smaragd | ナノ

Zauber Karte

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気になるお年頃


「優月ーっ!」
「あ、おはよう園子。久しぶ…」
「ん!」
「…何よ?その手」


新一と仲良く帰国した次の日。
時差ボケが直ってない体にムチを打って学校へ行くと、妙にテンションが高い園子がロンドン土産を督促してきた。
何で教えてないのに知ってるのか聞くと、新一が私を追ってタワーブリッジに向かった直後、蘭がすぐにメールで教えたらしい。
いちいち教えなくても…って思ったけど、一応園子も私が元気ない事をそれなりに心配してた様で、もう安心だよっていう報告も兼ねたとか。
何かいっつも2人に迷惑かけてる気がするな…。


「じゃあ園子にはねー…」
「なになに?」
「はい!これあげる」
「え?…あっ、これロンドン限定に発売されたプレミアリップじゃない!これ欲しかったのよー!」


私なりに『ごめんなさい』と『ありがとう』の意を込めて、園子にロンドン限定の化粧品(自分用に買ってきたやつだけど)をプレゼントした。
…ちょっともったいなかったかな。


「今回は園子に譲ってあげるけど、たまには私にも貸してよね?それ自分用に買ってきたやつなんだから」
「へいへい!分かってるって!ありがとね優月!」
「ふふ、どういたしまして!」
「はい園子!私からのお土産はこれ!」


蘭が園子に渡したお土産は、ロンドンの老舗ブランドのエプロン。
いつもシェフに作ってもらってないで、次に京極さんに会う時の為に手料理の腕を上げとけ、って意を込めたみたい。
何だか蘭らしいお土産で、思わず笑ってしまった。


「それにしても良かったじゃない!新一くんとやっと仲直りが出来て!」
「うん、心配かけてごめんね?」
「ホントよ!まったく、あんた達バカップルには付き合ってらんないわ!」
「もう園子ったら…。少しは素直になったら?」
「え?素直って何の話?」
「ふふっ、あのね?優月が新一と別れたって聞いた日から園子、ずっと自分の事の様に落ち込んでたんだよ?」
「えっ、そうなの!?」
「ちょっと蘭…!」
「いいじゃない、ホントの事でしょ?」


…何か意外だなぁ。
園子が気にしてたなんて。


「それは蘭だって同じでしょ?『私が何とかしてあげたいけど、新一も優月も原因を教えてくれないからどうする事も出来ない〜っ!』…って嘆いてたし!」
「もう!園子ったら!」


何が原因か、どうしてすれ違ってたのか。
2人は放課後になってもそれについては聞いて来なかった。
終わり良ければ全て良し、ってわけじゃないけど、2人なりの気遣いなんだと思う。


「はい、これ」
「ん?」
「書き直してきたよ。進路調査書」


放課後。
蘭と園子には昇降口で待ってもらい、職員室にいるゴリラの元へと向かった。


「おお!そーかそーか、どれどれ…」
「…」
「…」
「…」
「…おい花宮」
「うん?」
「何なんだこれは」
「え?何って…。見れば分かるじゃない。進路調査書」


バンッ!!


「違ーーう!!何で東都大と訂正したはずの進路が工藤の嫁に戻ってるのかって聞いてるんだ俺はっ!!」
「…お言葉ですがゴリラ」
「ゴリラって呼ぶなゴリラって!」
「逆に聞きたいです。私が一体いつどこで東都大に進学を希望したのかを」


勝手に期待してたのはそっちなのに青筋立てて怒るなんておかしいと思うんだけど…。


「じゃ、そーゆー事で」
「だぁー!ちょっと待て花宮!お前近いうち工藤の家に行く用事ないか?」
「新一の家に?…うーん、軽く掃除しに行こうかなとは思ってるけど…何で?」
「だったらアイツにこれ渡しといてくれないか?」


ゴリラが1枚の紙を私に寄越した。


「アイツ、今は休学中の身だけど一応レポートもきちんと出してあるから留年は免れるしな。一応アイツの希望も聞いておきたいし」


ゴリラに手渡された紙には、進路調査書の文字。
そういえば、新一が進路の事をどう考えてるのかなんて聞いた事なかった…。
これ渡す時にでも聞いてみよう。
カバンに調査書をしまい、蘭と園子の待つ昇降口へと急いだ。


「しっかし今回のケンカ、随分長かったんじゃない?」
「うん…。でもケンカっていうより、私達の中では1回別れたつも、」
「なに言ってるのよ優月!」
「り…」
「それは違うでしょ!?」
「…な、何が?」
「新一と優月は別れてなんかいないの!ただいつもみたいなくだらないケンカをしてただけ!分かった!?」
「は、はいっ!分かりました!」


どうやら蘭の中では、私と新一が別れたっていう過程は存在しないみたい。
…まぁ、確かにそうかもしれない。
あれは新一が勝手に勘違いした事によって起きた出来事だったし…。
それにうちに快斗が来てなかったら、新一はあのレストランで…。


−俺はオメーに…優月にプロポーズするつもりだったんだよ!!−


心臓の速度が急激に速まる。
結局新一には、真相を何も聞けていないままで…。
でも私から聞くなんてそんなの女としてのプライドが許さないわけで!
あーもうっ!
どうしたらいいのよこれから!!


「ちょっと優月ってば!!」
「えっ!?」
「どうしたの?顔真っ赤にしちゃって」
「あ、えと…」


や、やっぱり蘭と園子には話しておいた方がいい…よね。


「「ええーーっ!?」」
「し、し、新一に…!」
「ぷっ、プロポーズされたぁ!?」
「ちょっ、2人とも声が大きいよ!」


やだもう!
今ので周りの人達の注目浴びちゃったじゃん!


「まさかあの超がつくほど奥手でむっつりスケベな新一くんがロンドンでねぇ…」
「やめてよ園子!新一はむっつりなんかじゃなくて堂々とした変態スケベだもん!」
「優月それフォローになってないって…」
「あ…」


ぎゃはははは!って豪快に笑いながらお腹をかかえる園子。
だ、だって新一はほんとにむっつりじゃないし!
……た、多分。


「で?」
「うん?」
「新一、どうやって優月にプロポーズしてきたの?」
「えっ」
「あ、そうよ!詳しく聞かせなさいよっ!」
「……」


蘭と園子が目をキラッキラさせながら私に迫る。


「で、でもプロポーズって言っても、そんなちゃんとした形でされたわけじゃないよ…?」
「「うんうん!」」
「ただ、米花センタービルのレストランでプロポーズしようと思ったんだーって勢いで言われただけなんだけど…」
「「うんうん、それで!?」」
「…は?」
「もちろんしたんでしょ?返事!」
「あ、いや」
「蘭ったらなに野暮な事聞いてんのよ!プロポーズよ?プロポーズ!ただの告白とはレベルが違うんだからもちろん返事したに決まってるじゃない!!」
「あの実は」
「じゃあ園子は優月が何て返事したと思ってるのよ?」
「そりゃああんた、『もちもち!もちのろんでオッケーよ〜ん!ねぇ新ちゃん?私、早く新ちゃんとの子供が欲しいのぉ〜!だからいっその事ハネムーンも兼ねて今からロンドンBabyこさえちゃおうよ〜!』…とか?」
「バッ、バカ!私がそんな事言うわけないでしょ!?」
「そうよ!園子じゃあるまいし!」
「なっ、私はこんなアホな事言わないわよっ!ふんっ!」
「「…」」


いや、十分有り得ると思うよ?
ってゆうか私がそんなアホな事言う子だと思ってたのかこの人は!


「ったく…。で?あんた何て返事したのよ?勿体振らないで早く教えなさいって!」
「…じ、実は…」
「「うんうん!」」
「ま、まだ何も言ってなくて…」
「「……ええーーっ!?」」
「何で返事してあげないの!?」
「そうよ!ちゃんとハッキリ言わないと新一くん、断られたかと思っちゃうじゃないの!!」
「だだだだって!そんな雰囲気じゃ、なかっ、たし…」


そ、それによく考えたらさ?
あの時の私、結構うるさかったし!
もしかしたら、黙らせるために咄嗟に出た嘘なんかじゃないかな、って思ってる自分もいるわけで…!
だ、だってさ!
高2でプロポーズだよ!?
それにまだ組織との決着が着いてないんだよ!?
それなのに何でプロポーズなんか…。
あっ、まさか新一!
このまま10歳差夫婦でもいいなんて思ってるんじゃ…!?
そんなの嫌だよ私!
事情を知らない人達から見たら私明らかにロリコンじゃん!


「よし!分かった!」
「えっ?」
「今から新一くんに電話で返事よ!!」
「…えええっ!?む、無理だよ無理っ!」
「そうよ園子ったら!いくら何でも女から切り出す話題じゃ」
「あんた達ホンット分かってないわねぇ〜!いい?男がヘタレ街道突っ走ってるこの時代、女がガツガツいかないでどーすんのよ!強引にいかなきゃ生き残れないわよ!?」
「で、でもそんな事言ったって今あの人…」
「あ?新一くんが何よ?」
「…え、っと」


しょ、小学校だなんて言えないっ!


「あ、ほ、ほら!あの人今厄介な事件で忙しいし電話出ないかもしれないじゃない!?だから今度またゆっくりかけ」
「かぁー!もうあんたってほんっとバカね!何ふざけた事言っちゃってんのよ!事件だろうと何だろうと、あの新一くんがあんたからのラブコールに出ないはずが無いでしょ!?」
「うっ…」
「ほ・ら!つべこべ言ってないでさっさとケータイを出す!」


園子の強い気迫に流されて渋々ケータイを開くと、待ち受け画面(コナンくんの萌え萌え着ぐるみ写真)には「新着メール1件」の文字が。
…誰だろ?


「…あっ!」
「え?どしたの優月?」
「ご、ごめん2人とも!ちょっと用事出来たから先に帰るね!また明日!」
「あ、ちょっと優月!」
「アンニャロォ!逃げたわね!?」


急いでメールの送信相手が待っている場所へと向かう。
その相手というのは、もちろん…。


「おお!優月くん久しぶりじゃのぉ!いや〜新一と無事に仲直りしたみたいでワシはもう嬉しくて嬉しくてさっきまで涙が止まらんかっ」
「博士っ!新一は!?コナン来てる!?」
「え?あ、ああ…。新一なら哀くんと研究室に」
「お邪魔します!」
「ええっ!?」


戸惑う博士を玄関に残し、地下へと続く階段を駆け降りた。


bkm?

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