smaragd | ナノ

Zauber Karte

http://nanos.jp/968syrupy910/

言葉は要らない


激しく重なり合う身体と唇。
強く絡み合う指先。
その全てから、新一の熱い想いが嫌という程伝わってくる。


「っ……優月」


言葉なんか無くてもいい。


「新、一っ…」


ただお互いの名前を呼ぶだけで、気持ちは簡単に伝え合う事が出来る。
握り合う手の強さだけで、その気持ちの大きさを量る事が出来る。
それでも次々と溢れ出してきて、止まらない想い。
我慢出来ないほどに加速していく愛しさ。
次第に耐えきれなくなって、唇が腫れる程お互いを求め合おうとする私と新一。
こうやって、心にも身体にも、新一自身が目一杯入って来てるのに…。


「新一、もっと…」


まだ足りないと思ってしまうのは私が欲張りだから…?


「もっと…、欲しい…」


目の前に映る新一の額には、暗闇で見ても分かるほど沢山の汗が浮かんでいた。
…きっと、私も同じかもしれないな。


「っ、そんな顔…するんじゃねぇって…」
「え…?」
「止めらんなく、なっちまうじゃねぇか…」
「…新、一?」


息を荒くしながらそう話す新一の言葉に、今自分がどんな顔をしてるのかなんてピンと来なかった。


「私…どんな顔してるの…?」


恐る恐る聞くと、新一は口角を上げたまま顔を近付けてきた。


「…それは俺だけの秘密だ」


そのまま激しく唇を奪われ、何も言えなくなってしまった。
でもすぐに新一から与えられる快感の虜となり、もう何も喋れないし、何も考えられない。
どちらともなく握り合った手は、より一層強く、固く結ばれる。
私達の熱い吐息は、夜の闇へと静かに溶けていった。


「…なぁ、優月」
「んー?」


膝枕をしながら少し汗ばんだ新一の頭を撫でていると、ずっと夜空を眺めてボーッとしていた新一が口を開いた。


「向こうでの生活が落ち着いたらさー…。するか?」
「するかって…何を?」
「……その……結婚、ってヤツをさ…」


目を泳がせながら、でもハッキリとした口調で言った新一に、それまで撫でていた手が勝手に止まった。


−新一が相手だったら学生結婚もアリだと思うよ?−


「…蘭と園子に感化された?」
「バーロ!そんな大事な事アイツらに決められて堪るかよ!」


うん、それもそうよね。
人生の分かれ道を第三者に決められるなんてそんな事…あれ?
でも私の人生って新一に決められてる感が…。


「…で、どーなんだよ!?さっさと聞かせろよ返事!!」


ガバッと飛び起きた新一の顔は真っ赤になっていた。
ここで冗談でも断ったら何されるかちょっと気になるかも…。


「…そんなに私と結婚したいんだったら仕方ない、してあげ」
「オメーはこーゆー大事な時によくそんなふざけた事が言えるなぁ」
「…よ、よろひくお願いひまふ」


実は心臓が2、3秒止まるぐらいビックリしたんだよ、っていう事は悔しいから内緒にしとこ…。


「ねぇ新一」
「あん?」
「Moon Riverの歌詞って知ってる?」
「歌詞?…そういや曲調しか知らねぇな」
「じゃあ教えてあげる、Moon Riverの歌詞。あのね…」


私が耳元で小さく歌いながら教えると、新一は少しだけ顔を赤くしながら「サンキュ」と答えてくれた。
さっきまでの態度とは正反対な様子で、少し照れた新一が愛しく思えて、思わず新一のおでこにキスを落とした。


「…不意打ちは反則って言ったのはオメーじゃねぇか」
「ふふっ、キスのやり方にルールも何も存在しないって私に教えてくれたのは新一だよ?」
「ったく…」


ただついてゆくだけじゃなく、新一がくれた1つの夢に向かって、希望を持とう。
そう思いながら、私の頬に手を伸ばしてきた新一の少し汗ばんだ手に、自分の手を重ね、指を絡ませた。


Moon River,wider than a mile.
(遥か遠くの 川面に映る月影のよう)
I'm crossing you in style someday.
(そんなあなたをいつか優雅に渡ってみせるわ)
Old,dream maker,you heart breaker
(夢をくれ、痛みを残していった)
wherever you're going I'm going your way.
(そんなあなたに、どこへだってついてゆく)


bkm?

×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -