≪じゃあその2人は貴女の子供?≫
≪彼はそうだけど彼女はただの幼なじみよ…。≫
≪ふーん…≫
≪しかもね、うちの息子、優月ちゃんと既に婚約してるのよ…≫
≪まぁ素敵!≫
「「「?」」」
有希ちゃん、何話してるんだろ??
なんか有希ちゃん達、こっち見てニヤついてるんだけど…。
≪あらあら、てっきり例の奇妙な贈り物の謎を解く為に、優月だけじゃなくナイトバロニスも来てくれたと思ったのに…。子連れで楽屋に冷やかしに来ただけなんて…がっかりだわ…≫
あはは、イベリスは相変わらずクールビューティーね…。
「奇妙な贈り物?」
「3日前に、この劇団宛に贈り物が届いたの」
「え…?」
「動物の血で書かれた、"最も美しい女性へ"っていうメッセージと一緒に、金色のスプレーでコーティングされた林檎が…」
「…」
んー。気になるなぁ…
外部犯と思わせて実は…。
≪まぁまぁ落ち着いて、僕の女神達…。どうせただの悪戯さ…≫
【あ、ヒース!】
≪久しぶりだね、優月。≫
【えーと…3ヶ月ぶりかしら?】
≪そうだね、元気だったかい?≫
【元気すぎて困る位よ!】
トップスターのヒースとはアカネを通じて知り合いなのよね。
でも映画の主役をやるみたいだから、舞台は今夜が最後みたい…。
まぁ彼はイケメンだし、舞台だけなのは惜しい人材よね〜。
≪さぁ、気を取り直してシャロンの友人達と優月を舞台裏に案内しようじゃないか…≫
わぁ〜。舞台裏とか素敵!
ヒース、気が利く!
「ねぇ優月、元気してた?」
「ええ!ただ最近は誰かさんのせいで体のあちこちが痛いけど…」
「?」
「……」
あのヘタレ警部のせいで全身筋肉痛よ!
次から椅子を用意してもらおうかしら。
「それにしても、優月すっごく綺麗になったよね〜新一!」
「あ、あぁ…」
「え、そんな事ないよ〜!蘭こそ、こんなに綺麗になっちゃって〜!」
「そんな…私は何も変わってないよ!」
「新ちゃんも、すごいイケメンになっててビックリしたわ!」
「お、おー…」
しっかし、本当イケメンよね〜。
彼女とかいるのかな…。
これだけカッコイイと、周りがほっとかないよね…。
「ってゆーか優月、性格明るくなったね!」
「そぉ?まぁ、周りからは外見とギャップを感じる時がある…ってたまに言われるけど…」
「「(確かに…)」」
ギャップがあるって言われるのはもう慣れたけど、そんなにあるかな、私…。
「でもビックリしちゃった!」
「うん?」
「優月、英語ペラペラになってるんだもん!」
「そりゃ、もうこっちに来てもうすぐ8年経つしね。話せなかったら逆に問題あるよ〜」
「そういや優月」
「ん?」
「シャロンとは知り合いなのか?」
「…うん。以前ちょっとね!」
「ふーん…」
やっと新ちゃんとマトモに会話出来た…。
でも何か素っ気ない感じ…。
もしかして私の事、もう何とも思ってないのかな…。
…ん?
なんか今…
胸がチクッてした…。
なんだろ、モヤモヤする。
……私だけかな、子供時代の約束なんて本気にしてるのは…。
「でもいいの?開演40分前なのに、こんな所にお邪魔しちゃっても…」
「大丈夫よ!最初の20分はギリシャ神話を語り手が面白おかしく話すだけだから…」
やっぱり、シャロンは大女優なだけあって美人だな〜!
有希ちゃんと並ぶとオーラが眩しいわ…。
ん?あれは?
「ねぇシャロン、天井のあれは何?」
「舞台で使う衣装よ。場所を取るから上に吊ってあるの」
ビン!!
「え?」
≪あっ!≫
≪いや〜!!≫
あ、危ない…!!
ガシャーン!!!
「優月!大丈夫か!?」
「う、うん。平気…」
危なかった〜…。
思わず駆け出しちゃったけど、一足遅かったら……。
あぁ怖…。
あんな鎧に潰されたら死んじゃうよ!
≪やっぱり私よ…≫
「え?」
≪誰かが私の命を狙ってるんだわ!!≫
ローズ…。
≪ロープが古くなって切れただけさ…≫
≪誰よ?こんな鎧吊り上げたのは…≫
確かにおかしい…。
もしかして、嫌な予感的中…?
≪でも不幸中の幸いね…側にあったあの大鏡が割れなかったんだから…≫
≪ええ…私達の守り神ですもの…≫
あの鏡が守り神…?
≪感謝するのは鏡でも神でもないわ…優月にでしょ?≫
「へ?」
≪ああ、そうよね…ありがとう!助かったわ優月!≫
【ううん!ローズが無事で良かったわ!】
無意識に体が動いただけだしね。
≪おっと、そろそろスタンバらないと…≫
≪じゃあね優月。楽しんでいって!≫
【うん!みんな頑張って!】
やっと舞台が観れる〜!
ほんっとに楽しみ!!
「痛っ!…あ、擦りむいてる…」
「優月、これを使って」
「あ、ありがとうシャロン!」
シャロンにハンカチ借りちゃった。
後で洗って返さないと…。
「やっぱり神様なんていないわね…。いるのなら、こんな酷い仕打ちしないもの…」
「え?」
え?
それって一体…?
「じゃあ有希子、優月。私帰るわ…」
「え?シャロンも舞台観るんじゃなかったの?」
「そのつもりだったけど、外せない用事が入っちゃったし今夜はひどい嵐になりそうだから、止めにしておくわ…」
「っ…!!」
シャロン、この後何かが起こるって勘づいてるんだ…。
昔からシャロンの勘は当たるもん…。
まさか殺人事件が…?
あ…!!
じゃああのヘタレ警部が来る可能性大じゃない…!!
あ〜あ…せっかくの休みの日なのに警部に会うかもしれないなんて…。
…ムカつくから携帯の電源切っとこ。
どうせ何か起きたらここで会うし。
「どうかした?優月ちゃん?」
「有希ちゃん…」
「うん?」
「ヘタレの相手は疲れるよ…」
「「「???」」」
会いたくないけど推理は大好き。
推理は大好きだけど会いたくない。
いや、警部はとても親切なオジサマだと思うし、好きだよ?
でも現場でちっとも頼りないんだもん!!
まぁ、それだけ頼りにされてるのはわかるんだけどさぁ…。
……何も起こらない事を願おう。
「そういや優月」
「…うん?」
「オメー、何で此処にいんだ?」
「…は?」
「いや、さっき楽屋でアカネさんに飛び付いてただろ?ヒースとも知り合いみてぇだし…」
「あ、その事ね…」
そういえば3人に言ってなかった…。
「アカネは家が隣同士で、こっちに来た時から姉妹みたいに仲良くして貰ってるの。ヒースは…アカネの恋人よ!」
「へぇー。なるほどな…」
「それより、早く席に行こう!舞台始まっちゃうよ!」
「…!お、おー」
あれ?
なんで新ちゃん、顔赤いんだろ?
体調悪いのかな…?
手は全然熱くないけど…。
「新ちゃん、顔赤いよ?熱あるの?」
「そ、そんなんじゃねーよっ!!」
なぜソッポむくのー!
せっかく人が心配してるのに!