smaragd | ナノ

Zauber Karte

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甘い、甘い罠


STEP.1 解毒剤を飲ませよ


「あー、つっかれたー…」


ハリケーン有希ちゃんの相手に相当気が滅入ったのか、ホテルに帰るなりベッドに倒れ込む新一。
…ここで寝られたら有希ちゃんと作り上げた巧妙な計画が水の泡になる!


「ねぇ新一、起きてよー」
「ん…」
「1人じゃつまんないよー」
「…」
「ねぇ起きてってばー」
「…」


…も、もしかしてホントに寝ちゃった?
反対側を覗き込むと、気持ち良さそうな顔ですやすやと眠るコナンくん。


「ふふっ、可愛いなぁ…」


えいっ、頬っぺたツンツンしちゃえー…じゃないよ!
ホントに寝やがったこのチビ!


「起きろ新一ぃーーーっ!!」
「あだっ!な、何だよ人が気持ち良く寝てたのに!」
「寝ちゃダメ!」
「はぁ?別にいいじゃねぇか少しぐら」
「ダメなものはダメなの!」
「何で寝たらダメなんだよ!?」
「だ、だ、だってさっきデートするって約束したじゃん!」
「はぁ?勘弁してくれよ!こっちはあの騒がしい2人相手して疲れてんだぜ?悪いけどその約束は無し。忘れろ。じゃ」
「…」


なっ、何なんだこのチビ助…!
何様のつもりよっ!!


「だから寝ちゃダメだってばーーーっ!!」
「あだっ!!てっ、テメェいい加減にしろよ!さっきから何なんだよウゼェなぁ!!」
「な、何よそんな言い方しなくてもいいじゃない!私はただ新一に解毒剤飲んで欲しくて」
「解毒剤?」


……あ、


「何で今飲まなきゃなんねーんだよ?」
「あ…えっと、その…お、大きい新一に抱っこして欲しいなぁー!って思って…」
「…んなの明日飛行機乗る前でいーじゃねぇか」
「でっ、でもせっかく哀ちゃんが2錠くれたし」
「無理して使う必要なんかねーだろ?腐るもんじゃねーし」
「そ、それはそうだけど…」
「とにかく!俺は疲れてんだよ!晩飯まで寝かせてくれってーの!」
「……」


そりゃあさ?
私だって寝かせてあげたいよ?
でも明日じゃなくて今日飲んでくれなきゃ困るんだって…!


「……」


色々考えた末、この方法しか無いと結論づけた私。
ごめん新一っ!!
どうしても今日大きくなってくれなきゃダメなのっ!!


「っ、げほっげほっ!…お、オメー何飲ませ…ぐっ!!?」
「ホンっっトにごめんなさい!この償いは必ず…!!」


その後、元の姿に戻った新一にたくさん償わされたのは言うまでもない。


STEP.2 真面目な彼をパブに誘い込め


「ちょ、ちょっとタンマ…!もう無理!体痛い!」
「…まだ3回しかしてねぇんだけど」


いやいや新一さん、ここは何も抵抗せずに3回も付き合ってあげた私に感謝するとこでしょうよ…。


「ねぇ新一」
「ぁん?」
「せっかくロンドンにいるんだからさ、夕飯はルームサービスじゃなくて外で食べよ?オススメのお店があるんだ」
「外で?…別にいいけど何でわざわざ?」
「あ、えーっと…ろ、ロンドン最後の夜だし少しは2人でゆっくりとイギリスを味わいたいなぁ、と思って!」
「ふーん…。まぁそれもいいかもな」
「じゃあ決まりね!」


うん、ここまでは(予定外な事もあったけど)何とか順調に事は進んでる。
シャワーを浴び終わった後、早速さっき有希ちゃんと一緒に選んだ服を新一に渡して着替えてもらった。
若干怪しむ目で見られたけど今はそれより…!!


「やっぱり淡いパープル似合うよ新ちゃん…!」
「そーかぁ?何かホストみてぇじゃね?」
「そんな事ないない!大人の魅力が出ててイイ…!!」


これでサングラスなんてかけてたらもう最高だよ新ちゃん…!!
…いやいや、感激してる場合じゃない!
まだミッションは残ってるんだから!!


「な、なぁ…」
「うん?」
「この店ってもしかして…」
「どう?感動した?」


有希ちゃんに教えてもらったオススメのパブ。
その名も「シャーロック・ホームズ」。


−そのお店はね、シャーロキアンなら誰もが垂涎しちゃうぐらいの場所なのよ!−


あー、有希ちゃんの言う通りだ。
隣のシャーロキアン、締まりの無い顔で垂涎しちゃってるよ…


「すっげー!ホームズの写真があるぜ!」
「はいはい。いいから早く入ろ」


興奮気味の新一の手を引っ張って店内に入ると、壁にはホームズの手紙(もちろん架空)やら、肖像画がたくさん貼られてあって、いかにも「ようこそシャーロキアンの世界へ!」って雰囲気がバンバン出ていた。
…シャーロキアンじゃない私としては何とも異様な雰囲気のお店としか思えない。
でも有希ちゃん曰く、シャーロキアンじゃない普通の観光客も飲みに来る定番のお店らしい。
こんなマニアックな場所でプロポーズをした理由を聞き出すのもどうかと思うけど、この際仕方ないか…。
普通のパブだったらお店入る前に新一に拒否られる可能性大だし。


STEP.3 真相を聞き出せ。


「新一は何飲むー?」
「んー…オメーは?」
「私はとりあえずビターかなぁ」
「……じゃあ俺はスタウト」
「えっ、スタウトにするの?」
「…ダメか?」
「あ、ううん別に…」


新一が普通のビールじゃなく、わざわざ黒ビールを選ぶなんて物凄く意外だった。
……もしかしてこの人、お酒飲むの慣れてる?
いやでも新一はお酒飲んだ事なんか無いって有希ちゃん言ってたし…。
適当に選んだだけなのかな…。


「見てみろよ優月!メニューが全部ホームズに因んだ名称だぜ!?すっげぇ…!!」
「…ふふっ!喜んでくれてよかった!」


ま、いっか。
今はこの子供みたいにはしゃぐ可愛い平成のホームズと、ジャケットポテトをつまみながらホームズ談義でもして楽しもうっと。


「優月、」
「うん?」
「オメーこれ飲んでみろよ」


最初に頼んだビールが無くなりかけてきた頃、新一がCiderって書かれている緑色の瓶を3本渡してきた。
…サイダーって、あのサイダー?


「…私今日お酒飲みに来たんだけど」
「いいからさっさと飲めっつってんだよ」
「わわわ分かったから!飲むからそんなに睨まないでよっ!」


もう!
いちいち強引なんだから!
恐る恐るひと口だけ飲んでみると、サイダー独特のあのしゅわしゅわ感がしたあと、口の中が甘ーい香りに包まれた。


「…あっもしかしてこれ、りんご味のサイダー?」
「まぁ同じようなモンだ」
「ふーん…。でも何で急にサイダーなんて薦めてきたの?」
「えっ!?あ、えーっと…ほ、ほら俺達まだ未成年だし飲みすぎたら体に良くねぇだろ?だからオメーはビール1杯にしといてさ、あとはそれ飲んでろよ。な?」
「…うん、ありがと新一」


気遣ってくれたんだ…。
えへへっ、もう新一ったら優しいんだから!


「ねぇねぇ、新一も飲んでみなよ!すっごい美味しいよこれ!」
「俺はパス。こーいうのは男が飲むモンじゃねぇから」
「…あっそーですか!」


なーにかっこつけちゃってんのよ!
いいもん!
私1人で飲んじゃうから。
実はこれが悪酔いしやすいお酒だなんて、この時の私は知る由も無く、ロンドンの夜は更けていった。


bkm?

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