smaragd | ナノ

Zauber Karte

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golden appleC


観客はみんな逃げ帰ったし、後は現場検証ね…。


「……」


ヒース・フロックハート…。
彼はいつも優しくて、頼れる兄のような存在だったのに…。
友人のこんな姿、見たくなかった…。
ヒースを殺した犯人は、絶対に許さない!
絶対に逃がすわけにはいかない…!!


《撃たれたのが、まさかヒースとは…》
《知ってるんですか?警部》
《ウチのカミさんが彼の大ファンでな…。で?状況は?》
「出演者達は部屋で待機中。観客は逃げちゃったわよ、ラディッシュ!」
「優月!!」
「折角のお休みなのにラディッシュに会う羽目になるなんてね…。私には幸運の女神は微笑んでくれなかったみたいだわ!」
「いやー、携帯に連絡しても繋がらないから諦めて来てみたが、君がいてよかったよ!HAHAHA!」


…やっぱり電話したのね。
ま、予想はしてたけどさ。


「弾は胸に一発。背中の翼の仕掛けに食い込んでたわ」
「ああ、これか…」
「弾の入射角度は上から40度ってとこね」
「40度?かなり上だな…」


テラスに落ちてた薬莢は、犯人が事前に置いていた物。
外部犯の仕業にする為の罠だったんだ。


《痛たた…!!》
「あ、やっぱ本物か…」


ちょ、新ちゃん!
何でラディッシュの顔つねってるの!?
いくら私でも出来ないよ!


「新ちゃん何してんの!ラディッシュに失礼よ!」
「あ?」
「優月!…こいつが有希子の息子の新一か?」
「ええ、そうよ。っていうかラディッシュ、有希ちゃんと知り合いだったの?」
「ああ、以前優作君が捜査に協力してくれてな」
「……」


こ、こ、この海坊主!
優作さんにまで頼ったなんて!
ホントに最近の警察はプライドってゆーものが無いわけ!?


「お、おい優月」
「うん?」
「ラディッシュ警部と知り合いなのか?」
「…知り合いも何も、パートナーよ!」
「…へ?」
《警部!ちょっと…》
《ん?何だ?》


あ、そういえば楽屋の3人の鏡に飾ってあったヒースの写真が何か引っ掛かる…。
イベリスの鏡には写真を貼ってなかったし…。


「有希子、君の言ってた通りだよ…」
「え?」
「1ヶ月前にわざわざあんな席のチケットを買った怪しい人物がいたそうだ。マフラーと帽子で男か女か、わからなかったようだがな…」


……思うツボってわけね。


「ねぇ新一、どうして『あんな席』なの?あそこ、高くていい席じゃないの?」
「ああ、あの」
「あのテラス席は角度がついて観づらい安い席なのよ」
「え…」
「そんな席を指定して、顔を隠して買えば印象に残りやすい。……でしょ?新ちゃん!」
「あ、ああ…」


うわー。
勝手に話に入っちゃったから蘭と新ちゃんにガン見されてるし。
ついつい言っちゃうのよね…。
誰かがそばでヒソヒソ質問してるとそれに答えたくなっちゃうっていうか…。
…それにしても、死体に残った痕跡が気になる。
1つは首元に火傷のような跡。
2つは右手についた血。
しかも、掌の血が掠れてるし…。
血がついた後、何に触ったのかな?
でも服には跡がついてないし、吊られてる状態なら何も触れないし…。
んー…わからないなぁ。


「「「ええぇ〜っ!!?」」」
「ひっ!」


ビッッックリしたぁー!
有希ちゃんと蘭と新ちゃんが驚いた顔してこっち見てるしっ!!


「もう何よ、3人共煩いなぁ…」
「ちょ、優月!!」
「ひゃっ!な、何…?」


ししし、新ちゃんに肩掴まれたっ!!


「オメー探偵やってんのか!!?」
「…え?そ、そうよ?」
「何で言わねぇんだよ!」
「…あれ?言ってなかったっけ?」
「今警部から聞いたんだよ!!」


あー、そっか。
3人に言おうとしたら有希ちゃんにストップかけられたんだった。
でもあんなに大絶叫するほど驚く事なのかなぁ…?


「優月は、アメリカでは名前を知らない者はいないぐらいの名探偵なんだよ!」
「ラディッシュ!大袈裟に言わないでよ!」
「いやいや大袈裟じゃないさ。現に君の右に出る者はいないじゃないか!」
「……」


本当に大したことないのに。
っていうか、アメリカ全土な訳あるか!
ニューヨーク界隈では、って前置きしてくれなきゃ困るんですけど!


「す、すごいじゃないの優月ちゃん!」
「え?」
「新ちゃんも探偵目指してるし、将来は夫婦で探偵なんて素敵…!」
「ふ、夫婦!?」
「お、おい母さん!!」
「あらだって貴方達、婚や」
「だーーーっ!!」


……何だろ?
まぁいいか。
有希ちゃん、たまに意味不明だから放っとこ。
ってゆうか新ちゃんも新ちゃんだよ。
いきなり大声出したりして。
蘭は何かニヤニヤしながらこっち見てるし…。
あーあ、今日は何かやりづらいなぁ。


「ラディッシュ」
「ん?」
「舞台裏行くわよ」
「あ、ああ…」


こうして私とラディッシュはステージをあとにした。
…でも何で3人もついてくるのよっ!
新ちゃんも探偵目指してるとか言ってたけど、あの人さっき死体調べてたし、もう充分探偵じゃないの。


「ええっ!?あの4人の女優達の中に犯人がいる!?」
「ええ、確実にね」


薬莢、赤い光、席を買った人物の罠。
様々な要因がそれを裏付ける結果になったんだ。


「…新ちゃんも解ってたでしょ?」
「ああ、まぁな…」


さすがはホームズマニアの新一さん。
頭の回転が早いのは相変わらずだね…。
でもやっぱりやりづらい。
いつも警部には1人でやるからって言ってあるし。
……うん、ちょっと楽屋覗いてみよう。


「ラディッシュ」
「ん?何だい?優月」
「1人でやりたいの」
「…ああ、解った。よろしく頼む」
「ごめんなさいね…」



足早に4人から離れて楽屋に近づくと、何やら話し声が聞こえた。
………なるほど。
あのー、まだ後ろに4人がいるは何故?
ラディッシュは「ごめん」ってポーズしてるし。
この後は何が何でも1人でやらないと…。
とりあえず楽屋を盗み聞きしてみよ。
…ん?
あの人なんで…?


「実はヒースとイベリス、夫婦なのよ…」
「「「ええっ!?」」」


う、嘘っ!?


「舞台裏を案内してもらってる時、シャロンがこっそり教えてくれたのよ。人気が落ちるから、劇団の皆にも内緒にしてるって…」


うわ、ヒース最悪…。
しかも彼女はアカネだけじゃなかったみたいだし。
あ……!
そっか!
だからあの人…!
……後は鏡の謎ね。
もう此処には用は無いわけだし、さっさと行こ…。


「……優月?」
「わっ!…し、新ちゃん…」


事件現場をくまなく調べていると、突然後ろから声がした。
はぁ〜ビックリした…。
あ、でも新ちゃんがここに来たって事はもう大体解ったって事だよね、きっと。


「優月。オメー全て解ったんだろ?」
「ええ、もちろん。…よかったら一緒にどう?」
「え?」
「哀れな女神を曝しに…」
「…ああ!」
「ふふっ。さすが新ちゃん!ラディッシュの所に行こう?」


…さて、と!
色々準備出来たし、犯人を追い詰めますか。
初めてだなぁ、誰かと真相を曝すの。
うまく出来るかな…。


bkm?

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