関わった事件の詳細!」
「いいよ!じゃあまずは…」


新ちゃん、目が爛々としてて可愛いなー!
ほんとに推理が大好きなんだなって思う。
…あ、それは私もか。
長々と事件の話をしてあげたら、新ちゃんのテンションは終始上がりっぱなし。
ノンストップで話せ話せとせがまれ、なんと4時間が経過。
もういい加減に解放して欲しいです…。


「はい、もうおしまい!」
「なぁなぁ、あと1つだけ!」
「……新ちゃん?」
「ん?」
「そろそろぶちギレるぞ?」
「わ、悪ぃ…」


やっと落ち着いた…。
まぁ、まだ本格的に事件解決したのが1件だけなら興奮するのも仕方ないか…。


「なぁ!帰ってからも聞かせろよな!」
「はいはい…」


お店を出たら太陽が傾き始めていて、NYの街並みがオレンジ色に染まっていた。


「…新ちゃん」
「んー?」
「ちょっとね、寄りたい場所があるんだけど、いい?」
「おー」


あの場所見せてあげよう。
私の、お気に入りの場所に…。
電車で3駅進んで、10分位歩く。
住宅街を抜けて、ひたすら歩く。
その間ずっと私達は言葉を交わす事なく、夕陽が私達を照らし続けるだけ。
人も街並みも、あの頃とは違うけど、昔の事を思い出すには十分過ぎるぐらいだった。


「……着いたよ」
「あ、ここ…」
「…似てるでしょ?」
「…ああ」


私が新ちゃんを連れて来た場所。
小さい頃にプロポーズされた場所に似てる、小高い丘。
ちょうど山々から夕陽が漏れて、とっても綺麗に光ってる。
ベンチに2人で座ってみたら、普段は隣に誰もいなかったせいだからなのかな。
何だか不思議な感じがした。


「…ここね、私のパワースポットなの」
「パワースポット?」
「うん。…推理の調子が悪かったり、日本が恋しくなった時はここに来てたんだ」
「……」
「ここに来るとね、胸の中にある靄がスーッて晴れていくの」
「…日本に興味が無くなったわけじゃなかったのか?」
「な、何言ってんの!そんなわけ無いでしょ。日本が恋しいからこそ帰れなかったのよ…」
「…え?」
「帰ったら、戻りたくなくなっちゃうから…」
「…そっ…か」


帰りたかった。
ずっと、新ちゃんに会いたくて仕方なかった。
でも…。
もし、私の事忘れてたら?
あの時の約束、忘れられてたら?
そう考えると、飛行機、乗れなかったんだよ…。


「あのさぁ…」
「うん?」
「さっきから気になってたんだけどよ、何で俺の呼び名、変えたくねぇんだ?」
「…新ちゃんの事、他の呼び名じゃ嫌なの。今も昔も、ずっと新ちゃんだから」
「…へ?」
「…8年ぶりにやっと会えたと思ったら、私の知ってる声じゃないし、顔も面影あんま無いし、むしろイケメンに拍車がかかっちゃってるしさ…。なんか、私の知ってた新ちゃんが、いなくなっちゃった気がして…。変わっちゃったなぁ…って。だから、せめて呼び名だけは変えたくないって思って…」
「……バーロォ、俺だって同じだよ」
「…え?」
「最初誰だかわかんなかったっつーの。8年ぶりに見たオメー、すっげー綺麗になってるわ、性格も別人みてぇだわ、オマケに名探偵になっちまってるしよ…」
「……」


外見は分からないけど、探偵になったのは新ちゃんに会いたかったからなんだよ…?


「でもよ、昔のオメーも今のオメーも、俺は好きだぜ?」
「……え?」
「優月、さっき言ったよな?俺が変わっちまったって」
「うん…」
「外見は多少変わったかもしれねーけど、俺のここは変わってねぇよ…」
「あ…」


新ちゃんが、自分の胸を親指で指す。
…気持ち、変わってなかったんだ。


「……俺は今でも、優月と結婚したいと思ってる」
「っ…!?」


新ちゃんが、真っ直ぐな瞳で。
あの頃と、同じ瞳で言ってくれた。


「…で?」
「うん?」
「…オメーはどうなんだよ?」
「…変わってないよ、ちっとも」


何にも変わってない。
寧ろ、今まで会えなかった分、想いは募っていくばかりで、つらかったよ…。


「…新一が好き。大好きよ。傍にいなくて、つらかった」
「…俺だって、すげぇつらかった…」


私の体を包み込むように抱き締めてくれた新ちゃんの胸は、あの頃よりも逞しくて大きくなっていた。
でも、胸の鼓動の音色はあの頃と全く同じ。
私が安心する、音色…。


「ふ、っ…」


1回だけのキスじゃ足りなくて。
お互いを貪るように深く、溶けるようなキスをした。ファーストキスは、コーラの味。
セカンドキスは、コーヒーの味。
その先全ては、貴方の味がした。


bkm?

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