「これってこーゆー事じゃねぇか?」
新一がコナンの姿に戻った後、私は例のもう1つのAについて相談した。
…ら、新一は急に何かを考え出して黙り込んで、かと思ったらおもむろに地図を取り出して印をつけ始め、それらを線で結んだ。
まるで、その形は…。
「テニスラケット!?」
「ああ。オメーが解いた暗号の示す日時はSATURDAY…明日の土曜日で合ってるはずだ。そしてビッグ・ベンが2回出てきたのは…」
「暗号が示す場所を順番に線で結べって意味ね…」
「そーゆー事。恐らくハーデスは明日、ウィンブルドンを爆破させる気だ」
「ばっ、爆破ぁ!?」
ええっ!?
ちょ、爆破ってどーゆー事!?
「優月」
「へっ?」
「さっきあのガキから貰ったウィンブルドンのチケット、俺にくれないか?」
「えっ…」
「俺の手でアイツを捕まえてぇんだ。復讐に狂い、人が死ぬ事に快楽を覚えちまった、あの連続殺人犯をな…」
新一の瞳が、探偵の色に変わってる…。
「…仕方ない。じゃあ新一に譲ってあげよう」
「サンキュ」
「その代わり!」
「…な、何だよ?」
「今から一緒にロンドン観光しよ?」
「はぁ?オメーこんな時に何言っ」
「あら、ハーデスは明日ウィンブルドンを狙うんでしょ?ならいいじゃない今日ぐらい!ね?久しぶりにデートしよう?」
「……仕方ねぇ、付き合ってやるよ」
そう言いながら腕を組んで顔を反らす新一は、トマトみたいに顔が真っ赤になってて。
「じゃあ決まりね!」
さっきまでの新一とは違って可愛いなぁ、って思った。
こういうところは、小さい頃と全く変わってないなぁ…。
コンコン
「あれ?誰だろ…」
「げっ!もしかして蘭が迎えに来たのかも…!」
「えっ、蘭が?」
「俺の事は熱が下がらねーとかテキトーに言っとけ!ぜってー部屋に上げんなよ!」
新一はそう言うと、素早くベッドの中に潜ってしまった。
いつの間に蘭にそんな嘘ついてたのよ…。
「…はーい?」
コナンの素行の悪さに怒り狂う蘭の顔に怯えつつ、恐る恐るドアを開けると…。
「えっ、」
唐突に、プシューという音が辺りに響いた。
「ふふ、少し寝てて頂戴ね…」
「あ…あな、た…」
何かが顔に吹き付けられたと認識した直後、私の意識は暗闇にダイブした。